表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/102

尊法 十九

 最初は単純に強くなりたいと思っていたから、うんと頷いて言えば。

「馬鹿者!」

 と師匠、卦戒けかいに大喝されてしまい、思わず縮こまってしまった。

「私はそんな下心を持つ者に武術を教えぬ。去れ」

 そう言われたが、去れと言われたことで、かえって琴羽の心に火が付いた。

「じゃ、じゃあさ、どんな理由ならいいのさ」

 と食い下がれば。

「弱きを助け強きを挫く。そのためである」

「弱きを助け強きを挫く……」

「そうだ。いたずらに勝ちを求めず、闘えぬ者の代わりに闘う義士たれ、それが私の教えだ。この教えを守るのなら、武術を教えてやろう」

「うん、守るよ。守るから、教えてくれ!」

 やれやれと言いたそうな顔をした卦戒だが、教えるとなると本気で教えてくれた。またいくらかの学問も教えてくれた。その卦戒の気持ちに応えて、琴羽は教えを守り、師匠も認めてくれた。

「自分が勝つことばかりが全てじゃない……」

 琴羽はぽそっとつぶやいた。

(そうだ!)

 琴羽は駆けた。

「うおおおー!」

 三対四の乱戦の中へと、琴羽は突っ込んだ。

「琴羽さん、無理しなくていいですよ!」

 闘いながら虎碧は琴羽を気遣う。

「お、やる気になったんだね!」

 闘いながら龍玉は琴羽を激励する。

 貴志は無言で頷く。

 四本の金砕棒が振るわれ、これをかわしながら三人はそれぞれの得物を繰り出す。そこに琴羽が加わり、四対四となった。

 しかし琴羽は深追いしなかった。四本の金砕棒をかわしつつ、闘いの周囲を駆けまわり、ちょこちょこ槍を突き出していた。

 鬼が槍をかわせば、虎碧の剣、龍玉の青龍刀、貴志の六尺棒が迫る。その先がわずかながら、数回鬼に触れた。

「おのれ、この小鼠め!」

 鬼の一体が思わず声を荒げた。

 琴羽が闘いの周囲を駆けまわりちょこちょこ槍を繰り出すのは、鬼の気を散らすのが目的のことだった。それは思った以上に効果があった。

 鬼の言う通り、琴羽は小鼠のようにちょろつき、鬼の気を散らすことに専念していた。

「その、鬼ってやつの首は任せたよ!」

 琴羽は自分の実力をわかっていた。下手に闘ってもすぐにやられて、かえって足手まといになる。それでもどうにかしたいと思った時、無理に自分が勝とうとせず、三人の補佐をすればいいんだと思いいたった。

「おう、任せな!」

 龍玉は笑顔で大きな声で応えた。琴羽の補佐でかなり闘いやすくなって、青龍刀を先っちょだけながら何度か鬼に触れさせることが出来た。

「ええい、もう我慢出来ぬ!」

 鬼の一体はいよいよ憤りの度を増し、闘いから離れて琴羽に迫った。

「馬鹿者!」

 と別の鬼が言うが、咄嗟に背後から龍玉の青龍刀が迫り。その首を跳ねてしまった。

 鬼の首は勢いよく飛び。首から下の身体は数歩走って倒れて。そのそばに首が落ちた。絶命して、うらめしそうに虚ろな目を夜空に向けていた。

「これで四対三んー!」

 龍玉会心の雄叫び。琴羽も笑顔で頷く。その邪魔で気を散らし苛立った鬼は隙をつくってしまったのだ。

「おのれにっくき人間ども! これでは第六天魔王に合わせる顔もなし!」

「じゃあやめて帰りな!」

 と琴羽は叫ぶ。

「ほざけ! 人間ごときに負けたなど、鬼の誇りにかかわることである!」

「あなた方の誇りのために、ですって……!? 人の命をなんだと思っているんですか!」

 普段は優しい虎碧も憤りを禁じえなかった。貴志も、

「お前たちがやめないのなら、僕も覚悟を決めて、その首を頂戴するぞ!」

 と叫んだ。

「言わせておけば、猪口才な人間どもめ!」

 残りの三体は、鬼の誇りに懸けて四人をなんとしても仕留めようと勇んだが。やみくもに闘うのではなく、三体背中を合わせて人間の襲来に備えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