第2話:Process1[最強への第一歩です!]Flow2
「ご、ごめんなさい。クードさん、皆さん……」
「あはは……ま、まあ、お客さんに当たらなかった分、良かったんじゃないかな……」
休憩室で苦笑いしながら、クードはプリシラに、木剣が激突した頭に治癒魔法を掛けてもらっている。
そしてクードはもちろん、全員に平謝りするエニア。
俺は意地悪する意図はないが、エニアに忠告する。
「お前、もうちょっと筋力付けるまで木剣も握るな。危ないから」
「うう……」
なんだかとても残念そうな顔で、エニアはしょげてしまった。
しかしタイミングのいいことに、俺は今のエニアが喜ぶようなお土産をアクティスで買ってきていた。
「エニア、元気出せ。いいもんやるから」
「いいもの、ですか?」
「ああ、アクティスで見つけた、お前にぴったりのハンマーだ」
「え、ハンマーですか? 私がですか?」
「そうそう」
不思議そうに首をかしげるエニア。俺は収納錬成具からそのお土産を取り出した。
それは、太く長く丈夫な、しかし角張った珍しい形状の柄、その先端の打撃部は大きく真っ赤な色をしており、なにより特徴的なのは、衝撃を吸収するための蛇腹形状。つまり――
「ピコハンじゃないですかー!!」
「ただのピコハンじゃないぞ。アクティスの店舗限定、数量限定の最高級ジャンボピコハンだ。お前も専用の武器が欲しいだろうと思ってさ」
なんかアクティスのお店でこのピコハン見たとき、これを振り回すエニアの姿が浮かんだんだよなー。
俺的にはすごく似合うと思う。エニアとピコハンって。
そのエニアはピコハンを手に俯き、ちょっとプルプル震えていた。
「あれ、そんなに嬉しかったのか? いやー、そんなに喜んでもらえると、なんかリガルさん照れちゃうなー……」
しかしエニアは唐突にピコハンを振りかぶり、
「ば、バカにしないでくださーい!!」
思いっきり俺に振り下ろした。結果、
ぴこーん!!
とても爽快感溢れる音が鳴り響いた。
「お、結構いい音でるじゃん。叩かれても痛くないし。さすが最高級ピコハン。どうだ、エニア?」
そのエニアはなんとも微妙な表情をしていた。
うれしさと、それを表情に出さないように我慢している感じ。
「ま、まあ、確かにいい音でしたけど、所詮おもちゃですし。全然うれしくもなんとも……」
おや? もしかしてエニアさん、俺を思いっきり殴れてちょっと嬉しいのかな? でもそれを素直に言いたくないのかな?
だが、そんな微妙なエニアの胸中を察していないであろうプリシラが羨ましがる。
「エニちゃん、いい音だったのにいらないの? だったらアタシにちょーだい!」
しかしエニアは、やはりプリシラの要求を却下した。
「い、いえ、これはリガルさんが私にってことなんで、むげにするにもちょっとアレなんで、一応もらっておきます」
そしてピコハンはエニアのものとなった。
それから数日間、エニアはことあるごとにピコハンで俺をぶったたき、その度にちょっとニヤニヤしていた。
木剣だと当たらないのに、なんでピコハンだと当たるのかは不明だが、「攻撃が当たり、手応えがある」ことが楽しいのだろう。
いままで全部外してきただろうしな。
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
それから数日後、もはやエニアは俺をぶったたける喜びを隠さないようになってきた。
本人曰く、
「いや~、ムカつくせくはらお兄さんを思いっきりどつけるのは気分がいいです。ゆくゆくはこれを改造して、リガルさんにもダメージを入れられるように……ふっふっふ……」
とのことだった。改造が上手くいかないことを祈るばかりである。
そしてある日の休憩中、俺の持っている【SABER】専用通信魔道具に着信があった。
通話ボタンを押すと、そこからは老人の声が勢いよく飛び出してくる。
「おおい、小童ァ! おるかァ! 返事せい!!」
【SABER】で俺を「小童」と呼ぶのは一人だけだ。S.Ⅵ、【武装翁】ジョルジオ・テイドマン・ツー・オルデンブルク。異能で動く機械の鎧を駆って戦う、腰が曲がってもまだまだ元気なジーさんだ。
このサルティヴの王家から一代限りの爵位を与えられており、王国の北方、他国との国境付近を治める貴族でもある。
