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愛国 十八

 鉄甲の兵馬、河を渡り、土煙を巻き上げ。前進する。さかんなる軍鼓管楽の調べ激しく、くうを揺らして波打たせる。

 林立する旗、槍、矛、長刀など。旗は揺れ。刃は陽光を受け、きらめきを放つ。

 その軍勢の中心に、愛馬にまたがる甲芭之。鎧兜に身を包み、鋭い眼差しで遠くに見える南景の城壁を見据える。その周囲を、臣下の部将が囲み。いずれも百戦錬磨のつわものぞろい。

 鬼門の砦にて、土塁の中の兵舎に、マリーとコヒョ、リオンは引き籠もり。香澄と龍玉、虎碧が付き添う。

 源龍と貴志、羅彩女は、琴羽とその同志の将はともに土塁の上に立ち。甲芭之率いる王の軍勢十万を眺める。

「来やがった、来やがった」

 源龍の、肩に担ぐ打龍鞭の柄を握る手に力がこもる。羅彩女も得物の軟鞭を手にして、緊張の面持ちで源龍の隣に立つ。

 貴志も、普段は武具など身に着けないが、今回ばかりは武装し。借りた六尺棒を杖代わりにして土塁の上に立っている。

「さすがだね……」

 琴羽も緊張を禁じ得ない。それなりに武術の心得があり、地元にいた時には小競り合い程度なら実戦経験もあるが。さすがに本格的な戦は初めてである。王の軍勢の気迫に強く圧される気配は禁じ得なかった。

「皆さん、手はず通りに、お願いします。源龍、決して先走らないように」

「ガキじゃあるめえし。わかってるよ」

「先走るたって、こんなもん見せられたら先走るにも先走れないよ」

 羅彩女は吐き捨てるように言う。

 地平を覆うような大軍である。その地平を覆うがごとくの大軍から、数騎飛び出る。

 片手に使の字が書かれた旗を持っている。使者の武者だ。

「使者をよこしてきたか」

 貴志は土塁の内側に向いて、下にいる兵に、

「まだ白旗は出さないでください」

 と言って。了解と返ってくる。その兵は白旗のついた長竿を持っていて。合図があったら、貴志に渡す段取りであったが。にわかに取りやめになった。

 ややあって、使者の騎馬武者が鬼門の砦の門までやってきた。土塁の上に人がいるのももちろん見えている。

「何事か!」

 琴羽が用件を問う。

「我、王のお言葉を携えてやってきたる使者なり。心あらば、王のお言葉を聞け!」

「聞こう、言え!」

「王、陽山君は、いかに叛逆の徒なりといえども、いたずらに殺生をするを好まず。慈悲を乞うならば、許してつかわすとの由! 応か否か、答えられよ!」

 源龍は無言で貴志をちらと見た。琴羽と羅彩女も同じく。

 貴志は、琴羽と顔を見合わせて、互いに頷き合う。

「それは、降伏せよとのことか!?」

「言うまでも無きこと! 降伏し、慈悲を乞うか、否か!」

「……」

 琴羽は即応せず、ひと呼吸置いてから……。

「応なり! 王の慈悲を乞う!」

 と土塁から叫んだ。

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