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第5話:Process2[試練なんて楽勝です!]Flow1

 ジーさんの家で美味い昼食を食べ終えた俺たち。そのまま休憩しながら、俺はさっきの二人組について訊いた。


「なあジーさん、さっきの二人組、クラウ・ソラス欲しがってたように聞こえたけどなんなんだ?」


 するとジーさんはうんざりした顔で答えた。


「ちょっと面倒なヤツでのう、クラウ・ソラスがこの地にあるから調査させろって聞かんのじゃあ」

「なんか我が家の古文書がー、とか言ってたのは?」

「あの娘はクラウ・ソラスの伝承に出てくるシャトレ家の子孫じゃ。なんか知らんが、ダーナはクラウ・ソラスをこの地に封印したとかいうとる。そして、クラウ・ソラスの正当な所有権はシャトレ家にあるとかぬかしておるわ」


 なるほどねー、自称クラウ・ソラスの正当な所有者ねえ……。


「そんじゃあ、あのデブのオッサンの方は?」

「あっちは商人じゃあ。まあ、相当権力を持っとる豪商ってヤツじゃよ。あやつもクラウ・ソラスが欲しいらしくてのお」

「なんで?」

「あー、なんだったかのう。下らなさすぎて忘れたわい」


 そこでタバサが会話に加わり、補足してくれた。


「デボン氏は、クラウ・ソラスの自動操作技術を使い、自分の意のままに動く美少女メイドオートマタを作るのだそうです」


 そういうタバサの目は冷え切っていた。無理もない。伝説の剣を使って何をするのかと思えば……、とか考えていたら、俺たちの会話を聞いていたらしいエニアが突然大声で叫んだ。


「そ、そんなのダメです! そんなせくはらな使い方、許せません!」


 そのエニアにプリシラが尋ねる。


「なんでセクハラなの? エニちゃん」

「え、だって……あ、いや、そ、それは……」


 途端に顔を赤くしてうろたえ出すエニア。

 コイツ、なーに考えてたんだ? まあ、大体分かるけどさ。

 ふふふ、ちょっとからかってやろっと。


「俺も分からない。なんでセクハラなんだ? エニア、詳しく教えてくれないか?」


 俺が意地悪してそういうと、エニアは更に顔を赤くして怒り出す。


「リ、リガルさんは分かってて言ってますよね? 絶対そうですよね? せくはらですー!」


 そしてピコハンを取り出し、俺に襲いかかった。俺もふざけて逃げることにする。


「きゃー! 助けてー! ロリ巨乳むっつりスケベ通り魔がでたわぁー!」

「なんですってぇ~!!」


 そしてそんな俺たちを、みんなはアホを見る目で見ていたが……なぜか、タバサがエニアを見る目だけが鋭さを帯びているように見えた。


   ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 そして昼食から一息ついてから(あとエニアが落ち着いてから)、エニアとジーさんの技術提携の話をすることになった。そのためにジーさんの執務室に行こうとしたのだが……、


「会長、少しお待ちください」


 いきなりタバサが待ったを掛けた。これにはジーさんも意外だったようだ。


「んん? どうしたタバサ。何か問題でもあったかのう?」

「はい。率直に申し上げます。かのヒューレ氏ならいざ知らず、エニア様はまだ子供です。我が工房の技術を渡すには……」


 タバサはさっきと同じ鋭い目線をエニアに向けている。

 そうか。コイツはエニアが信用出来ないんだなー。まあ、妥当っちゃ妥当だな。


 ただ、ヒューレ店長と付き合いの長いジーさんは、エニアをそこそこ信用していたっぽい。エニアを、っていうか、ヒューレ店長を、だろうけどな。


「なんじゃ、子供と言ってもおぬしと2歳しか違わんぞ? 反対か?」

「そ、そうです」


 ジーさんの問いに、少し躊躇いながらもタバサは答えた。

 それを聞いて、ジーさんも少し考える素振りを見せる。


「んー、まあ確かにワシも小娘のことはよく知らんしのお……」


 するとタバサは、勢い込んでジーさんに提案した。


「それでは、私にお任せ下さい! エニア様が我が工房の技術にふさわしい人物かどうか、見事に見極めてご覧にいれます!」


 タバサはメガネをくいっと上げながら、何やら張り切リ出す。

 しかしジーさんの方はと言えば、


「あー、うむ。なんじゃ、その、ほどほどでよいぞ……」

「はいっ!」


 そんな感じの微妙な返事で、部屋を駆け出ていったタバサを見送ったのだった。


   ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 そしてしばしの時間の後、俺たちは会議室らしき部屋に通された。