さらに魔法機械工学の第一人者であり、特に熱や光、雷を制御して打ち出す兵器を開発し、都市を魔物や戦争から守ることに大きく貢献した人物だ。
その白髪まじりのグレーの髪をオールバックにし、丁寧に切りそろえられた口ひげを生やし、上品な服を着た赤銅色の肌のジーさんが通信魔道具の向こう側に映っている。
「なんだよジーさん。そんな大声出さなくても聞こえるって」
「うむ、ちょっと用事があってのう。おぬし今、あのババアのところにおるんじゃろ? ちょっと呼んできてくれんか。話がある」
「ババア……ってまさかヒューレ店長のこと?」
店長に聞かれたらしばかれそうな返答だったが、はたして俺の予想は当たっていた。
「そうじゃ、あいつじゃ」
そんなこと言われても、ヒューレ店長の見た目は25歳くらいの黒髪美女だ。まあ、エニアによると見た目と実年齢はかけ離れているって言ってたけど……
「店長って、やっぱりそんな年齢なのか?」
「そうじゃ。あの見た目に騙されてはいかんぞ! なにしろ……」
と、ジーさんが何かを言いかけたところで、誰かが通信魔道具をのぞき込んできた。
「お~、ジオ坊じゃん。久しぶりだな~」
ヒューレ店長だった。店長、ジーさんのことも坊やよばわりかよ。
そんな呼ばれ方したら、当然ジーさんの方も怒る。
「その呼び方はやめろと言っておろうが!」
「そ~んなつれないこと言っちゃってさー。あ~あ、昔は可愛かったのになー」
……昔は可愛かった? いつの話してるんだ?
「うるっさいわ妖怪ババア! 大体、おぬしはいつまで生きとるんじゃ!? とっととくたばらんか!」
すげえ悪態をつくジーさん。しかし店長の方はというと、依然ヘラヘラしたまま言い返す。
「あー、そんなこと言っていいのかなー?」
「な、なにがじゃ……」
何かを感じ取ったのかたじろぐジーさん。
そして店長は唐突に俺の肩をひきよせ、
「なあ聞けよリガ坊、ジオ坊ってばよお、昔オレがシャワー浴びてたときに……」
「だぁー!! 何十年前の話をしとるんじゃあ! あ、あれは若気の至りというか、気の迷いというか、とにかくそういうヤツじゃ! 今はもう関係ないわい!」
過去の何らかの話を暴露されかけ、思いっきり慌てるジーさん。
っていうか、やっぱり店長ってこの見た目で何十年も生きてるのか?
ジーさんを思いっきりからかった店長は楽しそうに笑っている。
「うひひひ。じゃあそういうことにしておいてやるよ。んで? 今日はなんの用だ? なんでオレに直接連絡しなかったんだよ?」
「何度も掛けたが、おぬしが全然でなかったからじゃろうが! だから小童の方に連絡したんじゃあ!」
「あー、悪い悪い。オレの通信魔道具、またどっかに埋もれてるなー、こりゃ」
まあ、店長の部屋は本と機材と酒瓶ばっかりだからなあ……。ジーさんも呆れている。
「まったくおぬしは……それで本題なんじゃが、最近お主の店で売り出した武器、あの素材は前からお主が言っておった素材じゃな?」
お、ジーさんもエニアの武器の素材が普通じゃないって知ってるのか。
「ああ、エニアの合金か? そうだよ」
「それについて詳しい話を聞きたいんじゃが……」
「んー、じゃあエニアに直接訊いてくれや。おーい、エニア~」
そういって店長は店の方へ呼びに行く。その間に、俺はジーさんに聞いてみた。
「ジーさん、店長と知り合いだったのか?」
俺の質問に、ジーさんはヒゲをなでつけながら、苦い思い出について語るような表情をしていた。
「あー、まあ、昔、各地を旅していた時に同じパーティだったことがあってのお……」
「ジーさん、75歳だろ? それ50年前とかの話だよな? まさか店長、その時から……」
「そうじゃ。その時からあの見た目じゃったわい。いったいどんな手を使っているやら……小童。おぬしもあの見た目に騙されるでないぞ?」
俺は大丈夫だ。危ないのはクードの方だ。
「わかってるよ。シャワー浴びてるとこを覗いたりしないって」
「そ、その話を持ち出すんじゃないわい!」
少しでも面白いと思っていただけたなら、
下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてもらえると励みになります。
よろしくお願いします。




