愛国 十四
「早速で申し訳ないが、案内の者をつけますゆえ、鬼門の砦に行っていただきたい」
「わかりました」
話は済んで、琴羽と貴志はうやうやしく一礼し、部屋を、中央庁舎を退出し。門外で待つ仲間たちのもとに戻った。一緒に案内役の者もついてきた。
すでに早馬は出ているという。
琴羽はことのあらましを仲間たちに伝えた。香澄たちに、義勇軍の兵たちは、鬼門の砦に向かった。
もうすっかり陽は落ちて、夜の帳も落ちていた。
義勇軍の多くが松明を灯していた。案内の者も松明を持ち、先導する。
しばらく、数刻歩くと、向こうに松明の灯や、篝火が見える。鬼門の砦に着いたのだ。
元賢は早馬からの報せを受けていたので、義勇軍を待ち。琴羽と対面して、
「では、この砦をお願いいたします」
と、手勢を引き連れて砦を出て、南景に帰っていった。
かくして、琴羽の義勇軍五百は、南景を守る八方の砦のひとつ、鬼門の砦に入った。
翌朝、陽が昇り、あたりが見まわせるようになると、主だった者は砦を出て、周囲を散策する。
砦は、まず空堀に囲まれ、その内側に土塁が築かれており。土塁の内側に兵舎や馬屋があり、守備兵はそこで寝泊まりする。
作りこそ簡素だが、副都を守るための砦だけあり、規模は大きめで。軽く一千の兵は入れそうだったが、そこに半分の五百なのだから、結構広々と使えて。義勇兵も満足そうだった。
もちろん糧食の蓄えもたっぷりある。
南景は南に山があるが、それを除けば平野部であり、副都と八つの砦はその平野部に鎮座するようにあった。
ゆるやかながら、北からの風が吹いている。その風は南景の南の山を駆け上る。その風のせいかどうか、山の上を雲が覆う。
琴羽はその雲を眺めて、頷く。
風は冷たい。季節は秋から冬へとかわりつつあり、あとひと月もすれば、雪も降るかもしれなかった。
雪が降るほど寒くなれば、戦は出来ないから、王が軍勢を繰り出すなら、冬の前、まさに今である。大軍を以って南景に攻め入り、冬になる前に決着をつけようとするであろう。
「しかし鬼門なんて、縁起悪いねえ」
そう羅彩女がぼやく。
「逆に言えば、鬼門の守りを任されるということは、それだけ厚く信用してもらってるってことよ」
と香澄は応える。
羅彩女の言を聞き、龍玉はいたずらっぽくからかう。
「え、なに? びびってんの?」
「馬鹿言ってんじゃないよ」
「怖かったら、無理に前に出なくてもいいよ、その分あたしが頑張るから」
「はあ? いざとなりゃあ、あたしだってねえ」
「まあ、まあ、お互い協力しましょうね」
虎碧は苦笑しながら間に入る。