 いくつも並んだ机の最前列の真ん中に座るエニア。その向かいの、一段高くなった所の机に立っているタバサ。残る俺たちは邪魔しないように適当に座っている。


 あんまりこういう部屋使った事ないけど、多分タバサのいる机で偉い人が話をしたりするんだろうなー。


 そしてタバサが話し始める。


「それでは僭越ながら、私タバサがエニア様の素質を見極めるべく、幾つかの試験を用意しました」


 それを聞いて、エニアはやる気を見せる。


「ふっふっふ、『試練』ですか。望むところです!」

「違います。『試練』ではなく、『試験』です。まず申し上げておきます。我が工房の技術というのは……」


 そして一段高い机から、なんだか少し得意そうにジーさんの工房の凄さを語り出すタバサ。

 その間に、俺はジーさんに尋ねた。


「なあジーさん。あのタバサって執事、試験出すって言ってたけど技術方面には詳しいのか?」


 するとジーさんはなぜか少し言いづらそうに答えた。


「う、うむ。タバサはワシの工房で技師見習いじゃった時期がある」

「え? じゃなんで冒険者兼執事なんてやってんの?」

「あー、それはじゃなあ……」


 ジーさんは言葉を濁している。やっぱり何か言いづらい事情があるみたいだ。

 その間にタバサの話は進んでいき、いよいよ最初の試験が始まる。


「ではエニア様にお聞きします。我が工房の、どのような技術を身につけたいと思ってらっしゃいますか?」

「それは、熱、光、雷のコントロール技術です!」


 ああ、ジーさんと通信してたときに言ってたヤツだな。

 その返答に対し、険しい目をしたタバサの質問がすかさず飛ぶ。


「そのような危険な技術を、何に用いるおつもりですか?」


 そしてエニアもすかさず答える。


「それは、エネルギー誘導弾です! 私もそうですが、身体を動かすことが苦手でも、エネルギー弾を誘導する技術があれば魔物から人々を守りやすくなるはずです!」


 そんなこと考えてたのか。エニアらしい。武器屋になったのも、人々を魔物から守る冒険者の助けになりたいからだっていってたもんな。


 そのエニアの答えは、一応タバサに認められたらしい。


「なるほど、エニア様のお考えはよくわかりました。まあ、口だけではなんとでも言えると思いますが」


 ということだった。

 なんだろう? やっぱりエニアへの風当たりが強くない?


 そんなことを感じている間にも、タバサの試験は進む。バサッと紙の束を取り出し、説明を開始した。


「次は、我が工房の技術を扱うに足る知識がエニア様にあるか、試させていただきます。この紙に書かれた問題を解いてください」

「分かりました!」


 知識かー。なんかエニアは、錬金術師の割には薬とかより機械とかの方が詳しそうだけど、実際のところどうなんだろ? っつっても、演算器を発明したヒューレ店長の弟子だしなー、エニア。


