愛国 十一
「ああ、いや僕は……」
「なに謙遜してんだい。なんだっけ、過ぎたるは猶及ばざるが如しとか言うじゃん。やってやんなよ」
「へえ、お兄さん、頭良いんだ! じゃあ頼むよ、うちらの軍師に!」
途端に琴羽の目が輝き出す。
「やってやれよ。琴羽の言う通り、頭使える奴がいねえと、いいように使い走りさせられかねないぜ」
源龍までそんなことを言い。それがいいと思うわと、香澄も頷く。
「まあーったく、いい気になって」
羅彩女は龍玉の貴志売り込みに眉をひそめる。そうしつつも、内心はその通りだとも思っていた。
「……わかりました、微力を尽くしましょう」
「ありがとう、助かるよ!」
琴羽は馬上から腕を伸ばして、貴志と握手した。
「誰か李貴志殿に馬を! 軍師さまになってくれんなら、それなりにかっこもつけなきゃね!」
「え、いや、そこまでは」
他の面々を差し置いて、自分だけ馬に乗るなんて申し訳ないと思ったが。それも、源龍たちに、遠慮する必要はないと言われ、あてがわれた馬に乗ることとなった。
「……あの」
「なんだい?」
「よければ、女性と子供も馬にと思いまして」
「それもそうだね。ほら、そこの子ども、あたしの馬に乗っていいよ。マリーさんは貴志軍師に乗せてもらいな」
「え……」
貴志やや赤面。コヒョとリオンは、わーいありがとーと素直に喜びながら、リオンが前に、コヒョが後ろにと、琴羽の馬に乗り。マリーは貴志に手を差し伸べてもらって、その後に乗った。
そんなこんなで一行は、河沿いの道をゆき。夕方ごろに南景について。大将の琴羽と貴志のふたり、門番に話をした。
やがて役人風の男が来て、義勇軍は場外で待機するよう言い。琴羽と貴志のふたりだが、場内に入っていった。
「へえ」
ふたりは南景城内の街の景観を眺めて感心する。帷国の副都だけあり、五階建てなど背の高い建物や、しっかりした豪奢な邸宅や商家のならびや、人の多さや賑わいなど、なにもかもに目を見張った。
やがて中央庁舎にたどり着いて、下馬し、役人に案内をされ中に入った。
やはり副都だけあり、中央庁舎は王宮と見紛うばかりの豪奢壮麗の様相を呈し。特に琴羽は不慣れと緊張を禁じえぬ様子であった。
が、貴志は打って変わって、慣れた感じであった。もとは暁星の王族であり宰相の子であり、大陸の覇者・辰の都に留学もしていたので。こうした場には、感心しつつも、やはり慣れていた。
(この人は何者?)
琴羽はその貴志の様子を察して、内心驚きを禁じ得ない。学識豊かそうな感じではあったが、王侯貴族然とした雰囲気も醸し出されて。自分とは遠い世界の住人であると。
ともあれ、慶子義との面会である。
広間でなく、慶子義の私室に案内される。そこでお互いあいまみえた。
(この人が……)
琴羽は威厳あるたたずまいに感心する。




