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伝説の序章⑨


 不思議な偶然というものがあって・・・正徳SCでの話である。そんな大袈裟に何事かというと、要達の代は長男が多くて、進達の学年は次男や末っ子の割合が高い。するとね、チームが全く異なった色彩を発することがある。どっちが綺麗とか優れているということではなくて、チームとして集団としてのちょっとした特徴や課題、強みやお兄ちゃん軍団とは一味違う特色が見え隠れする。中でも顕著なのが打たれ強さ。肉体的な方ではなくて、精神的な、ね。練習中も練習前後もお喋りおふざけ当たり前。注意したって一応はいとは返事をするが、全くもって堪えない。日頃からお兄ちゃん、お姉ちゃんに負けじと奮闘しているから自然と鍛えられているのだろう。それにつけても、成人の自分が羨ましく思う程に強い。切り替えがうまいのか、うまいこと忘れてしまうのか。加えて、次男坊連中の運動神経の良いこと。サッカーの上手い下手ということだけではなくて、基本的な身のこなしが美しいのだ。ただし才能の開花までには長男以上に回りの人間がかまってやらねばなるまい、調子に乗りすぎることがあるから。

 要が4年生、進が2年生に上がってすぐのことである。正徳SC4年生の練習前、野口コーチが要に声を掛けた。さっき2年生の練習で的当てをやったんだけど、進が10球中8球も当てたんだ。2回目も7球。他の子は1球、2球当てるのがやっとなのに(野口コーチのこの顔は危ないぞ~)。話を訊いた要はニコッと笑うと、時々2人で公園のジャングルジムを使って的当てをすると伝えた。ノートを型にして切った段ボールをガムテープでぶら下げる。真ん中、左、右。どこに的を置いたって同じように当てられる。5球勝負でやっているが、全休的中だって珍しくない。的当てでは進に勝てないよ。

 まぐれの偶然ではなかった。進の左足から蹴り出されたボールは、掃除機に吸い込まれるみたいに的へ向かっていく。左利き―レフティなんて呼ばれる―は右利きとは何かが違う。どこかこう、感覚的だ。ボールを足で蹴るというどう転んだって感覚に頼らざるをえない動作は、どれだけ繰り返し練習したってセンスによる所が大きい、なんて断言したら怒られてしまうが、右利きには真似できない特殊能力を隠し持っている。

                             

                                   【伝説の序章 終】

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