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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第1章:ヘタレ剣士とアラモード

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第20話:Process3[結成]Flow5

 突如知らされたファシエの危機。

 それを聞いた俺は不意に殴られたような眩暈と、貫かれるような心臓の痛みに襲われる。


「うっ……」


 そんな俺を、エニアは心配そうな顔で見ている。


「リガルさん……?」

「いや、大丈夫だ」


 俺がフラついている間も、ウィリオンは話を続ける。


「今、騎士団や冒険者ギルドに救助の依頼を出しているが、街の防衛もあるからすぐには動けないらしい! 私もアークハウスの戦えるメンバーを集めているが、準備に時間がかかる! 頼む、ファシエ君達を助けに行ってくれないか!?」


 そんなこと、言われるまでもない。眩暈や痛みが、とか言ってる場合じゃない。


「行こうリガル!」

「ああ、もちろんだ……! ウィリオン、研究所の場所は?」

「シデロ北街道沿いにある。そこから真っ直ぐ北西の方角だ!」

「分かった!」


 素早く支度する俺とクード。こういうシチュエーションは冒険者には慣れたものだ。

 しかし、エニア達は慌てている。


「じ、じゃあ私たちも……」


 と言いかけるが、俺はエニアには別の事を頼んだ。


「いや、エニアは一旦街に戻って、店からポーションや毒消し薬とかを持ってきてくれ! ヒスイ、お前も一緒に!」

「分かりました!」

「わ、分かった……」


 残るプリシラは勇み込んで言う。


「アタシはリーくん達と行く! 魔物ぶっ飛ばすならまかせて!」


 確かに、派手に魔法を使って魔物達の気を引けた方が良い。


「だがプリシラ、お前、飛行魔術使えるのか? 俺とクードについてこられるか?」

「あ、そっか。アタシ飛行魔術、うまく制御できない……」


 申し訳なさそうな顔をするプリシラと、うなだれるアホ毛様。しかし、攻撃魔術の使い手はいた方がいい。


「プリシラちゃんは僕が抱えて走って行くよ! 急ごう!」


 ……どうやら、クードには俺の体調が良くないことはバレてるっぽいな。何も言わずにフォローしてくれるのがありがたい。


 そして俺たちは二手に分かれ、ファシエ達の救出のため駆け出した。


   ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 俺、クード、プリシラがアークハウスの研究所に着くと、そこは既に魔物に囲まれていた。ざっと見たところ30体はいる。


 研究所は白い石造りの壁に覆われている。かなりしっかりした造りのようで、その壁自体は魔物に破られている様子はない。

 しかし、入り口と思われる場所に魔物が群がり、魔法が炸裂する音や悲鳴が上がっている。


 魔物の大部分は、緑色の毛並みを持つ狼型の魔物・ポイズンウルフ。牙や爪に毒のある厄介なヤツだ。エニア達に薬類を取りに行かせて正解だった。


 走るクードに抱えられたプリシラが叫ぶ。


「リーくん、クーくん、もう魔法届くよ! やっちゃう!?」

「アークハウスのヤツを巻き込むなよ!?」

「だいじょぶだよー! そういうのはアホ毛様がやってくれるしー!」


 それは……大丈夫なのか? マジでアホ毛様ってなんなんだ。


「じゃあ、すごいのやっちゃうよー!」


 やる気満々のプリシラの杖に膨大な量の魔力が集まっていく。それは、魔物の群れに打撃を与えるには十分なものなのだが……、


「いや、本当に人に当てるなよ!?」

「だいじょーぶだってばー! 見ててー!」


 なぜかアホ毛様がぶるんぶるん動いている前で、プリシラの魔力は杖の先で雷の塊になり、魔物の群れの上空にすっ飛んでいく。

 そして、花火でも弾けたかように炸裂し、正確に魔物のみに襲いかかる。


 効果は、絶大だった。


 雷の直撃を受けた魔物は黒く焦げ上がり、そうでなくても痺れて足を止めている。

 チャンスだ。俺とクードは一気に魔物の群れに斬り込んでいく。


 当然、魔物共も俺達に気づいているが、プリシラの一撃が効いているのか、動きが鈍い。

 そのまま、研究所の外壁まで斬り抜け、壁の上まで駆け上る俺とクード。

 そこで目にしたのは――


「ファシエ……!」

「ファシエさん!!」


 すでに多数の魔物に侵入された敷地の中、アークハウスが敷いた防衛線の最前線に立ち、群がる魔物を光魔術で迎撃しているファシエだった。


 2年前に身体に重傷を負って引退した元ヒーラーとは言え、ファシエの魔術は健在だった。迫り来る魔物を的確に、光の槍で撃ち抜いていく。


 しかしその青白い顔を見るに、最早限界が近い。魔力が残っているしても、身体が耐えられていない。もう立っているのがやっとのハズだ。


「プリシラちゃん! 壁の上から、外の魔物を叩いて!」

「分かったー!」


 そして外の魔物はプリシラに任せ、俺とクードは研究所の中庭に降り立ち、ファシエの元に急ぐ。


 だが、俺たちが駆けつけるより早く、入り口からバカでかい影が研究所に突入してくる。それは一見、大きなポイズンウルフにも見えるが、黒く硬い毛に毒々しい緑が混じっている。あれは……


