愛国 十
「なんの。ここまでの旅路、賊に襲われることもあったけどさ。ふたりはよく戦い、追い払ってくれた。あたしらとしても、頼りにしてるよ」
「そういうことさ」
龍玉がやや強引に話をまとめる。
「まあ、行こうか。大事の時に馳せ遅れちゃったら、こっぱずかしいもんねえ」
琴羽も軽く笑う。
香澄とリオンにコヒョ、貴志は愛想よい面持ちをしているが。源龍は苦笑気味の顔をし、羅彩女は眉をしかめる。
羅彩女は、龍玉とはあまり仲はよくない。
ともあれ、南景に向かう途中で、追々話を聞いた。
琴羽たちのいた、南方の町のある州の太守は慶子義と誼を通じ、志を同じくしており。
本意ならねどと悩みつつも、いっそのことと挙兵し、武威を以って諫めるの道も取らざるを得ない、という考えだった。そこで、持ち前の手勢のみならず、自分の納める州内から広く義勇兵を募ってもいた。
それに呼応し、いくつかの義勇軍が結成され、琴羽の義勇軍もその中のひとつであるという。
「なぜあなたが大将となったのですか?」
と貴志は問えば。
「簡単なことさ」
と喬琴羽は笑って応える。
「腕に覚えのある者同士、力比べをして、勝った奴が大将になったのさ」
「ほ、ほう!」
貴志は驚きと感心の双方の反応を示した。
琴羽のいた町で義勇兵の呼びかけをしたのは別の者だったが。大将はやはり、強く頼れる者がよかろうと、数名の大将候補に試合をさせ、最後に勝った者が、となった。
それが琴羽だった。
「でもさ、あたしら腕におぼえはあるけどさ、ここはからしきなんだよねえ」
と、自分の頭を指さしながら苦笑する。
「だから、誰か軍師になってくれそうな人も欲しいんだけど、なかなかいないんだよねえ」
琴羽のいた町は小さな町で、寺子屋程度のものはあっても、本格的な学問や兵法を学ぶ場などなく、そのため、腕っぷしばかりの者が集まる義勇軍となった。
「やっぱりさ、頭のいい人にもいてもらわないと。なめられて、いいように使い走りにされるだけになるかもしれないしさ……」
「……」
貴志は余計なことを言わず、じっと話を聞いていた。琴羽は、頭が悪いというが、案外そうでもない。世の実相というものも知っている。
この義勇軍は、いうなれば反乱軍である。しかしそれをおおっぴらにするわけにもいかず、護国護王の志を持つ集まりだと誤魔化しながら旅をしていた。それなので、途中で頭の良さそうな者と出会っても、迂闊な話は出来ず。素通りしてゆくしかなかった。
「軍師が欲しいなら、この兄ちゃんがいいよ!」
「うわ、っと!」
と、突然貴志の背中を強く叩いて言う者があった。叩かれた貴志はややよろけて苦笑。
龍玉だった。青龍刀を肩で担ぎながら歩き、得意そうに貴志と喬琴羽を交互に見据えた。
「龍お姉さん……」
虎碧は苦笑する。その意見に賛成ではあるが、やや安売りをしているきらいもあった。




