表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/99

愛国 二十二

「情けなやとは何ですか。いかに総大将殿でも、お言葉が過ぎましょうぞ」

「命より重き王命をいただいておること、おぬしにはその自覚が足りぬ! その気楽な考えを改めよ!」

「臆病者を相手に過度な備えは、かえって恥でございます! 総大将殿こそ、もっと気持ちを大きく持っていただきたい!」

 気が付けば、声を大にしての言い争いになっていた。その争う声に驚き、他の者たちも集まって、

「まあ、まあ」

 と、ふたりを引き離す。

「おのれ、父と慕う甲芭之殿を愚弄するとは。味方でも許せぬ!」

 引き離される両者の間に入り、甲芭之の肩を持つ巨漢の部将。相手の部将を鋭い眼差しで睨みつける。

 背も高く肩幅も広い。そのうえ鞘に収まる大刀を左手に持ち、いつでも抜ける構えをする。

「な、なんじゃ、度宇どう殿。少し言い合いになっただけでござろう。悪意はござらぬよ」

 甲芭之を父と慕うと肩を持つ巨漢の部将、度宇は今にも相手に飛び掛かりそうな怒気で、真っ赤な顔は火を噴かんとするかのようだった。

 相手の部将もこの見上げるような巨漢の度宇には怯んで、後ずさりし、なだめるように言う。

「ふん、度宇殿は確かに百戦錬磨の猛将。しかし、考えるのは苦手と見える!」

 別の部将が度宇をなじる。その背後に、まとまった人数を従えていた。いざ競り合いとなれば、この者たちを度宇にけしかけるのだ。いかに猛将であろうと、数には勝てまいと。

「よせ」

 甲芭之は度宇をなだめる。

「しかし」

「もうよい、事を荒立てるな」

 険悪な雰囲気が一気に広がり、ほとばしる。

「ふん、馬鹿々々しい」

 それぞれ部将は散り散りにばらけてゆく。元の持ち場に戻ると同時に、甲芭之と度宇から距離を置くためだ。

 甲芭之と度宇は、それぞれの部将から陣内で置き去りにされたようなものだった。

 こうなっては、夜の備えを万全にせよと命じるどころではない。それどころか。

「甲芭之殿は、臆病者を怖がっておるぞ」

 という陰口が、部将の間に広がってゆき。

 せめて、篝火を点けつづけよと命じるも。

「臆病者にそこまでしなくても」

 と、呆れながら、時が来ると、篝火は消された。

 真っ暗になった。

 そこで恐れるのは、末端の兵たちであった。思った以上に善戦され、その手強さを痛感させられた。しかし後方の安全なところにいた部将たちは、逆の気持ちだった。

「夜討ちに遭ったらひとたまりもないぞ」

 消された篝火に再び火を灯そうとする者もあった。しかし。

「なにをしている。臆病者を相手に、恥ずかしくないのか!」

 と上官に叱責されて。篝火を灯すことが出来ず。

 兵たちの不安は増大するばかりであった。

 そのころ、鬼門をはじめおのおのの砦では、

「いざゆかん」

 と、門が開かれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