愛国 二十七
「うおおっ!」
度宇は無手で源龍に肩から体当たりする。咄嗟に懐に入られて、打龍鞭で薙ぎ払うことも出来ず。肩からの体当たりをもろにくらい、たまらず源龍の身体は吹っ飛んだ。そのはずみで、打龍鞭も手から離れた。
「おおお!」
周囲から大きな喚声が上がる。
地に打ちつけられ横たわるた源龍の顔前に、度宇の太い足が迫り。転がってかろうじて避けた。しかし太い足は、どすん、どすんと大きな音を立てながら、源龍の顔面を狙って踏みつけに来ようとする。
起き上がろうとするも、足の迫るが早く、起き上がるにも起き上がれず。転がって逃げるしかなかった。
さらに、その足は砂を蹴って、丁度源龍の顔面にふりかけられた。
砂が目に入り、思わず目を閉じた。
「くそ!」
視界は暗くなり、動きも止まった。そこに太い足が迫る。
「ああッ!」
貴志や琴羽は思わず声が出てしまう。万事休すか。
が、咄嗟に源龍は腕十字を組み、それで太い右足を受け止めた。強い衝撃が肉に、骨に響く。が、幸い砕かれるには至らなかったようだ。
「それがどうした!」
度宇はもう片方の左足を上げ、全体重を源龍を踏みつける右足にかけようと、ひざを折り、勢いをつけて、地にめり込ませようとする。
「……、ぐっ。この、でかぶつ野郎がッ!」
源龍とてこのままおめおめとやられるつもりはない。
足をのばせば、つま先に硬い感触。打龍鞭だ。それとわかれば、つま先を打龍鞭の下に入れる。
度宇は下を向いて、源龍の足の動きに気付いていない。一騎打ちを見守る者たち、特に寄せ手側の兵は源龍の動きを指摘したいが、それをこらえいた。この帷国では、黙って見守るのが一騎打ちを見物する作法であるようだ。
その作法が律儀に守られている。貴志は、甲芭之の手勢はよく教練が行き届いているのだと、
(討つには惜しいお人だ)
と、内心感心していた。
源龍はつま先を打龍鞭の下にもぐりこませて、えい、と勢いよく足を振り上げ、高々と打龍鞭を放り上げてしまった。
その時になって度宇も源龍の動きに気付いた。上を見れば、頭上には打龍鞭が落下してきている。このままでは頭に当たる。
「ちぃ」
打撃武器の打龍鞭は、鋼の塊である。当たればただでは済まないが。手を伸ばして掴むより、思わず咄嗟に避けてしまった。
上に乗るものがなくなり、源龍は咄嗟に上半身を起こし、手を伸ばして、落下する打龍鞭を掴んだ。
ずしんと、重い感触が手に響く。
目に入った砂も、踏まれている間のまばたきで流れ落ちて視界は良好。
素早く立ち上がるが。度宇も落ちていた大刀を拾って、身構えていた。
再び互いの得物で打ち合い、合数を重ねてゆく。
「うおッ!」
源龍の呻き。大刀の衝撃を受けて、打龍鞭は弾かれるように源龍の手から離れて、落ちた。




