第24話『初恋の音』
-『君は今までどの世界で過ごしてきた?』
「え…?」
アトリアから告げられたその一言に、動揺を隠すことができなかった。
彼は、私の事を何か知っている…?
「え…っと…。」
口からうまく言葉が出てこない。
彼に話してもいいのだろうか…?私の事を…。
彼の真意が読めなかったけれど、きっと、いや絶対にアトリアはふざけてこんな事を言う人じゃない。
- だって、前に初めて会った時も、彼はとても優しくて、まっすぐな人だった。
ーーーーーー
??『きみのなまえベルっていうんだね!』
『うん!あなたのおなまえは?』
??『ぼくは…。えっと…。』
『…どうしたの?いえないの?』
??『ごめん…ベルはおしえてくれたのに…
ぼく、おそとにいくときはなまえをいっちゃいけないっていわれてて…。』
『…そっか~…それはたいへんだね…わたしはじぶんのなまえがだいすきだからすぐにいいたくなっちゃう!』
??『…だけど…ベルにはなんだかいいたくてしょうがない…いってもいいかな…。』
『いいの…?えと、わたし、ぜったいだれにもいわないから!でもいわなくてもだいじょうぶだよ!わたし、あなたのおなまえをかんがえてみる!』
??『…え?かんがえる‥?』
『うんっ!わたしにまかせて!あなたはおうじさまみたいな、きれいなおほしさまみたいにまぶしいひとだから…えと…えと…きらきらさん!ってよんでもいい?』
??『…ふふっ、あははっ…!』
『な!なんでわらうの!それともきらきらさんはいやだった?えと、ごめんなさい、じゃあ、えと、えと…おひさまさん!これならどう?』
その時、目の前に居た彼は温かい笑みを浮かべながら、不意に近付いて私の髪に優しい口付けを落とした。
そして耳元で優しくこう言ったんだ。
『ぼくのなまえは…アトリア。』
『きみのことがすきだ。』
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今のは…私の記憶だ。
私は何か大切な事を忘れている。
「ごめん、困らせるような事を言ってしまって。忘れてくれてかまわない。」
「あっ、違うのっ!そうじゃなくて…。私ね…。えっと、ずっと日本という国に居たんだ。」
「……ニホン?」
「…だけど、アトリアと話してたら私、急に昔の 記憶?を…えっとうまく…言葉にできないんだけど…。」
突然、脳内に流れてきたこの記憶に私の心はとてもざわついた。
私はもっと昔にアトリアと出逢っている…?
「…私っ!」
思い出した事を衝動的に口にしようとしたその時だった。
??「…ダーク・イレース。」
-目の前が暗転して、私はそれから自分が何を言って動いたのか、辿り着いた教室の自分の席に座るまで何一つ覚えていなかった。
「…ただ日本に居ただけでそれだけ!アトリアともこの前初めて会ったばかりだし…。というか、これから授業始まるからもう行かなくちゃっ!またねっ!」
「え、ベル…!待って!」
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ベルが去った後、その場に突然一人の怪しい女生徒が現れた。
漆黒の髪と瞳を持ち、くるりと巻かれた肩までの髪には、コウモリの羽と赤い木の実のような髪飾りをつけていた。
先程のベルの様子には違和感しかなかった。
彼女は、僕に何かを伝えようとしていた。
きっと、とても大事な事だ。
なんとなくそんな気がした。
急変した態度には、おそらく何者かの影響がある。
「君は誰だ?ベルに何をした?」
「…あなたには渡さない。」
「……あっ、待て!!」
瞬く間に消えた怪しい女生徒のあまりの逃げ足の速さに僕は追いかける事ができなかった。
近くで僕の護衛を担っている従者のルカに追跡をしてもらったけれど、それらしい女生徒の姿は無かったと後々報告を受けた。
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あの日、偶然森で出逢ったシルクのような白髪と アメジストのような美しい瞳を持つ幼い女の子に僕は 一瞬で恋に落ちたんだ。
突然逢えなくなってしまってから、忘れた事なんて 一度も無かった。
逢いたくてしょうがなかった。
この間、初めて出逢ったはずの王立クレアスカイ魔法学園の特待生の女の子は、僕が知っているあの子とは容姿だって違っていた。
けれどあの頃と同じ僕の初恋の音が鳴り出したのは紛れもなく、彼女がベルだと教えてくれている。
「…やっと…逢えた。」
温かくて、少し熱いくらいの大きな気持ちが溢れた僕の目から、涙が伝っていった。




