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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
第五章 抗争編

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鍛冶師探し

 村を出た『アマテラス』一行は、王都へ向かう道中でも情報収集を続けていた。

 ただ、どこに竜王会の人間が潜んでいるか分からない以上、接触する相手は慎重に選ぶ必要があるため、情報源はギルド職員や町の鍛冶師など、比較的信用のおける一般人に限定し、常に五人で行動していた。


 その道中で得た情報では、どうやらその聖剣を打てる鍛冶師は、ウラッグという名のドワーフというらしい。ただ、残念ながらその所在までは掴めなかった。

 五人は特に大きな問題もないまま、王都へとたどり着くと、最初に冒険者ギルドに足を運ぶ。


『アマテラス』は、この世界でも数少ないSランクパーティー。

 その立場を利用し、輝也はギルドマスターへの面会を取り付けた。


 そして、ギルドマスターである男から話を聞くことができたのだが――


「聖剣の鍛冶師が……死んだ?」


 聞かされたのは予想にもしなかった情報だった。


「ああ、話によれば、奴はなんでも聖剣を作る裏で、魔剣を作っていたらしくてな。それが原因で騎士団に逮捕されたんだが、王都へ連行する途中、モンスターの襲撃にあって、騎士団の者達と一緒に殺されたらしい。」


 話を聞いた輝也は呆然とする。

 今回、輝也たちが聖剣の鍛冶師を探していたのには理由があった。

 輝也たちが拠点とする、ユーリシア王国には、聖剣を結界の核としてモンスターの侵入を防いでいる街があった。

 だが、最近のその聖剣が劣化し、結界の効力は著しく低下してモンスターの侵入被害も出始めてい為、新しい聖剣が必要だったのだが……


「これは予想外でござるな……」

「困りましたね……」


 サクラとアニーが、揃って眉を顰める。

 アラエの件もある以上、一刻も早く国へ戻りたい。

 だが、聖剣を用意できなければ帰ることもできない。

 行き場を失ったような空気が、その場に流れる。

 すると、そんな輝也たちを見かねたギルドマスターが、静かに口を開いた。


「もし詳しく知りたいなら、この国の騎士団、十一部隊を訪ねるといい。」

「騎士団ですか?」

「ああ。元々ウラッグを捕らえたのは騎士団の第四部隊だからな。ただ、あいつらは貴族で固められた部隊だ。冒険者の話など、まともに取り合わんだろう。しかし、第十一部隊は身分に関係なく手を差し伸べる部隊だ。だから『聖騎士団』なんて呼ばれている。」

「聖騎士団……」

「それに、その部隊の団長は聖剣使いでな、ウラッグとも面識があったはずだ。」

「聖剣使い……」


 ――つまり。


 ウラッグの事や、聖剣の事についても知っている可能性が高い。


「……わかりました。行ってみます。」


 輝也が短く答えると、五人は、ギルドマスターに教えられた場所――王都にある聖騎士団の支部に向かった。

 本来、騎士団の支部は城内に置かれるものだが、聖騎士団は例外だった。

 彼らは遊撃部隊として各地を飛び回っており、王都にいる際も城ではなく街の支部を拠点としているらしい。輝也たちは教えられた場所へ向かい、聖騎士団の支部を訪れた。


 騎士団長や副長は不在のようだったが、幸い団長の妹であり、もう一人の聖剣使いであるアリアハン・メンデス……通称アリアと呼ばれる女性に話を聞くことができた。


 彼女は、凛とした佇まいの中にも柔らかな雰囲気を纏った女性で、いきなり訪れた輝也たちに対しても快く応じてくれた。

 輝也たちは事情を説明し、ギルドマスターから聞いた内容を伝えた。

 するとアリアは、その情報に対しはっきりと首を横に振った。


「それは誤解です。」

「誤解?」


 輝也の問いに、アリアは静かに頷いた。


「はい。ウラッグさんは、魔剣を作っていたわけではありません。あの方は、“管理していた”のです。」


 輝也たちはそこで真実を聞かされる。


 ウラッグは聖剣の鍛冶師であると同時に、聖剣の対なる存在である魔剣の管理も担ってきた事。

 その存在を知った第四騎士団の団員が魔剣を手に入れるため、ウラッグさんの元へ押し入った事。そして魔剣に操られた騎士団が、暴れ回った挙句、その責任を全てウラッグに擦り付けたことを語った。


