第7話『ママ』
それから私は、自分がこの世界とは違う場所で 生まれ、暮らしていた事を、目の前のベルの母に覚えている限りの事を話していた。
ー 全てを信じてもらえなくてもいい。
自分自身が混乱していて、不安な気持ちが思った以上に心にあり、誰かに話を聞いてもらいたかった。
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私の話を静かに聞いてくれている彼女は、私に問いかける。
「なるほど…つまり、今のベルちゃんは、ニホンという国からやってきたベルちゃんで…この世界のようにその世界には魔法が存在しなかったと…。そういえば、そのニホンでの記憶はあるのかしら?」
「うん…あるにはあるの…けど…。」
ー ちなみに彼女には、『敬語は使わないでほしい』、『いつものようにママと呼んでほしい』とお願いされたので、私はぎこちなくではあるが、出来るだけ彼女の要望通りに接する事にした。
「向こうの世界で、私は多分高校1年生だったの。えっと…といっても、高校生にはなったばかりでね。その…ママ…!この国って、学校とかあったりする?」
「ええ、いくつか学び舎はあるわ。ベルちゃんも入学が決まっていた、王立クレアスカイ魔法学園が一番有名かしら。」
「…!私が行こうとしていた学校があるの!?」
「ええ!ベルちゃんが、推薦を受けていた学園よ。すごいのよ!ママも、学園からその推薦入学のお知らせが来た時、嬉しくて嬉しくて!!」
ベルは何歳だったんだろう。
推薦を受けた…?
待って、待って。この世界のこともいろいろ知りたいし、家族のことも、もちろん知りたいけれど、そもそも…。
私、【私】の事を何も知らない!!
「ママ、あとで私についても、いろいろ教えてほしいけど、まずは今私が覚えている限りのこと、話すね。」
私は再び、自分の記憶を辿って話し始める。
「それで、向こうの世界で学校に入学したばかりの私は、入学式が終わったその日、不思議な感覚がずっとしていてね。」
「不思議な感覚…?」
「うん。最初は風邪かなって思ったんだ。感覚的に、体温が高く感じてね。でも風邪ではないって思った。苦しさとか、痛みとかは全くなくて…」
ー そう。今思えばあの日は、目覚めてからずっと私は妙な感覚に包まれていた。
体はいつもより温かく、けれど風邪ではなくて。
やけに、周りの音が小さく聞こえるような。
生まれて初めて、世界に自分一人だけのような。
うまくいえないけれど、これまで日本で生きてきた15年間の中で、突然導かれるような。
そんな不思議な感覚を持ちながら、私はその日の夜に、夢を見た。
夢の中で、白髪の髪の長い人がいた。その人が私に何かを言っている。
私にはその人が何を言っているのか、分からなかったのだけど…。
それからは、冒頭に戻る。
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私とママは、それからもしばらく会話を続けていた。ママが淹れてくれた、温かいハーブティーを飲みながら。
私もママも、お互いに知りたい事がたくさんあったから。
私は、自分の覚えている限りの事をママに話した上で、次は今の私について尋ねる。
「ママから見て…私…ってどんな子だった…?えっと、ごめんね…変な質問しちゃって。」
私は少し不安になりつつ、問いかける。
「そんなことないわっ!ママにたくさん教えてくれてありがとう。ベルちゃんはね…。」
「うん…」
「…ママからみれば、いつも通りの…いいえ…いつも以上に可愛いベルちゃんのままよ。今日は様子がなんだかいつもと違うと感じたくらいで。そうね…もし、ベルちゃんから今の状態を打ち明けられなかったら…。」
「…きっと何も気付けなかったかもしれないわ。」
どんな答えが返ってくるのかと緊張していた
私は、少しの安堵と、戸惑いの中で揺れていた。
「それって…いつもの私と変わらなかったってこと…?」
「そうね…今、こうして話していても、ベルちゃんだな〜って思うわ。素直に言えば、実はママのことドッキリさせようとしてるのかしら?って勘違いしてしまうくらいには。」
どうやら奇跡的に…?なのか、向こうの世界から来た私と、今の私は、ママから見れば、そこまでの違和感がないようだった。
そう言われると、なんだか、少し嬉しい気がした。
ところで、ママと会ったときから思っていたのだけど…。
ママ、めちゃくちゃ、優しいのですが!めちゃ、可愛いのですが!私のことをめっちゃ、可愛がってくれるのですが!
ママの姿は、私よりも少し濃い桃色の髪で、瞳の色は私よりも深い藍色で、その姿はとても美しかった。
ママは、とても優しくて、暖かくて。
彼女と話している時間は、とても心地よく感じていた。
この世界に来たばかりなのに、とても居心地がいいのは何故だろう。
まだ考えなくてはならない事が、たくさんあるのに。
すると突然、ママはハッと、思い出したように話し始める。
「!!あぁっ~!そういえば、ベルちゃん!ママから大切な話があったの。お、お、落ちついて聞いてほしいのだけれど…!」
そう言った、ママの方が慌てている。
私もなんだか、心臓がばくばくしてきた…!
な、なんだか嫌な予感がする…!
「さっき一度、学校の話になったでしょう?」
「うん…入学する予定の学校があったんだよね…? 確か、推薦がどうとかって…」
「そう!それでね…ベルちゃんは
【王立クレアスカイ魔法学園】といってね、
魔法学において、限られた優秀な人しか試験に合格できない学園の、特待生として選ばれたのよ~!」
「と、特待生!?」
それって、かなり凄い事なのでは…!?
え、ちょっと待って。
「7日後、学園から使いの者が、この家に迎えに来るって言っていたわ!あとベルちゃんは…。」
「学園の特待生として、入学式の日に
【一年生代表スピーチ】と、【魔法の発表】をしてもらうって!」
ママは私に誇らしい顔で伝えてくれたのだけど、私はフリーズしてしまう。
私、この世界に来たばかりで、魔法も使ったことないんですけどぉお!!!?




