第26話『これから!』
フレアが慌ただしく教室に入って来た時はどうなることかと思ったけれど、サリエ先生により、C教室内は再び、落ちつきを取り戻したのだった。
(それでもまだフレアの事を訝しげに見ているクラスメイトが数人居たけれど…。)
そしてサリエ先生は、『これからの学園生活の流れを説明します。』といって、芯の強い声と真剣な表情で口を開いた。
「…では皆さん改めまして、本校は三年間の学園生活となっており、魔法に関する全般の知識…所謂、《魔法学》を学ぶ為の学園です。」
「この学園に入学する方の多くは、魔法の扱いに長けている方が殆どです。そして…将来的に魔法に関する仕事に就きたい方が多いのではないでしょうか?」
サリエ先生がそう言ってにこっと微笑むと、クラスメイト達の表情が、各々きらきらと輝き出したように見えた。
私とフレアを除いて…。
そして私は、皆の心の中がきっと夢や希望で満ち溢れているだろうというその時に気付いてしまったのだった。
あれ…?今の私…【将来の夢】が無い……。と。
ただ、魔法が好き…という気持ちで、将来の夢を考えた事がなかった。
というかこの異世界に来て、学園に入学したはいいものの、私は先の事なんて何も考えていなかった。
周りがきらきらとした輝きを放つ中、私だけがどんよりとした曇り空を作り出していた。
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その後サリエ先生は、学園のカリキュラムとイベントについての説明をしてくれた。
学園生活において、一年で年三回の大型休暇があり、約三週間の休暇となっているそうだ。
ちなみに、この異世界の曜日は、日本と殆ど同じで、七曜で形成されているけれど、数え方が違うのだ。
・月曜日= 月の日
・火曜日= 火の日
・水曜日= 水の日
・木曜日= 風の日
・金曜日= 雷の日
・土曜日= 土の日
・日曜日= 光の日
ママから教わった時に覚えたのだけれど、なんかめちゃくちゃかっこよい…!と感動したのを思い出す。
月~雷の日(5日間)は、学園生活の魔法授業にあてられる。
そして、土~光の日(2日間)は、小休暇となっており、授業はお休みで、生徒達の休日となっている。
(王都の街へ出掛けたりなどの自由行動は可能だが、大型休暇では無い為、自宅への帰宅は基本的には禁止となっている。)
魔法授業は、6限目まであり、先程は教室内の生徒達にとっての1限目【ホームルーム】が終わったところだった。
次の2限目は早速、魔法学授業の一つ、【応用魔法】だ。
魔法学ごとに先生は異なり、移動教室を伴こともある。
次の授業は担任のサリエ先生で、授業終わりに挟まれる10分後の休憩の後に、次の授業が行われる。
この休憩の間に、少しうつむいて考え込んでいた私の元へ真っ先にやって来たのはフレア…を押し退けて、先程ホームルームの最中に話しかけてくれていたクラスメイトの女の子2人組だった。
(押し退けられたフレアがめ、めっちゃクラスメイト女の子2人を睨んでいる…!?
よ、よく見たらその後ろにもクラスの男子生徒が押し退けられた後が見えるような…いっ、一旦見ない振りをしようっ…。)
そんなフレアの事をものともせず、私の目の前までやって来た2人組の彼女達は口を開いた。
最初に口を開いたのは、美しい紫紺の髪色を持ち、すらりとした長身の女の子だった。
「ベル様、改めて私、マゼンダと申します。お友達からは、愛称でマゼと呼ばれておりますの。是非、ベル様にもそう呼んでいただきたいですわ。」
彼女は私の手を握って、きらきらした眼差しでそう言ってくれた。
「あ…私、ベルと申します!よ、よろしくお願いします!え、えっと…マ…マゼ様!」
「……。」
にこっと微笑み、ぎこちなく私がそう答えると、彼女の動きがぴたりと止まった。
あれ、いきなり愛称で呼ばせていただくのはやはり良くなかった…!?
すると、次の瞬間 ー。
「…な、なんて可愛らしいんですの!ベル様…さすがに破壊力が高すぎましたわ…でも幸せですわ…ふふ…ふふふ。」
なぜか頬を染めて、彼女は上の空になってしまった…。
「え…えっと…!?マ、マゼ様!?」
戸惑っていると、次に声を掛けてくれたのは、
胡桃色のやわらかな髪を持つ、小柄な女の子だった。
「マゼちゃんはベルちゃんにめっちゃうっとりしてたもんね~…その気持ちとっても分かる!ベルちゃん!私、ミールって言います!これからよろしくね!!」
にっこりと笑い、元気に話しかけてくれた彼女は私の手を取ると、ぶんぶんと上下に振った。
「う、うんっ…!!こちらこそ、これからよろしくお願いします!」
私はきっととっても単純だ。
優しく愉快なクラスメイト達の笑顔を見ていると、今は先の事を考えるよりも、この瞬間を大切にしたいと思う。
さっきまで浮かんでいた焦りと不安はきっといつか無くなるから。
これから過ごしていく内に、私の気持ちがどんどん生まれてくるだろうから。
心の空模様は、いつの間にか晴れていた。




