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愛国 二十五

 砦の兵だけでも十分効果を発揮出来たところに、南景からの兵。

「……」

 貴志は少し考えて、叫んだ。

「我ら無駄な殺生は好まぬ。命が惜しい者は、得物をさかさまに持ち、道を空けよ!」

 それを聞いた琴羽たちも、異口同音に、貴志の訴えを広めて廻った。

 そうすれば、言われた通り、多くの兵が、得物をさかさまに持ち、白い羽を飾る敵兵に逆らわず、道を空けた。

 貴志の訴えも効果絶大だった。

「いざ、甲芭之の首を!」

 勢いづいた南景勢は、甲芭之を求めて、敵兵の間を縫うように駆けた。

 このまま甲芭之は討たれて、首を獲られる、かと思われたが……。

「なんの、この度宇ある限り、父と慕う甲芭之殿には指一本触れさせぬ!」

 鎧兜に身を固め、甲芭之を守る剛の者、度宇は大刀を振るい。迫りくる敵兵を血祭りにあげていた。

「うわあぁ!」

 悲鳴が上がり。兜の白い羽が朱に染まり。南景勢の兵は甲芭之を目の前にしながら、屍を重ねていた。

 度宇のみならず、他の部将や兵も、懸命に戦った。

 甲芭之は目を見開き。配下の奮戦をしかと見据えていた。

「むうっ!」

「おのれ。あと一歩のところで!」

 度宇たちの奮戦の甲斐あって。南景勢の兵は少し離れて、その周囲を囲むにとどめた。

 度宇は叫んだ。血を吐く思いで。

「卑怯なり! 下策を用いて夜討ちなど。武人の風上にも置けぬ奴らめっ!」

「うるせえ、それがどうした!」

 突如として黒い旋風が度宇に迫る。ぶうんと、鋼鉄の打龍鞭が唸る。

「おおっ!」

 喚声があがる。鋭い金属音が響く。大刀で打龍鞭を受け止める。その衝撃は強く、刃こぼれした。

 源龍だった。その腹に蹴りが迫るが、咄嗟に飛びのき。互いに得物を構えて睨み合う。

 互いのその顔は、血化粧とばかりに敵兵の返り血を浴びていた。

「てめえ、なかなかやるじゃねえか。楽しませてくれるか?」

「ほざけ。戦は遊びではない!」

(そりゃそうだ)

 羅彩女は度宇の意見に頷く。

「何者!」

 甲芭之側の兵が度宇の助太刀と駈け出そうとするが。その顔面に、したたかに羅彩女の軟鞭が打ちつけられて、もんどりうった。

「ほらほら、邪魔をおしでないよ! 男同士の一騎打ちだからね!」

(やはりそうなるか)

 ふたりからやや遅れて、貴志や琴羽たちもやってくる。

 源龍は強敵に目がない。見よ、その嬉しそうな顔を。

 甲芭之は黙って成り行きに身を置いている。

「そんなことより、甲芭之を!」

 誰かが言った。が、貴志は、

「待たれよ!」

 と制した。

「男同士の一騎打ち、まずは存分に戦わせようではないか! 下策を用いたせめてもの詫びも兼ねて!」

「馬鹿なことを!」

 反対意見が出るのも言うまでもなかった。しかし琴羽は貴志に賛同の意を示した。

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