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辞書と分数⑧




 「先生~、算数って何の役に立つんですか~?」

後日、今度は算数に白羽の矢が立った、というよりは目の敵にされた。標的は分数。

「分数って計算がめんどくさいし、よくわかんないし、何に使うんですか~?どこで使うんですか~?」

ご尤もな苦情・クレームだ。大人になってから毎日使っていますかと訊かれると困ってしまうが、是非とも覚えておいてほしい。分数の凄い所、面白い所は、絵に描くことも難しい問題に答えを出せることだ。それは人間の創造力を超える。いつかきっと遠くない内に、数学の不思議な力に驚き、感動する。

「分数ってのは凄いんだぞ。人間の頭では理解の追い付かない現象を、数字で私達にも分かるように表してくれるのだから。」

そう言って皆に背を向けた小澤先生はチョークを取り、黒板に綺麗な円を描いた。匠の為せる技。でっかいコンパスなど使わずとも真ん丸の円をさっと作って見せた。これがとても難しいことだということも子供達は気付いていないだろう。そして戯言を吐ける環境を作ってくれる先生に当たった幸運も。

 「ここに大きなケーキがあります。誕生日ケーキでもクリスマスケーキでも結構。まだカットしていないホールケーキを思い浮かべて下さい。」

ケーキ食べたいな~、なんて小声も訊こえる。

「先生の家は3人家族なので3等分します。これくらいかな、これが3分の1。」

チョークで黒板のケーキを3つに切った。続いて隣にもう1個ケーキを描いて、

「4人家族だと4分の1。こっちの方が簡単に切り分けられるね。」

十字にケーキをカットした。

「3分の1、4分の1なら、このように絵でも描けます。3分の1と4分の1では、どっちが大きいのかも一目瞭然。でもね、先生ではここまでが限界。例えば7等分してごらん。13等分はもっと難しいぞ。もしも分数がなかったらどうやって表そうか・・・・・・そうだね、ケーキは沢山食べたいね。じゃあ、7分の1と13分の2、つまり7等分した1個と13等分した内の2個ではどっちが大きいかな。絵や言葉だけで判断するのは非常に困難。でもさ、通分してごらん、答えが出るだろう。」

分数の素晴らしさは君達の想像を超えてくる。そうなるよう、一緒に勉強していこう。

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