Prologue[月影の剣狼]
第2章、始まります。よろしくお願いします!
夕暮れ時、赤く染まる林の中を、一組の親子が駆けていました。
何も家路を急いでいたのではありません。お母さんと少年の顔には恐怖の色がありありと浮かんでいます。
魔物です。この親子は、恐ろしい魔物に追われているのです。
その魔物は、それはもう、すっごく怖いヤツです。それに、すっっっごく強いヤツです。
きっとこの魔物を倒せるのはS級冒険者、【SABER】たちくらいのものです。
そんな魔物から逃げている途中、少年は木の根に足を引っかけて転んでしまいました。
それを見逃す魔物ではありません。その大きな口で少年を食べてしまおうと、牙をむいて襲いかかります。
お母さんは倒れた少年に覆い被さり、必死にかばおうとします。いいお母さんです。
ですが残酷なことに、それでは魔物の餌食になってしまうだけです。
魔物の鋭い牙と爪が親子に迫ります。絶体絶命の危機です。
しかし、魔物のその爪先がまさにお母さんに届こうとしたとき、魔物はピタリと動きを止めました。
そして、
スッ――
その身体に真一文字に剣閃が走り、魔物は消滅してしまいました。
そして、親子は見ました。
魔物のいたところの向こう側に、一人の剣士が立っているのを。
風に流れる金色の髪。繊細な装飾を施した黒い鎧。そして夜空をそのまま溶かし込んだかのような、漆黒のかっこいい最強の長剣、【月蝕斬魔剣エンシェント・イクリプスXⅢ】。
その剣士はすらりと背が高く、身体は引き締まりつつ、しなやかで均整のとれた、優美な曲線を描いています。女の人です。
この剣士が魔物を一撃で倒してしまったのです。【SABER】でないと歯が立たないようなヤツをです。
強いです。すっごく強いです。そしてすっっっごくかっこいいです。
実は、このかっこいい女性こそが本当の世界最強の剣士なのです。
え、S.Ⅱ、【神剣】シリウス・カリバーですか?
ハッ、あれは違いますね。あんな中身がプリンと『せくはら』で出来ているヘタレお兄さんが最強なわけないじゃないですか。
あれが世界最強の剣士と言われているとか、世の中どうかしています。
ともかく。
親子の危機を助けたのは、この金色の髪に漆黒の剣を携えた剣士です。
親子はお礼を言って、かっこいい剣士の名前を尋ねました。
最高にかっこいい剣士は答えます。
「私は、エニ……いえ、我は……」
そう、その最強で最高にかっこいい剣士の名は――
「【月影の剣狼】、”レグルス・X・カリバー”ですー!!」
ですー……
ですー…………
ですー………………
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
「おーいエニア、起きろ~。店番、交代の時間だぞー」
「はッ!? ……あ、なんだ。夢ですか……はぁ~……」
かっこいいもの好きの少女・エニアの理想はため息と共に霧散した。
さて、エニアの失意とともに始まりました、第2章。
物語はまだまだこれからですが、
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