第1話:Process1[最強への第一歩です!]Flow1
『会議』ってやつは疲れるよなー。
俺、リガルは一応、冒険者ギルドのS級冒険者部隊【SABER】に所属している。
まあ、自分の戦闘行為を禁じる異能・【棄却】なんてものが発現しちゃったせいでブランク2年あるけど。
でも、最近やっと戦えるようになったから、ギルドマスターの招集を受けて臨時の【SABER】会議が今日行われた。
しかも俺の場合は、王都アクティスの冒険者ギルド本部にいるギルドマスターが事前に直接会いたいとか言い出しやがったから、俺の今の雇い主、錬金術師のエニアの武器屋を5日ほど休んで王都へ移動し、そこで会議に参加した。
議題は俺を【SABER】としての仕事に復帰させるべきかどうか。
正直、まだ荷が重い。
俺が【棄却】の影響を受けずに戦えるのは、エニアの作った【仮面剣ユング】の効果が発揮されている時だけだ。
そんな俺に【SABER】の任務を安定してこなすことはできないだろうという意見が多く、結局俺の復帰は先送りとなった。
S.Ⅲとかは、やたら俺に対する当たりが強いからキツかったー。
でもそんな会議もやっと終わり、俺はエニア達や孤児院のチビ達へのお土産を買って帰路についた。
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
そして戻ってきました、ヒューレ錬金術工房。
少し前にあった魔物暴走事件が解決してから、武器販売コーナーにもお客さんは多く来ている。ヒスイとプリシラが忙しそうに客の相手をしていた。
俺は店内に入り、ちょうど並んでいた客が掃けたところで二人に声を掛ける。
「おー、ヒスイ、プリシラ、おつかれー」
「あれ? リーくん今日までお休みじゃなかったっけ?」
首をかしげるプリシラ。頭上の謎存在、〝アホ毛様〟も器用にに『?』マークを作っている。
「ああ、会議が昨日で終わったからさ、顔出しに来た。お土産もあるし」
俺がそう言うと、プリシラとヒスイは目を輝かせて飛んでくる。
「おみやげ? なになに? どんなの?」
「食べられるヤツ……?」
「王都で人気のスイーツだ。けっこう美味かったぞ」
そして俺は、エニアに借りていた収納錬成具からお土産のお菓子を取り出す。カラフルな焼き菓子にクリームが挟まった、一口大のヤツ。
途端にヒスイのテンションが上がる。尻尾がひょろりと立ち上がり、ちょっと振るえている。
「わ……おいしそう……ね、食べてもいい……?」
しかしプリシラに注意を受ける。
「だめだよヒーちゃん。まだ休憩時間じゃないよ。またエニちゃんに怒られるよー」
「うう……お菓子、食べたい……でも、エニア、怖い……」
ヒスイのヤツ、まーた食欲と恐怖の間で葛藤してるよ。
……ん? エニア、魔物と同じカテゴリになってないか? ヒスイの中で。
まあいいや。
すると、俺たちの会話が聞こえていたのだろう、クードが店の方に入ってきた。
「リガル、帰って来てたんだ。会議お疲れ様」
「おう、お前もお仕事お疲れ様」
「お土産買ってきてくれたみたいだね。じゃあヒスイちゃんとプリシラちゃんは休憩に入るかい? 店番は僕が代わるよ」
人の良いクードの提案に、プリシラとヒスイは飛びついた。
「クーくん、ありがとー!」
「くーど、気配り出来る男……愛してる……」
大げさなことを言うヒスイ。そして、ちょっとぎょっとするクード。
「えっ!? い、いや、気持ちはうれしいけど、僕には心に決めた女性が……」
「ん、社交辞令……」
「あ、そう……」
うっすら傷ついたクードの脇を抜け、俺たちは休憩室へ入る。
そしてお菓子の袋を開ける。
「じゃあ、リーくん。お土産いただきまーす!」
「いただきます……!」
「おう、それはいいけど……エニアは?」
そう、店にも休憩室にもエニアの姿がない。店長のところか?
