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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
第五章 抗争編

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『竜王会』

 メーテルが立ち去った後、輝也たちは改めて、アラエの今後について考えていた。

 両親がアラエを売り渡したと言う事実を知ってしまった以上、彼女があの家に戻ることは、もうできないだろう。


 それにこのまま放っておけば、再び『竜王会』に狙われる可能性もある。

 そう考え結果、輝也たちはアラエをこのままユーリシア王国に連れて帰る事にした。

 アラエ自身は、まだどこか現実を受け止めきれていない様子だったが、その提案を受け入れてくれた。

 そして、今はマルカの膝で眠っている。


 ただ、輝也たちは観光目的だけでこの国に来たわけではない。

 輝也たちが来たこの国に来た理由の一つに、伝説の鍛冶師を訪ねるという目的があった。

 この国のどこかに住むとされる、聖剣が打てる鍛冶師、その人物に会うまでは、国に帰るわけにはいかなかった。


 しかし同時に、この地にとどまっている以上、竜王会との衝突も、もはや避けられないだろう。

 そう考えた輝也たちは、まずは竜王会について調べることを決めた。


『――なるほどな。で、わざわざ俺に情報を聞いてるってわけか。』


 通信機越しに響く男の声に、輝也は小さく頷いた。

 場所はアラエの村にある宿の一室で、相手はジョージというユーリシア王国で輝也たちが贔屓にしている情報屋だ。

 かつては世界各地を渡り歩いた冒険者で、引退後はその経験と人脈を活かし、情報屋へと転じた。

 その情報網は広く、ユーリシア国内はもちろん、他国の情勢にも通じているので、輝也は竜王会について、彼に尋ねていた。


「ああ、あんたなら他国の組織に関しても詳しいと思ってな。」

『そうか。なら、その選択は正解だぜ。なにせその国の情報屋は竜王会の息がかかってる連中が多いからな。』


 ――⁉


 その言葉に、輝也たちは顔を見合わせた。

 当初は、この国のギルドで情報を集めるつもりだった。

 だが妙な胸騒ぎを覚え、急遽ジョージに連絡を取ったのだが、どうやら、その判断は正しかったらしい。


 一応、盗聴防止の結界は張ってあるが、それでも、輝也たちは改めて周囲に視線を走らせると、声を潜めて会話を続けた。


「それで、竜王会ってのはどんな組織なんだ?」

『竜王会はここ数年でベンゼルダで頭角を現してきた裏組織だ、闇金、闇市、賭博、といった非合法な商売から盗みや殺しといった犯罪まで幅広くやっている。だが、他の組織と違うのは、竜王会は孤児や浮浪者を支援したり、多数の貴族との繋がりを持っている。そのため、迂闊に討伐しようものなら国そのものに被害が出る可能性があるから、手を出せないという事だ。』


 ジョージから淡々とした口調で語られる内容に、輝也たちは顔を顰める。


『それに連中は数だけじゃねえ。実力者も揃ってる。特に幹部クラスは厄介だ。Sランク冒険者に匹敵する奴もいる。お前らが以前に相手にした『戯れの悪魔』。その残党を竜王会の幹部の男が、単独で壊滅させたらしい。』

