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ヒカリの秘密

電車に揺られている。

昨日も乗った電車だ。

しかし昨日とは全く違う感覚だ。

昨日の朝は現実社会からの逃避であり

今日の朝は現実社会への帰依である。

普通の日常を願う気持ち、、、

昨日の出来事は夢では無く現実だ。

最悪だ、、、何だよあれは、、、

僕は目を瞑り電車のガラスに頭を押しつけた。

ぎゅっ、、、

誰かが後ろから抱きついてきた。

あっ、このシャンプーの香りは、、、

ヒカリ「おはよう一馬!」

ヒカリは僕の背中に顔を埋めて挨拶してきた。


一馬「お、おはよう!えっと、、、」

僕はヒカリの腕を振り払うとクルリと身体を回転させてヒカリの正面に立つ。


ヒカリ「あっ名前忘れたの?

彼女の名前忘れるって意味わからんわ!」


僕は知った。

人が持っている自己防衛本能は時として

とんでもない能力を発揮する。


一馬「な、何言ってんの?ひ、ひ、ヒカリだよ!大好きな彼女を忘れるわけないっしょ!」


ヒカリ「あ〜わかってるね!一馬!大好きだよ!」

ヒカリは僕の腕にしがみつく。

、、、そう。周りから見ればバカップルだ。

しかし僕は生死をかけた戦いをしている。

だってヒカリの機嫌を損なえば間違い無く消される。身体がそう言っている。

幸いヒカリは頬を赤くしていた。

僕はこのチャンスに追撃をする。

ヒカリの頭に手を宛てグッと引き寄せて耳元で

囁く。

一馬「今日も可愛いよ。」


、、、ドン、、?

みぞおちに鈍い痛みが走る。

ヒカリが眼光鋭く睨みながら僕の耳元で囁く

ヒカリ「わざとらしい、、、嘘くさい。」


し、しまった。調子に乗りすぎた。

地雷を踏んだのだ。

ヒカリはニコリと笑うと僕の腕にしがみついてきた。

僕はヒカリに気づかれないように虚ろな目で電車の窓から外を眺めた。死んだ魚の眼をしていた。


学校が見えてきた。ヒカリは僕の手をしっかり握る。周りの視線が気になる。

校門をくぐり下足室で靴を履き替える。

一瞬手を離したかと思ったら直ぐに繋いでくる。

周りの生徒の視線がさらに気になる。

教室の前まで来ると流石に恥ずかしくなり

手を振りほどく。

ヒカリは一瞬不思議そうな顔をしてニヤリと

笑う。


教室に入ると僕はそそくさと席に座る。

鞄から教科書を出していると誰かが僕の机に

腰を下ろす。

「おはよう。転校生。僕は中澤康太だ。」

長身、痩せ型、今どきの美男子の中澤康太が

話しかけてきた。

中澤「やるねぇ転校生。ヒカリは僕がずっと前から狙っていたのに、、、」

中澤は得体のしれない圧力を掛けてきた。


中澤はヒカリの方を見て

「なぁヒカリ。転校生と付き合ってんの?」


ヒカリは頬を赤くしてニコニコしながら頷く。


ピキッ、、、


ん、何の音だろう。

僕は顔を見上げる。

中澤は額に腕時計を充てて何かを呟く。


ヤバイ!、、、僕の身体が瞬時に反応する。

考える前より先に身体を反転させた。

机が真っ二つに裂けていた。

そして光に包まれ肩の筋肉が異常に隆起した中澤が立っている。

顔を僕の方へ向けると少し驚いている。

「、、、何故避けれた?」

僕は逃げた。

どこをどう逃げたかはわからない。

どのくらい逃げたのかもわからない。

気が付いた時には体育倉庫へ逃げ込んでいた。


はぁ、はぁ、、、荒い息遣いを必死に押し殺す。

体育倉庫の小窓から外が見える。

汗が頬を伝う。僕はその景色に息を飲む。

人が、、、鳥が、、、時計が、、、

停まっている、、、


げ、限界だ、、、


僕は、昨日からの非現実に精神が限界を迎えていた、、、静かに眼を閉じる。

ああ、、、お願いだから眼が覚めた時には普通の

日常に戻っていて欲しい。


かすかに人の会話が聞こえる。


 「いきなり変身する奴がいるかバカ。」

 

 「そうだ!時間止めなきゃ今頃どうなったと思うんだよ。」


 「ワリィ、、、あまりにも腹がたってよ!」

 

 

僕は優しい風と戯れるカ―テンと少し薬品の匂いのする保健室のベッドで眼を覚ます。


白色の虫食い天井が見えた。

眼球だけ左側に寄せると心配そうな顔のヒカリと

眼が合う。


ヒカリ「一馬!大丈夫?どこか痛くない?」


、、、この時点で普通の日常は否定された。


ヒカリ「ごめんね。中澤悪い奴じゃないんだけど感情的になりやすくて、、、いきなり一馬の事を

押し倒すから一馬は気を失ったみたい。」

 

一馬「、、、あ、あのさ、、、」

僕は一瞬色んな事を考えた。

でも言葉には出来なかった。

、、、怖かったんだ。


ヒカリ「大丈夫だよ!一馬!私が中澤の奴には

説教しといたからさ!」


一馬「、、、ありがとうございます、、、」


ヒカリが寄り添ってくれて教室へ戻る。

途中でヒカリの横顔をチラッと見た。


正直可愛いんだ。

髪はサラサラで少し栗色。シャンプーの匂いが

空腹にも似た感覚に襲われる。

クリッとした眼とプルプルな唇。

まつ毛長いなぁ、、、

ふと考えた。

こんな可愛い子が彼女なら非現実な今もアリではないだろうか。

僕が普通にこんな可愛い子と付き合えないっしょ!

などと考えていると教室に着いた。

丁度2限目が終わった所だ。

席に着くと啓太が隣に座る。 

「大丈夫かぁ一色君!中澤も悪い奴じゃないから許してやってくれ!」

啓太が両手と額を机に擦り付けると後ろから

中澤が近づいてきた。


頬が、、、右目が、、、パンパンに腫れている。

だ、大丈夫かぁ?

めっちゃシバかれている。


中澤「、、、一色君。ごめん。」


一馬「、、、う、うん。中澤君大丈夫?」




 



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