俺の疑問にプリシラが答える。
「ふぇにひゃんふぁ、ふはにはへ……」
「飲み込んでから話しなさい」
プリシラは口中のお菓子を処理し終えてから、改めて答えた。
「エニちゃんは裏庭にいると思うよー。なんかねー、〝特訓〟だってー」
「〝特訓〟? なんの?」
「えにあ、強くなりたいみたい……」
「ええ……あいつが……?」
俺はヒスイとプリシラの言葉に不吉なものを感じた。
エニアははっきり言って運動神経がない。めっちゃない。
剣を振ったらバランスを崩してコケる。
孤児院のチビ達にかけっこで完膚なきまでにたたきのめされる。
スキップが出来ない。
ダンスが下手。
リフティング連続成功回数1(もはや〝連続〟ではない)。
腕立て伏せやらせてみたら、身体が持ち上がらなくて、胸が床との間でむにむにしてた(よい眺めだった)。
そんなエニアが強くなるための〝特訓〟とか、何をしているやら。俺はその様子を確認しに、裏庭を覗いてみた。
……裏庭の真ん中には、人の形に木材と布を組み合わせたナニかが突っ立っていた。俺が休暇に入る前にはなかったヤツだ。
その前で精神統一(だと思う)をしているエニア。その手には木剣が握られている。
そしてエニアはカッ! を目を見開き、
「えいっ!」
と、エニアの木剣は旋風のごとく人形の頭上を通過し、
「やあっ!」
烈火の勢いで繰り出された袈裟斬りは人形に届くことなく、
「とおっ!」
流水のように迸る剣先で人形の足下の地面のみをえぐり、
「はああっ!!」
閃光を思わせる突きは人形のはるか手前で止まった。
……つまり人形にはなにも起こっていない。なにがしたいんだコイツ。
そのエニアは「やりきった」感を漂わせながら息をつき、ひとり呟く。
「はぁ……はぁ……今日はこんなところですかね……」
「なにがだよ」
思わずツッコミを入れてしまった俺。するとエニアは、俺の気配に全く気づいていなかったらしく、びくっ! となって叫んだ。
「んきゃああああ!! リ、リガルさん!? いたんですか!?」
「いた。見た。聞いた。何してんのお前?」
俺がそう聞くと、エニアはいたずらが見つかった子供のように俺から目を反らし、木剣を後ろに隠した。
「い、いえ別に、これといって特には……」
気まずそうにしているエニア。そうしていると、俺の後ろからプリシラがひょこっとのぞき込んで暴露する。
「えー、エニちゃん、『剣を使えるようになってリガルさんをびっくりさせてやるのです!』って言ってなかったー?」
「ちょっ、プリシラさん!? なんで言っちゃうんですか!?」
「あ、あれ? 秘密だった? ごめんね……」
ちょっと顔が赤くなったエニアと、軽口をあやまるプリシラ。「びっくりさせてやる」って言ってたんなら秘密に決まってるだろうが。
「なんだエニア、お前剣士にでもなりたいのか?」
「い、いけませんか!? 私が剣士目指しちゃいけないですか!?」
更に赤くなった顔で抗議するように言うエニア。
「でもお前、ちょっと前に素振りして転んでたくらいだったじゃん」
「もう以前の私とは違います! リガルさんがいない間に特訓しました。もう剣を振っても大丈夫です!」
「その割には、その人形きれいだよなー」
そう。さっきエニアが打ち込もうとしていた人形には、いまだキズひとつない。
それを指摘すると、エニアはたじろいだ。
「うっ……こ、これから本気をだすところだったんです!」
「へえ……では見せてもらおうか。そういうエニアさんの本気とやらを」
俺はちょっと意識的にニヤついて挑発してみた。すると案の定乗ってくるエニア。
「むうう……バカにして……見ててくださいよ……!」
そうしてエニアは再び人形に向き直り……、
「やあっ!」
と、真横一文字に振り抜いた。
……が、それはもはや当然のように人形には当たらず、さらに木剣はエニアの手からすっぽ抜け、
「ひゃあっ!」
プリシラの顔面ギリギリをかすめ、お菓子を食べていたヒスイに向かって飛んで行き、
「ぎにゃああ!!」
とっさに展開された【拒絶の盾】で弾かれて休憩室から店側にぶっ飛び、最終的に――
「あ痛ぁーーーーっ!!」
クードに当たったみたいだな。
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