 とか思ったら、ジーさんからタバサにこんな声が掛けられた。


「の、のうタバサ。本当に大丈夫なんじゃろうな……?」


 ふとジーさんを見ると、なんだか疑わしげな目でタバサを見ている。

 しかしタバサは自信満々な様子で胸を張り、


「もちろんです。このタバサにお任せ下さい!」


 ということだった。

 が、タバサから渡された問題用紙に目を通していたエニアから、ためらいがちにこんな声がかかる。


「あ、あの~、この計算問題、書いてある理論式が間違ってるんですけど……」

「え」

「あと、こちらの記述問題ですけど、ここに書いてあるような技術的問題はすでに解決されてますけど……」

「そ、そんなはずは……」


 慌ててエニアに駆け寄り、問題文を見せてもらっているタバサ。

 試験を出している側なのに、むしろエニアの授業を聞いている感じになっている。


 そして、とうとう、


「……というわけなので、ちょっと私のほうで訂正しておきますね」


 受験者による、試験者の添削が行われてしまった。

 タバサは顔を真っ赤にして押し黙り、ちょっと身体がぷるぷる振るえている。なんかもう、「哀れ」って感じ。


 俺は、なんとなく感じていたことをジーさんに聞いてみた。


「なあジーさん、あの秘書ひょっとして、ちょっとポンコ……」

「みなまで言わんでくれい。分かっとるわい……」


 ジーさんは普段から苦労しているようだった。

 そしてタバサにとって恥辱であっただろう時間が終わり、彼女は依然真っ赤な顔で次の試験内容を告げる。


「さ、最後は、こちらの指定する鉱石をダンジョンで採取してきていただきます! ただし、リガル様の参加は認めません!」


 お、そうきたか。

 まあ、俺が参加すればそこら辺のダンジョンなんか脅威でも何でもないし、滞納している家賃を盾に俺を強制参加させることもエニアには可能だ。タバサの出した条件は妥当だと言えるだろう。


 タバサは説明を続ける。


「失礼ながら、エニア様に人徳があるか、いざというときにエニア様の味方になる人がいるのかどうかを試させてもらいます! 西の川向こうにある、ダンジョンと化した廃行動から希少な『ユニコーンライト鉱石』を持ってきていただきます!」


 そのタバサに、ジーさんが声を掛ける。


「のうタバサ、意地悪しないで認めてあげたらどうじゃあ?」

「いえ、我が工房の技術を狙う輩から身を守る術を持っていなければいけません!」


 タバサは頑として譲らなかった。


「先ほどご自身でもおっしゃいましたが、エニア様は自信では戦う術を持たないとお聞きしました。足でまといの貴女をつれてダンジョンへ向かってくれるほど、信頼関係を築いている仲間はいらっしゃるのですか?」


 そろそろ記述試験の時の恥が薄れてきたのか、赤みの収まった顔で尋ねるタバサ。しかし、


「あ、僕は全然オッケーだよ」

「あたしもー!」


 クードとプリシラは速攻で快諾する。


「実はさ、僕もちょっと『ユニコーンライト鉱石』が欲しいなと思ってここに来たんだよね。この試験で採取したそれはもらっていいかな? エニアちゃん、タバサちゃん?」


 へー、クードのヤツ、そんな目的があったんだ。そして、今のクードの提案に対する二人の返答はOK。クードの参加はあっさり決まった。ちょっとタバサは悔しそうにしていたが。


「ま、まあクード様は利害が一致しただけのようですね。プリシラ様の方はいかがですか?」

「アタシは、エニちゃんのためなら協力するよー! 魔物ぶっ飛ばせばいいんでしょー?」

「そ、そうですか……」


 プリシラの参加はさらにあっさり決まった。

 エニアは二人に礼をいう。


「ありがとうございます! クードさん、プリシラさん!」


 しかし、ここまで話に入れてないヤツが一人。ヒスイだ。


「うう……ダンジョン……魔物、いっぱい……」


 耳と尻尾をへろへろさせて迷っている。それを見たタバサは何だか愉快そうだった。


「ふふ、やはり、日頃仕事をしていても全員協力してくれる訳ではないようですね。エニア様の日頃の行いが透けて見えるようです」


だが、タバサのその言葉を聞いたヒスイの耳が、ぴくりと動いた。そして、


「えにあ、日頃の行い、悪くない……美味しいごはん、たくさん作ってくれる……わたし、えにあのために頑張る……!」


 ヒスイにしては覚悟の決まった目で、タバサを見返す。エニアは喜びの声を上げてヒスイの手を取る。


「ありがとうございます、ヒスイさん! 今度、好きなものたくさんつくりますね!」

「やった……えにあ、大好き……!」


 こうして、タバサの思惑とは逆に和気あいあいとしながら、ダンジョン攻略メンバーが決まった。

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