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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第1章:ヘタレ剣士とアラモード

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第25話:Process5[濡れ衣の枚数]Flow1

 客が来ない。待てど暮らせど誰も来ない。


 武器だけでなく、薬や素材の方の客も明らかに減っている。

 しかし、俺たちは特に何もしていないので、原因が分からない。


 今も店番をしている俺の隣で、エニアは首をひねっている。


「う~ん……お客さんの方に何かがあったことは間違いないと思うんですが……」

「確かに。街の人たちが俺たちを見る目もなんかおかしいよな……」


 店の外をのぞくと、時折店の方を見て何やら話をしている人を見かける。

 しかし、その人達に話を聞こうにも、こちらが近づくと逃げ出してしまうのだ。


 逃げた奴をとっ捕まえてでも話を聞き出してみるか? と考え出した時だった。買い出しに行っていたクードが慌てて飛びこんでくる。


「リガル! エニアちゃん! ちょっと大変な事になってるよ! 僕もたまたま立ち聞きしただけなんだけど……」


 と言ってクードは外で噂されていたらしい内容を話し始める。


 それは、先日の魔物襲撃事件は、武器の宣伝のために俺たちが魔物を操って仕組んだ自作自演の討伐劇だった、というもの。


 エニアは当然激昂するも、俺は怒るよりも呆れてしまった。


「誰だよ、そんなこと言い出したヤツ……」

「そうです! 事実無根も甚だしいです!」


 確かに、ヒューレ錬金術工房は魔物を使役するための補助魔道具を販売しているし、エニアもその魔道具は作れる。


 しかし、魔物の使役は補助魔道具だけではなく、魔術や異能も併用しなければいけない。


 魔術にも詳しい店長なら可能かも知れないが、そもそも各方面へのコネクションを持つ店長が武器を宣伝する気になれば、こんな回りくどいことをする必要はない。


 しかし、あらぬ疑いとはいえ放置しておくのはマズい。

 神の評価である霊性ランクが冤罪で下がることはないが、せっかく上がった商業ランクや職業ランクは、人の評価ゆえに再び下がってしまう可能性がある。


「騎士団がなにか掴んでいればいいんだけどなあ……」


 魔物がどこから街中に入り込んだかが不明な事など、先日の魔物襲撃事件には不審な点が多い。騎士団が調査をしているらしいが、進展があったという話は聞かない。


 人為的な事件でないと分かるか、人為的なものであれ犯人が判明すれば、この噂も落ち着くと思うのだが……。


 エニアも同じ事を考えていたのか、また攻めの発言をしだす。


「いっそのこと、私たちで真相を明らかにしましょう!」

「いや、エニア。気持ちは分かるが、俺たちに捜査権はないぞ?」


 俺が水を差すと、エニアはむくれて机をバンバン叩く。


「むー。じゃあ、どうしろっていうんですか? このまま手をこまねいているんですか?」

「騎士団の捜査に協力を申し出るのはどうかな?」


 クードはそう言うが、


「街中で犯人だと噂されている人間を捜査に参加させるか?」

「それもそうだね……」


 それっきり、俺たちの議論は行き詰まってしまった。ヒスイやプリシラも加えて話し合うも、これと言ったアイデアは出なかった。


 いつもはおバカなプリシラが、意外な切り口で現状を打開する……なんてお約束展開もなかった(実は"アホ毛様"にちょっと期待していたが)。


 世の中、そんなに甘くはないのである。


 だが、唯一決まった事がある。

 この空き時間を活用して、エニアが俺の専用武器を作ってくれるらしい。どうせなので、色々と変わった仕様を要望させてもらった。

 完成まで少しかかるらしいが、武器に対する不信感が無くなった今は、なんだかちょっと楽しみだ。


   ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 翌日の午前、やはり客のいない店内で、並んで頭をひねりながら店番をする俺とエニア。


 でも正直、「プリン食べたいなあ」くらいしか思い浮かばなくなってきた。


 俺は最早客足などどうでもよくなり、「今日の分のプリンをいつ食べるか」という、血糖値と幸福感を予測して意志決定を行う極めて高度な心理的、かつ数学的な思索に没頭していた。


 武器屋で働いてから、このときが一番真剣に思考を巡らせていたと自信を持って言える。


 しかし、そんな俺の頭脳労働を邪魔する不届き者、じゃない、赤い髪に黒いコートのお客がやってきた……、


「ってウィリオンじゃないか」

「ウィリオンさん、おはようございます」

「うむ、リガル君、エニア君、おはよう。調子はどうかな?」


 相変わらず、活力に満ちた明るい口調で話しかけてくる。

 が、今の俺にはその朗らかな様子はイヤミにしか聞こえない。


「おかげさまで最悪だよ」

「もう、リガルさん、そんなこと言っちゃダメです。ウィリオンさんには何も関係ないじゃないですか」

「む、確かに。スマン、ウィリオン。今のは朝の会話をスパイシーに彩るリガルさんジョークだということにしておいてくれ」

「ははは、いや、いいんだ。こちらも気遣いに欠けた事を言ってしまったからね」


 俺の失言にも、ウィリオンは笑って返してくれた。


「それで、今日はどうした? ああ、この前話した武器でも買いに来たか?」

「いや、実は先日の事件についての話を聞きに来たのだ」

「なんだ、あんたも俺たちが犯人だって疑ってるのか?」

「それが、私個人は君たちが関わっているとは思っていないのだが、仕事柄調べない訳にもいかなくてね」

「仕事? 騎士団でもないのに?」


 俺の質問に、ウィリオンは首肯した。

 その話を聞くと、どうやら以前からウィリオンは魔物に関する知識の高さを買われ、騎士団に協力することがあるらしい。


 それは先日の魔物襲撃事件についても同様であり、ウィリオンは俺たちから話を聞きたいということだ。


 なので俺たちは販売をレイチェルさんに任せ、店長も呼び、控え室でウィリオンの調査に応じることにした。

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