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伝説の序章⑦


 「懐かしいだろう、覚えているかな?今観てもらったのは君達が1年生の時の冬の大会の試合で、結果はご覧の通り。ほれ、そんな顔しない。別に意地悪をしようという訳ではないんだ。さぁ、気が付いたことを挙げてみようか。どこかいけなかったのか、どうすればもっといい試合ができたか。勝つ為には何が必要か。」

次々と己に向けられる敗因と改善策。ボールを前に蹴るだけ、ポジションもへったくれもない、サッカーになっていない。要約するとこんな所だろうか。悲しいかな、良い点を絞り出すのは難しくとも、反省点は九九のようにすらすら出てくるのだった。

 「続いていくぞ、2試合目。」

そう言って次のテープを再生した野口コーチ。もう1試合、悪い見本が続いた。お次は2年生の冬の大会。チームが初勝利を飾った記念すべきゲームなのだが、今の彼等の目には穴だらけの隙だらけ。勝った試合にも関わらず、ミスの目立つ試合に映ったということは嬉しいかな、それだけ現在地が上だということ。成長の証。うまくなっているんだよ、気付かない内にね。


 最後を締めくくる3試合目。言うなれば、野口チョイス。野口コーチが選ぶこのチームのベストゲームは、3年生の冬の大会決勝ラウンド2試合目。思い出のアルバムをめくっている訳ではないのだが、ここに来て現在の姿とほぼほぼ一致した。そして肝心の感想はというと、溜息交じりの苦言しか出てこなかった前の2試合とは異なり、その動きと懐かしさに盛り上がった。点差も結果も覚えているだろうに、イケーなんて応援したり、オシィなんて悔しがったりして。本日初めてにこやかな表情を取り戻した正徳SCの面々。まぁまぁの試合といまいちの試合の判別つくのも実力の内。この大会の決勝で負けた悔しさも、口にこそしないが忘れられないはずだ。皆の耳には届いていないだろうけど、あの弱小正徳がどうしたんだと、各チームのコーチ達が驚いていたんだぞ。

 

 始まれば、やがて止まる。永遠、ずっと今のままということは、少なくともヒトの世界には存在しない。時に、目の前に終わりが見えていながら、その先の始まりも見据えて進んでいかねばならぬ頃合いもあるだろう。そんな時は少々しんどい。新たな始まりの楽しみや不安と、終わってしまう寂しさの両方を抱えなくてはならないから。

 梅雨が、雨が、上がろうとしていた。

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