「ヴェノムパンサー!?」

「そんな、シデロの街近くに出るような魔物じゃないはずなのに!?」


 クードの言うとおり、あの毒を持つ大型の魔物・ヴェノムパンサーは本来人里離れた深い森とかに棲んでいるヤツだ。こんな所に出現するなんて聞いたことがない。

 しかし、ここにいる以上、倒すしかない。


 ヤツはファシエの方に突き進んでいる。

 相対するファシエは、倒れそうになりながらも、杖にひときわ魔力を集中させていく。


「ファシエさん……!」

「無理してでも仕留めるつもりか……!?」


 そしてファシエの杖から迸る、彗星のような光の奔流。

 あんな物を喰らえば、普通は蒸発するか、良くて身体にデカい風穴が空くだろう。

 ヴェノムパンサーにその魔術が直撃する。

 しかし――


「ヤバい……!」

「ファシエさんの魔術を耐えきった!?」


 ヤツは身体の半分以上に傷を負いながらも、倒れない。

 雄叫びと共に襲いかかるヴェノムパンサー。その毒に塗れた牙がファシエに迫る。

 俺はそれを阻止するべく、全力で加速!

 だが、奴を間合いに捉えたと思った瞬間に、俺は"あの悪夢"を思い出してしまった。


「うッ…………!」


 また、剣が折れるんじゃないか。

 また、助けられないんじゃないか。


 視界が揺れる。

 心臓が捻れる。


 俺の動きは致命的に鈍り、ヴェノムパンサーに届かない……!!

 しかし、


「はああああああッ!!!!!」


 俺のすぐ隣を二条の光が駆け抜け、ファシエに迫る牙に激突した!


「ファシエさん! 無事ですか!?」

「クード……! 来てくれたのですか!?」


  間一髪でファシエを守ったクード。そのままヴェノムパンサーの牙を押さえ込む。

 それでも、やはりこの魔物は何かが違うようだった。

 今度はクードに食らいつこうと、魔双剣を押し返すように暴れる。

 刃から炎を発して攻撃しつつ、その牙を押しとどめるクード。


「な、なんだこの力……普通じゃない……!? それに……」


 何かに気がついたらしいクード。

 しかしヴェノムパンサーの牙から、毒液がクードに滴る。


「ぐッ!? ううぅうううッ……!」


 毒液に触れたクードの肩が変色し、ぶすぶすと煙を上げて溶け出している。


「クード……!!」


 ファシエがクードを助けようと、ふらふらになりながらも魔術を浴びせる。

 しかし、それでもこの毒獣は止まらない。このままではクードも、ファシエも危ない。


「…………ッ!!」


 俺は歯を食いしばり、自らの中を駆け巡る【棄却】に抗った。

 相手は、ファシエの渾身の魔術に耐えた防御力を持つ魔物だ。


 また、剣が折れるんじゃないか。

 また、助けられないんじゃないか。


 …………それでも!


 俺はエニアの長剣を背中に担ぐように構え、そのまま背中からヴェノムパンサーにぶつかる。


 そして全身の力を以て、長剣を背負い投げるように、上方真一文字に振り抜いた。


 ――このとき、俺は怖かった。

 振り抜いた剣が、折れていたら。

 ……そんなことになっていたら。


 しかし剣はそこにあった。

 俺の手の中に、変わらぬ姿で。


 俺の背後で、胴を両断された魔物が倒れる音がした。


   ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 俺がヴェノムパンサーを仕留めた直後、ウィリオン達や騎士団・冒険者が応援に駆けつけ、その後の討伐は速やかに済んだ。


 ポイズンウルフの毒にやられた人も多かったが、エニア達が持ってきてくれた毒消し薬が役に立った。


 そして、途中までファシエが身を削って迎撃していたおかげで死者はでなかった。

 そのファシエは今、体力回復のポーションを飲みながら身体を休めている。

 クードも、毒にやられた所に薬を塗って応急処置を済ませている。


 端から見れば、十分な結果だった。


 けど、俺は――

武器屋のメンバーはうまく回っているようです。

リガルにはまだ不安材料があるようですが……。


さて、少しでも面白いと思っていただけたなら、下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてもらえると、作者の精神に強化魔法を付与することができます。


また、下にある「ブックマークに追加」をクリックすることでも強化魔法は付与できます。


あなたも付与術師になってみませんか?

ぜひとも、よろしくお願いします!

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