第26話:Process5[濡れ衣の枚数]Flow2
先日の魔物襲撃事件についての話を聞きに、店に来たウィリオン。
その呼びかけに応じて俺たち全員がそろったところで、説明が始まった。
「皆、仕事中に申し訳ない。話を聞いてくれて感謝しよう。早速だが、先日の魔物襲撃事件に限らず、最近魔物が暴走し凶暴化するような事が頻発しているのは知っていたか?」
「なんとなくそういう話は聞くし、実際、そういう魔物に遭遇したこともある。やっぱり何かありそうなのか?」
今まで戦った魔物を思い出しながら俺がそう答えると、ウィリオンは神妙な顔で頷いた。
「ああ、今までに目撃された魔物の様子からすると、何者かによって起こされた事件であることは間違いない。ファシエ君達を襲った魔物も、先日のソーンドラゴンも同様だ。身体強化魔術や障壁魔術が掛けられていたところからも、魔物は何らかの使役状態にあったものと見ている」
なるほど、使役か。確かに俺たちが戦ってきた魔物達、何か様子がおかしかったからな。何かあるんじゃないかと思っていたが……。
「そして私は、自身が【使役】の異能を使う魔物使いとして騎士団からの要請を受け、使役が使えそうな人間や、そのための道具を売っているところをしらみつぶしに調査していると言うわけだ」
「でも、さっき、私たちの事は疑っていないっておっしゃっていませんでしたか?」
今度はエニアがウィリオンに問いかける。
「うむ、君たちの中には魔物を使役する能力を持つ人物がいないこと、また店長殿には今回の騒動を起こす動機がないことは分かっている。そうですね? 店長殿」
「ふあ~あ……ウィリ坊の言うとおりだぜ」
店長は眠そうにしながらも、ウィリオンの言葉を肯定した。
「ふむ、そうであれば、やはりこの店は容疑者から外して良さそうだ」
そう言ってウィリオンが結論づけたとき、すかさずエニアがビシッ! と手を挙げて提案した。
「でしたら、ウィリオンさん! 私たちも捜査に協力させていただけませんか?」
「協力? 確かに、今はアークハウスの手を借りることができないので、少々人手は不足している。手伝ってくれるというならありがたい」
「ありがとうございます!」
こうしてエニアが首尾よくウィリオンの許可を取ったとき、今度はクードが割り込んだ。
「ちょっと待ってください、ウィリオンさん。『今はアークハウスの手を借りることはできない』とおっしゃいましたが、彼らに何かあったんですか?」
「君は……ええと、クード君だったね。今アークハウスはこちらの店と同じように、魔物襲撃事件を引き起こしたのではないかと疑われていてね。それどころか先日の【魔物氾濫】もアークハウスの仕業だという噂が出回っている」
マジかよ。ホントに誰だよ、そんな噂流したヤツ。
「そんな世間の風評もあってなかなか自由に動かすことはできないのだ。まったく、世間で言われるような霊性F級のメンバーなど、ごくごく一部にしかすぎないというのに」
ウィリオンは額に手を当て、少し疲れたような顔をした。
「で、ではファシエさんは今……?」
「ふむ、彼女はアークハウスへの嫌がらせや苦情の対応に奔走していてね、大分心を痛めてしまっている。早く事件の真相が分かればいいのだが……」
それを聞いて、クードの目に力が満ちあふれた。ここで活躍して想いを寄せるファシエにアピールしたいのだろう。
「じゃあ、ウィリオンさん、エニアちゃん。事件捜査の協力は僕に任せてもらえないかな?」
クードは力強く立候補するが……、
「ダメです」
「え」
エニアの返答は渋かった。
「クードさん、この間"また"年上の美人さんにデレデレして商品をタダで譲ってしまいましたよね? まだその分の損失を補填できていません。それまではきりきり働いてください」
「え、エニアちゃん……それは、事件解決の後に何とかするから! 後生だから!」
「ダメです。もし仕事をほっぽって捜査に協力したら、『女に色目使って商品を粗末に扱ったあげく、仕事せずに遊び回っている人間性F級野郎だ』ってみんなに言いふらします」
「な……いくら何でもそれは……」
容赦ないエニアに絶句するクード。
「言 い ふ ら し ま す」
「………………(ガクッ)」
哀れクード。4歳下の少女に恋路を阻まれ、灰となる。
代わりに、俺は尋ねた。
「クードがダメなら、じゃあ誰が行くんだ?」
「消去法でリガ坊じゃね?」
そう言ったのは店長だった。
「エニアは客の質問に答える必要があるから店に常駐しなければいけない。ヒスイはコミュ力に難がある。プリシラは……『手伝う』ことにならない。だからリガ坊だな」
「うう……確かにわたし、知らない人と会話するの苦手……」
「ん? アタシが『手伝うことにならない』ってどういうことー?」
店長の指摘に、おのおのの反応を返すヒスイとプリシラ。
「では、ウィリオンさんのお手伝いをするのは、リガルさんと言うことにしましょう。いいですか、リガルさん?」
「ああ、分かった」
「……」
俺が快諾したにもかかわらず、若干ぽかんとするエニア。
「……え、何この間?」
「あ、いや、リガルさん、もっと嫌がるかと思っていたもので……」
「失礼な。俺だって人々の平和やファシエのために力になりたいという思いはあるわい」
そういった俺にクードがわめく。
「そうさリガル。人々のために、ファシエさんのために、頑張ってくれ! だけど、ファシエさんの好感度は得ないようにしてくれ!」
「あー、善処するわ」
こうして、俺がウィリオンと共に、魔物暴走事件の捜査をすることが決定した。
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