「――っ」


 その名に、サクラの表情が険しくなる。

『戯れの悪魔』は以前受けた依頼で討伐した大規模な賊で、サクラとはその時に出会ったのだ。

 残虐な集団を許せなかった、サクラは当時単独で討伐に乗り込むも敗北し、捕らわれていたところを『アマテラス』が助けに入りそれをきっかけに仲間になった。

 その後、輝也の活躍により追い詰めるも、あと一歩のところで帝国領に逃げ込まれ壊滅させることができなかった。

 残党とはいえ、それを一人で壊滅させるほどの実力者がメーテルの他にもいる。それがどれほどの脅威を意味するのか、彼らには嫌というほど分かった。


「……その組織のボスについては分かるか?」


 輝也の問いに、ジョージは短く肯定した。


『ああ、竜王会のボスの名は、ティア・マット。』

「ティアマット……あの伝説の邪竜王か?」

『本名かどうかは分からねえ。だが、そう名乗ってる。それともう一つ“貴族殺し”の異名を持つ男だ。』

「貴族殺し……?」

『ああ。そいつが世間に名を知られたのは、今から三年前。左遷された中央貴族の屋敷に単独で押し入り、領主と私兵を皆殺しにしたのが始まりだ。最初はただの凶悪犯だったが、奴はその後仲間を集め、貴族どもが開いていた闇オークションを襲撃し商品を奪い、さらに『五大盗賊ギルド』呼ばれる裏組織を囲んでいた貴族、ビビアン・レオナルドを殺害。そのまま盗賊ギルドを吸収し、竜王会を一気に拡大させその名を裏社会に轟かせた男だ。』


 話を聞き終えた五人は、しばし言葉を失っていた。

 貴族はどの国でも同じようなもので、そんな貴族に対し平気で手を出すあたり、その男が常識の枠に収まる存在でないことは明らかだった。


「……そのティアマットって男は、どういう人物なんだ?」

『さあな。そこまでは分からねえ。ただ容姿に関しては、紅い髪に緋色の眼をした若い男って話だ。それと今の話でも分かる通り頭が切れる。』


 ――頭が切れる、か。


 確かにこの世界には生活魔法が存在し、ある程度の汚れなら簡単に落とせる。だから普通なら、『洗浄』などというスキルに価値を見出す者はいない。


 そこに目をつけたりする当たり、その男は相当頭が切れるようだ。

 それに、あのメーテルを従わせているのを見る限り、それだけではないと思う。


 ――想像以上に厄介な相手かもしれない。


『はっきり言わせてもらうが、どんな事情があろうと、そいつらには手を出さねえ方がいい。元々は他国の問題だ。お前がわざわざ首を突っ込む必要はねえだろ。お前が強いのは、俺だってよく知ってる。だが――あいつは腕っぷしとは別の“強さ”を持ってる。相手にすりゃ、たとえお前でも一筋縄じゃいかねえ。』

「……わかった。忠告、ありがとう。」


 短くそう返すと、輝也は通信を切る。

 そして改めて仲間に目を向ける。


「――というわけだけど、どう思う?」


 輝也の言葉に、仲間たちはそれぞれ表情を引き締める。


「正直に言って……私たちだけでどうにかできる相手ではないと思います。」

「うん。規模も数も、本拠地すら分からない。無闇に手を出す相手じゃないね。」

「もし討伐するなら、ギルドや騎士団との連携も必要でござるな。」

「でも……その“誰か”が安全とは限らない、話した相手が竜王会の人間……なんてこともあり得るわ。」

「……確かに。」


 アニーの言葉を誰も否定できなかった。

 この国は、既にどこまで侵食されているか分からない。

 五人の間に、重い沈黙が落ちる。


「……とりあえず、今は様子見するしかない、かしら。」

「そうだね。僕たちの目的は、あくまで伝説の鍛冶師に会って、聖剣を作ってもらうことだ。」

「ただ、向こうがいつ仕掛けてくるか分からない以上、警戒は続ける必要がありますね。」

「なら、暫く単独行動は避けるべきでござるな。」

「うん。まずは鍛冶師の情報収集を優先しよう。」


 結論がまとまると、その夜は全員が同じ部屋で休むことになった。

 万が一に備え、アラエを中心に囲むような形で眠りにつく。

 そして翌日。


『アマテラス』一行は、新たな情報を求めて情報が最も集まる王都を目指し、アラエの村を後にした。


 

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― 新着の感想 ―
ここまで周囲の動きで物語が構成される作品というのは珍しい印象を受けます。主人公の視点というわけでもなく、なのにその動きの裏に主人公の影がしっかり見え隠れするのがなんとも香ばしくて、ここ最近は特に更新が…
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