「なにそれ、騎士団の連中ってサイテーじゃない!」

「ちょっとアニー、アリアさんも騎士団なのよ。」

「いいえ、構いません。事実ですから。」


 そう言って、アリアはどこか自嘲するように苦笑した。


「……もしかして、ウラッグさんは口封じのために殺されたのですか?」


 ユフィの言葉に、場の空気が一瞬で張り詰める。

 五人はハッと息を呑んだ。

 だが、アリアは、はっきりと首を横に振る。


「いいえ、そもそもあの人は……死んでいません。」

「え?」


 予想外の言葉に、その場の空気が止まる。


「実は――護送中の馬車を襲ったのは、モンスターではありません。『竜王会』という組織です。」

「竜王会⁉」


 聞き覚えのある組織の名に、アニーが思わず声を上げる。

 他の四人も声はあげていないが眼を大きく見開いていた。


「はい。彼らはウラッグさんが王都へ連行される前に馬車を襲撃し、そのまま連れ去ったと考えられています。」

「ってことは……今、ウラッグさんは竜王会に?」

「恐らくは。」


 アリアが短く肯定する。

 ウラッグは聖剣を打てる鍛冶師だ、それほどの人物を狙う理由としては、十分すぎる。


 ――だが。


「どうして、あなたがそこまで知っているんですか?」


 輝也の問いに、アリアの表情が僅かに曇った。

 今までの話を聞く限り、その情報は他の者達は知らないでいる。何故、彼女が知っているのか。

 アリアはしばらく沈黙していたが、やがてポツポツと語り始める。



「……実は私は当時、ウラッグさんのところにいました。そして、そこにはティアさん――いえ、竜王会を束ねる男、ティア・マットもいたのです。」


 その名に、場の空気がわずかに張り詰める。

 一同が目を細める中、アリアは続けた。


「当時の私は、彼がティア・マットだとは知らず、私と彼は協力し、魔剣に操られ暴走した騎士団を止めたのです。そして、ウラッグさんが連行されるところも、現場にもいました。」


 そこまで語ると、アリアはゆっくりと視線を落とす。

 連行を止められなかったことを悔いているのか。

 それとも、あの男がティア・マットだと見抜けなかった自分を責めているのか。

 その表情には、どこか後ろめたさが滲んでいた。


「そのティア・マットという男は、どんな人物なんですか?」


 輝也の問いに、アリアはすぐには答えなかった。やがて、ぽつりと呟いた。


「……正直に言って、彼の事はよくわかりません。ですが……彼は、無能です。」

「む、無能?」

「無能って……スキルも魔法も使えないってこと?」


 アニーの言葉に、アリアは静かに頷いた。


 無能……それは稀に生まれてくる、魔法が使えずスキルもたない人間の事だ。 輝也自身、実際に出会ったことはない。だが、噂ではそうした者の多くは周囲から迫害され、あるいは家族に捨てられ、長くは生きられないという。

 そんな人間が、裏組織の頂点に立っている、にわかには信じがたい話だった。

 アリアから聞けることを一通り聞き終えると、輝也たちは聖騎士団の支部を後にした。


 そして、そのまま王都で宿を取り、部屋に集まって改めて状況を整理する。


「聖剣の鍛冶師の居場所は分かったが……まさか竜王会とはな。」


 輝也の言葉に、全員の表情が曇る。

 よりにもよって、今最も関わるべきでない相手である。


「もしかして、向こうはこれを知っていて動かなかったのかもしれないですよ。」

「どういうこと?」


 ユフィの言葉にアニーが尋ねる。


「ウラッグさんが自分たちの元にいる事を知れば、自然とこちらから竜王会に接触を図ることになるのでう……そして、ウラッグさんと会わせる条件に、アラエを要求してくるのですよ。」

「っ……」


 その言葉に、アラエの肩がびくりと震える。するとすぐにマルカが隣に寄り、優しく頭を撫でた。


「大丈夫です。アラエは絶対に渡しません。」

「うむ。それにどうせなら、直接本拠地に乗り込んでウラッグ殿も助けるでござる。」

「となると、場所を突き止めないといけないわね……」


 だが、その肝心の手がかりがない。アラエに囮になってもらうこともできるが、そんな考えは誰一人賛同しないだろう。

 再び思考は振り出しに戻り、部屋には重たい沈黙が落ちる。


 ――その時だった。


 コン、コン。


 不意に、部屋の扉がノックされ、全員の視線が、一斉に扉へと向く。


「はい。」

「すみません、皆さまにお客様が。来ています。」


 どうやら宿の従業員のようだ。

 輝也は仲間たちと目配せを交わし、小さく頷く。


「客……ですか?」

「はい。」

「それは、一体どのような方で?」

「ウラッグという、ドワーフの方です。」


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