愛国 十五
ちなみに、砦の中では、女子供は女子供だけの部屋をあてがわれた。馬鹿をやらかす輩が出てきそうなものだが、幸いそういうことはなかった。その安全は、琴羽が義勇兵によく言い聞かせていることのあかしでもあった。
もっとも、琴羽の言うことを聞かずに馬鹿をやらかす不逞の輩があったとしても、武芸に秀でた女侠が多い。かえってこてんぱんにされるのがオチであった。
とはいえ、マリーとコヒョ、リオンは戦えないので、常に誰かがついてやっていた。
義勇兵は何もしなくても、王側が何者かを派して忍び込ませ、暗殺をさせる危険も考えられた。
「いいところというのは、女子供が安心出来るところだね」
そうコヒョは言う。風雲来たる雰囲気でも、砦の中には一定の落ち着きがあった。マリーとコヒョ、リオンは安心出来るところにいられる幸せをしみじみ噛み締めていた。
「それにしても、戦は避けられないのかしら……」
マリーが窓から空を眺めながら言う。戦など、ないにこしたことはない。
万一でも香澄たちや義勇兵はよく戦い、自分たちを守ってくれるだろうが。だからといって、安易に安堵出来ることではない。
「そうだねえ、たとえ勝っても、戦は犠牲が出るからね……」
「ああ、いやだ、いやだ。戦なんて」
コヒョとリオンもマリーに同調して、戦への忌避感をあらわにする。
「それに……」
香澄は声を発する。
「悪王を倒して終わりじゃないのよね。倒した後に、何があるのかしら?」
「うーん、そうだね」
「何があるんだろ?」
香澄の言を聞いてコヒョとリオンも考えるが、わからない。
「あとで貴志さんに聞いてみましょう」
マリーがそう言うと。そうだね、そうしようと応え。この話はひとまず終わりとなった。
「やあ!」
「とう!」
という、威勢の良い声が聞こえる。砦の中で、訓練に励んでいるのだ。
義勇兵も覚悟をしてここに来ているのだ。さあ、来い! と気持ちを奮わせて、鍛錬を怠らなかった。
やがて散策から琴羽たちが帰ってきて。砦の中の大将部屋で主だった者が集まり、戦になった時の策を話した。
戦がなければよし。しかし、もしあった場合のため、昨夜話し合ったことの再確認をしていた。そしてそれは、伝令によって南景の主要人物や、他の七つの砦にも知らされる。
通心紙で見た、あの面々も、朝になって中央庁舎に呼ばれて、話を伺って、
「なんと、あの甲芭之殿が!」
という驚きと、
「お覚悟を決められましたか!」
という嬉しさを同時に発していた。




