愛国 二十一
城門をぶち破ろうと丸太を担いだ丸太隊も待機していた。しかし固く閉ざされた城門の前には、木材石材様々な大量の廃材が積み重ねられていた。丸太を城門にぶつけるためには、まず廃材をどかさなければならないが。
廃材をどかそうとすると、城壁から矢が射かけられ、あるいは石を、あるいは屍を落として妨害した。これも功を奏し、丸太の出番はなかなか巡らなかった。
琴羽は義勇軍の大将なので、砦の各所をめぐり、兵に声を掛けてまわった。
貴志はそのまま部屋に残って、いてやっていた。
陽も傾き、影も長くなる。
黄昏時になる。
陽は沈む。
夜の帳が落ちる。
暗い夜空を、無数の星々や月が見下ろす。
寄せ手は、陽も暮れたことから、一旦攻勢を止め、少し城壁から離れて。待機した。
城壁の近くには、戦死した双方の兵が転がる。それらを、夜闇が包み込んだ。
「ああやっと終わった」
「畜生、思ったよりやるぞ、あいつら」
と、うんざりそうな声が兵から漏れる。それだけではない。
「殺せ、殺せよ。ははは……」
重傷を負い、生死の境をさまよい、正気をなくした兵も多くいた。
城内は、夜まで防ぎ切ったことで、
「よしっ!」
と会心の声があちらこちらから聞こえた。
しかし、戦である。重傷を負い、生死の境をさまよう者もいたが。
「あとは、頼むぞ」
と言い、仲間に頼んでとどめを刺してもらっていた。
「お前たちの分まで、勝つからな!」
生き残った者たちは、仲間の屍を見つめて涙し。復讐を誓った。
士気は高い。
「思ったよりしぶとい!」
寄せ手の兵たちは、城兵の善戦に対し、おおいに不機嫌となっていた。
元気な者は、やけ食いやけ酒を喰らい。あるいは、ふて寝を決め込む者も多かった。
王の軍勢は陣地を敷き。篝火を焚き。夜を昼にせんがばかりに、周囲を明るくした。
甲芭之は篝火の灯にともされて、南景の城壁を眺めていた。
「お見事!」
感嘆していた。
数の差をものともせぬ善戦。甲芭之は一介の武人として、素直に慶子義や城兵の善戦に敬服していた。
「しかし我らとて、王命を受けたる身。明日こそは」
ふと、身近な者に、
「夜の備えを万全にせよ」
と厳命した。が、しかし。
「砦の兵たちは臆病風に吹かれて降伏しましたし……」
「馬鹿者!」
気楽な言葉が出て、甲芭之は大喝した。
「な、なんですか、急に」
「おぬし、そんなことを、本当に思っておるのか」
「はい」
絶句。声を絞り出す。
「兵法書を読んでいるであろう」
「兵法書? そりゃあ、まあ、多少は」
「多少は、だと?」
「そもそも、数は我らに利あり。わざわざ兵法書を引っ張り出すこともないでしょう」
「なんと、情けなや!」
言われて、部将はさすがに不機嫌そうな顔を見せた。




