第11話『ベルと小さな第一歩』
時間というのはあっという間なもので、気が付けば王立クレアスカイ魔法学園からの使いの者が来る当日になっていた。
魔法を身に覚えていく中で、分かったことがある。
魔法ってすごく楽しい!…けど、すごく魔力の調節が難しい!!
そしてママ曰く、私は魔力量がかなり多い事もあり、魔力をたくさん使いすぎてしまったり、逆に使う魔法に対して、魔力が足らなかったりというのがこの数日の練習でみられたという。
ママが見てきた以前の私は、魔法の出力も全てが完璧だったらしい…。
……………。
こ、これ、入学式大丈夫かな!?だって、中身は魔法の、どどど初心者だよ!?
どうにか、粗がバレませんように。
スピーチの方はそれなりにうまくできる気がするのだけど…。(※作ったスピーチ原稿を頭に叩き込んだから!)
問題は、魔法の発表である。
魔法の発表は、"特意な魔法"を披露するだけでいいとだったのだが…。
得意な魔法がまだないよ!!!
って、学園側の方にツッコミたい!
私はこの数日の練習で、いくつかの属性の魔法を使ってみた。確かに私は凄いかもしれない。
どんな魔法を使っても、ひとまずは形になって発動するのだ。(私の魔力コントロールがまだうまくできないから、失敗してしまうけど…。)
得意な魔法なんて今はなくて、どの魔法の完成度もまだまだだけど…。
私なりに考え、これならば、それなりに大半の人を欺けるのではないかと考えた魔法を、今日披露するつもりだ。
ちなみにこれから通うこととなる王立クレアスカイ魔法学園は、三年生単位らしく。
私は自宅から通うものかと思っていたんだけど、なんと、寮での生活らしい。
そして学園の生徒は、特別な事情を除いて、年三回あるうちの大型休暇以外は、実家へと帰ることが禁止らしい。
それは、名門校の生徒だとしての自覚と誇りを持ち、在学中、魔法学全般に関してしっかり向き合う為なのだとか…。
なので、今日からしばらくの間。次の一学期の休暇までは、ママともこの家ともお別れになる。
学園からの使いが来るまでの残り時間を切るまで、私はママと話し続けていた。
すると、ママは私に金色のリボンが巻かれたとある箱を差し出した。
「ママ、この箱は?すごく綺麗…!」
「ふふっ♪ベルちゃん、中を開けて見て。」
ママに促されて、中を開けて見てみるとそこには…。
とても綺麗な、蝶のような形をした、白く光る髪飾りが二つ、入っていた。
「これはね、ベルちゃんが昔から大好きな妖精をモチーフにして作った髪飾りなのよ~♪ベルちゃんをイメージしてママの雷魔法も付与して作ったの♪」
「妖精の…って、ママが作ったの!?」
「そうなのよ〜♪ベルちゃんの為に、学園に入学が決まった時から作ってみたの!予定より時間がかかってしまったけど、これは祈り魔法と、属性の付与魔法を掛け合わせて形になるものでねっ♪」
「すごいっ!こんなに綺麗な髪飾り、初めて見たよっ…!これを…私に?」
「もちろん♪世界で一つ、ベルちゃん専用よ♪ママが着けてもいいかしら?ベルちゃん、少しママの近くまで来てくれる?」
ママが手招きをして、私を呼ぶ。
「はいっ!できたわ♪うん!私の娘は今日も最高に可愛いわね♪」
はいっ!と、ママは私に手鏡を渡してくれた。
お下げ髪で二つに結われた私の髪型に、ママからの髪飾りをつけると、これが私…?と思うくらい似合っていて驚いた。
この世界に来てから、魔法の練習に集中していて、腰あたりまで伸びていた髪型も、何も結わずに過ごしていたけれど、髪型を変えると、印象も気分も大きく変わる事を実感した。
私はママにお礼を言おうと、口を開くとー。
「ママ、本当にありがっ…。」
ママは優しく私を抱きしめてくれた。私は少し動揺する。
「ママ…ど、どうしたの…?」
ママは私を抱きしめながら、優しく耳元で話し始めた。
「次の休暇まではここには戻って来られないとのことだけど、辛くなったり、泣きたくても泣かせてもらえないような苦しい状況になったら、無理に我慢せず必ず戻っておいで。」
「………ママ…。」
「大袈裟かもしれないけど、ママは思うの。どんな時でも、大切な人に掛ける言葉を心から大切に選んで伝えようってね。」
ママの言葉はすうっと落ちるように胸に響いて、そしてその言葉の奥に潜む、ママが想う大切な人の影を感じた気がした。
私も、この瞬間に選んだ、かけたい言葉を、大切なあなたに伝える。
「ママ…。私、この世界でママと出会えて今、ベルとして生きていて思うんだ。心がね、温かいの。ママと話していると、もっと温かくなるんだ。」
不思議だった。初めて出会った人なのに、こんなに心を許してしまう自分がいること。
前の世界の家族の事も、自分がどんな人だったのかも、今も思い出せなくて、曖昧だけれど…。
学園に入学することで、何か記憶を取り戻すきっかけを見つけることができるかもしれない。
「ママ、これからもよろしくお願いしますっ!!えっと…その…だ、大好きです!」
頬が少し熱くなる。素直な気持ちを言うのは、少し気恥ずかしい。
だけど…。
「…っ、ベルぢゃあぁあん!!ママも世界一だいずぎぃよぉ~!!!!」
たった一言でも勇気を振り絞った言葉でこんなに喜んでくれる素敵な人が居る。
それを知る事ができたから。
これからも、素直な私でありたいと思った。
そして…。
【王立クレアスカイ魔法学園一年:特待生:ベル】
いよいよ入学です!




