愛国 二十四
「これはいかん!」
いかに数に利ありとはいえ、同士討ちをしては意味がない。
このことは甲芭之の耳にも届いた。
「なんと!」
絶句し、歯噛みする。
「是非もない」
せめてもの思いで、自分の周囲だけ守りを固める。そして慌てず、堂々と立てと命じた。
「近きものはこの目で見よ、遠くの者は耳で聞け! 総大将・甲芭之ここにあり!」
「将・度宇もここりあり!」
そう、周囲に向け大喝し、自分たちの堂々とした姿を見せれば。恐慌をきたした兵は、その姿に安堵を覚えたか。慌てる動きを止めた。篝火も焚き、その周辺は明るかったのも利いた。
少なくとも、甲芭之の周辺は落ち着き。態勢を整え直した。
とはいえ、陣地の中でも離れたところは、恐慌をきたし、同士討ちをし、夜討ちを仕掛けた砦の兵に蹂躙されるばかりであった。
そもそもの士気も低かったのも利いてしまっていた。
(それにしても、なんたる無様な!)
十万の大軍とはいえ、まとまりも悪く、士気も低い。寄せ集めの、烏合の衆ではないか。
この軍勢の多くの者が、すぐに片付くと、物見遊山気分であったのかもしれないのは、想像に難くなかった。そもそも、それなりの立場の部将すら、兵法書も満足に触れていない有様である。
さらに、新たな軍勢の気配、新たな喚声も響く。
「南景の兵も攻め寄せてきたか!」
砦の兵による夜討ちが効いたのを見計らい、南景の兵も門を開けて、攻め寄せてきたのだ。
「どいた、どいた!」
琴羽は騎乗にて陣地を駆け巡り、敵兵を馬脚で蹴飛ばし、あるいは槍で薙ぎ払い、その武勇を存分に見せつけていた。
義勇軍で、徒歩ながら突進した源龍は黒い旋風の勢いを見せ。敵兵を得物の打龍鞭で吹き飛ばす。そのそばで羅彩女も得物の軟鞭を敵兵に打ちつける。
「雑魚なんざいくらやっても意味がねえ。大将はどこだ!」
そばにいた雑兵の胸ぐらをつかんで吼えれば、震える手で甲芭之のいる場所を指さした。
「ありがとよ!」
ぶうんと放り投げ、その方向へと駆け出す。
「それにしても、夜討ちの効果はすごいな……」
貴志は現地にあって、敵兵の恐慌する有様を見て、自分の立てた策ながら空恐ろしいものも感じていた。
ちなみに貴志は六尺棒を得物とし。相手を絶命させない程度に打つにとどめていた。
ろくに戦わず命乞いをする者、同士討ちをする者たち、戦っても恐慌した有様で得物の振り方も出鱈目で隙だらけですぐに討たれて。絶命せずに済んだ者は、倒れた状態でやっと命乞いをし。その頭上をまたがられてゆく。




