第22話『始まり』
クルサさんに伝えられた塔の下の階へと到着し、 エントランスホールに着いた私は、手招きをしているタルティア先生の姿を見つける。
「タルティア先生!」
「ベルさん、おはようございます。あれ?生徒会長のクルサ君はどうしました?ベルさんのお迎えをお願いしたのですが…。」
「えっとそれが…かくかくしかじかで…。」
メリッサさんは副生徒会長で、本当の会長は
クルサさんのようだ。
流れるように嘘をつかれた…。
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そしていよいよ入学式が始まった。
まるで何かのお祭りかの如く、生徒達の声も相まって、辺りはとても賑やかだ。
広いエントランスホールの中は、まるで大きな劇場のようになっていて、新一年生がステージの最前に並ぶ形で、後ろから二年生、そして三年生、先生方が座っている。
一学年300人程の生徒と、先生方を含め、今この場には1000人ほど集まっているらしい。
私達より年配の威厳のある学園長ジークが新入生の前に立ち、挨拶をする。
「新入生の諸君。ご入学誠におめでとうございます。これから我が校で共に学び、助け合いながら、貴殿方一人一人に、明るく魔法がかかるような未来を一緒に創り上げていきましょう。」
学園長の挨拶が終わると皆の心が一つにまとまるかのように、会場は拍手で包まれた。
そしていよいよ新入生代表挨拶へと場面が変わる。
…ど、どうしよう…。
気持ちは固めてきたつもりだったけど、ものすごく緊張する…っ…。
けれど、もう後戻りはできない状況の中だ。
頭では分かっていても、心臓の音が激しく鳴り、緊張で額に汗が浮かんできていた。
「ではこれより、今年度我が校の特待生へと選ばれた新入生代表のベルさんからのスピーチと魔法発表となります。では、ベルさん、こちらへ。」
「…っ…はい…!」
呼ばれて返事をして、私は学園長が立つ、同じ台の上へ向かう為の階段を登っていく。
緊張しておかしくなりそうだ。
生徒達の視線が。
先生方の視線が。
一声に私へと注がれる。
何かに助けを求めるように周囲を見渡すけれど、今私を助けてくれるものはどこにも…。
ない、とそう思った瞬間。
新入生が並ぶ列からかなり離れた所で、従者の一人が隣に並ぶ光を見つけた。
光のような彼…アトリアは私をじーと見つめてから…。
「(が·ん·ば·れ·)!」
と、ウィンクをして合図を送ってくれたように見えた。
しかし彼はウィンクをしたつもりかもしれないのだけど、両目を瞑っていて、なんだかそれがとても可愛くて、私ははにかんだ。
出会って間もないけれど、光のようなこの国の王子様のおかげで、私の緊張の糸は解けたのだった。
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学園長の立つ場所まで辿り着き、台の上に立った私は風魔法で声を大きく届ける魔道具を使いながら話し始める。
「この度、新入生代表挨拶といたしまして、ご挨拶させていただきます。私達の為に、この場を設けていただき、ありがとうございます。」
「私は…魔法が好きです。この学園でこれからもっとたくさんの魔法の事を学んでいきたいです。」
予定通りに、私は空間魔法で自分の箒と杖を取り出し、その場で箒に跨るとその場をくるくると飛びながら杖を携えて呪文を唱える。
「アイス・クリスタル・プラズマ・グレント!」
私が呪文を唱え終わると、小さな雷を付与した氷の結晶が光のように、まるで雪のように降り始める。
「ファイア・スパイラル。」
次にその結晶たちが私の火魔法によって溶けて雨となり、小雨のように降り始める。
その場からさらに高い位置まで浮遊し、杖を天に掲げて唱える。
「プリズム・サンライズ!!」
そして私の光魔法によって日の光のようにその雨が晴れて、その場にはとても美しく大きな虹が架かる。
虹が現れると、会場のあちこちから大きな感嘆の声が聞こえた。
「い…以上で発表を終わります!ありがとうございましたっ…!」
箒を降りてから私は会場の人々に向けて深くお辞儀をする。
頭を上げた後、会場にはたくさんの歓声と拍手がを包み込んでいた。
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ママとの魔法練習の時にね、雨がよく降ってきたんだ。
雨はすぐ止むこともあるけれど、長く降り続ける雨もある。
けれどいつか必ず晴れて、晴れたその空にはとても綺麗な虹が架かっていたんだ。
綺麗な虹を作り出す魔法を発表にしたいと思って魔法に愛を込めて色々と掛け合わせ完成した私だけの魔法だ。
発表を終えた心の中はとても温かった。
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長いようで短く感じた入学式が終わるとすぐに、我先と言わんばかりに様々な生徒達が話しかけてきた。
「ベルちゃんだよね!!これからよろしくね!てかすごい!めっちゃいろんな属性魔法をあんなに完璧に使えるなんて!」
「この後ご飯一緒に行こう!!」
「おいお前ずるいぞ!」
「プリンセスベル!oh、マイハニー!私とお茶が先約だよね!!」
「メリッサ!お前結局さぼりやがって!!今すぐ反省文を書きやがれ!」
「ぇえ…えっと!」
あれ、なんか知ってる人も混じってる…。
たくさんの人に詰め寄られて押されている私を見兼ねてか、近くに居たタルティア先生が助け舟を出してくれる。
「皆さん!明日から授業が始まります!そしてこれからクラス別に集まりますので先程説明があった指定された教室へ向かってください!」
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ようやく人の波から解放された私も指定された教室へと向かっていた。
クラスの人たちとうまくやっていけるといいな。
アトリアは同じクラスかな?
彼は王子様なので、もしかしたら別クラスかもしれない…。
あとで会う事が出来たら、さっきの事お礼言おう。
あの時の彼のウィンク未満の顔を思い出して私の顔は自然と笑顔になっていた。
これから本格的に学園生活が始まる。
けれどこの時の私はまだ知らなかった。
この世界に迫っている不穏な影に。
一人の少女がこの世界に生まれた。
彼女は後に、
『彩りの天弓魔女』
と呼ばれることになる。
この物語は彼女がそう呼ばれるまでの魔法のある 世界でのお話である。




