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囚人と迷宮と  作者: 灰色の雪
第一章 囚人たちの浅層攻略
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第十七話 囚人の謎解き

最初の名乗りの説明を追加及び表現を若干修正(2013/3/3)

 ラグスとザグンは通路の脇に並び立ち、腕組みをして何かを考えているような厳めしい顔をしている。ディックはその反対側に対峙するかのごとく立っていた。ロイは謎の玉が填められている壁面にへばり付くかのように調べている。

 ラグスとザグンが小声で声を交わす。


「赤玉二個とか終わってないか」


「ふむ、逆に大当たりなのかもしれないぞ」


 謎について考える気はあるようだが、現状では玉にまつわる猥談じみた会話(ボーイズトーク)をしているだけであった。ちなみにこの会話を始めたのはラグスである。考えることがあまり得意ではないようだ。ディックは開けた通路をたまに見ながら警戒している。こちらは逆に謎解きを手伝う気は皆無のようであるが、危険察知を買って出ているだけまだマシといえるだろう。

 それを耳にしたロイが盛大なため息を漏らし壁面から少し離れる。最初に壁面を見つけてすでに一刻は経過していた。


「文字で分けられてるし、下は蔦で左右に区切られているから、上と下では違うものを表しているんだよね……」


 意味があることのはずと自分のしている行動は無意味ではないと意識しながら玉の配置を考える。視線が地面を向く。暫くして視線を上部に向ける。

 

「赤と赤……赤が二個……」


「黄と赤と赤と赤……黄一個と赤が三個……」


「……緑と黄と赤……」


 顎に手をやりながらまた地面を見る。


「三列全部に赤は有るけど緑は赤の列と黄の列にはない……」


 何かに手が届きそうなのに届かないもどかしさを押しとどめ、目を閉じて思考を続ける。


「赤が一番多い……逆?」


 ぼそっと告げた自分の言葉に目を開く。


「赤が一番小さいのか?……赤が一列目……赤が最初……最初の名乗り(ファティマ・ズラズス)?」


 四色神を語る場合、赤を最初に語ることが多い。これには意味がある。教会が総力をあげて写経している聖なる書によれば四色神は自らの肉体を万色神から受けるべく、自ら名乗りを上げた。その順番が、赤、青、黄そして緑なのである。現在では、子供がしゃべれるようになると教会にて自分の名乗りをあげる儀式を行うようになっており、この儀式のことを最初の名乗り(ファティマ・ズラズス)という。


「赤を一と考えると……黄が三?……ということは緑が四……か?」


「けど、赤は二個……」


 再び思考に落ちる。


「最初の玉は、主語的表現……?」


 赤と赤、ロイのいう方法で表現するのであれば、“赤は赤”もしくは“赤は赤一個”となろう。


「となると、黄は赤三個分……やっぱり、三。うん、緑は黄と赤、黄は赤三個分だから緑は赤四個分、うん、四だ!」


 興奮気味にラグスたちの方へ振り返る。ラグスとザグンは首を何度も縦に振りよくやったと無言で表現し、ディックは見てすらいなかった。ディックが見ていないことを無視し笑顔で再度壁面に向くロイ。


「これを前提に下を読み解けばいいんだよね……間が空いてるということは、三段がそれぞれ違うことを表現しているのかな……?

 一段目、赤と赤ということは二、蔦を挟んで緑が一個ということは、四、その下も赤が四……左二右四と四、なんで四が二つ?」


 新たな疑問が湧くが、わかるところだけを先に見ていく。二段目に視線を向ける。


「緑一と赤四、つまり両方四だな……ここも四が二つか……」


 蔦を挟んで右側を見る。


「黄二個と緑一個……三と三と四……十?」


 ラグスが後ろで両手を開いて指を折っている。どうやら計算しているようだ。


「緑二個と赤二個……十……十が二個、やっぱり二個……」


 三段目左に視線を動かす。


「緑一個と赤四個……二段目と一緒か。これも四だな。」


 右に視線を向ける。


「最後に黄一個と緑一個、その下に赤が七個……七が二個あるな……」


「一段目の左だけ一列しかない……赤だけだから?……二列目には赤が必ず入ってる……」


 ロイの言うとおり、二列目には必ず赤を含んでいた。


「二列目はヒントなのかな? 無視して考えてみよう」


 二列目を無視して考えるならば、蔦を“:”で表現すれば、一段目「二:四」、二段目「四:十」、三段目「四:七」となる。


「これが正しいかわからないけど、とりあえず玉はこういう考え方の方向で間違ってないはず……」


 最後に中央部の神代文字を見る。


「ここが始まりの地ということは、ここが最初の場所と考えるべきなんだから……」


 自分自身に確認しながら何度も装飾を見る。


「場所?」


 自分の言った言葉になにか引っ掛かりを感じるロイ。


「この場所?」


 そういって自分の脚元の周囲を見、来た方向の通路を見る。つられてラグスとザグンも見る。ディックはすでにその方向を向いている。今は見えないが少し戻ったところに十字路がある。碁盤の目のように配置された十字路が……。


「十字路! そうか! 十字路だよ。二つ目の十字路、四つ目の十字路! うんうん!」

 理解の火がともった瞳をラグスたちに向けるロイ。ディックも振り返りロイを見る。


「ここを最初の場所として、二つ目の十字路、そして四つ目の十字路、区切られているのは方向が違うんだ。最初の数字の分は真っ直ぐ進む、そのあと左にまがって、四つ目の十字路を示してるんだ。そこに何かあるはずだよ!」


 それを聞いたラグスたちは、ロイに向かって軽く手を挙げる。ハイタッチを要求したのである。ロイは要求にしたがって嬉しげにハイタッチしていく。ハイタッチが終わった後、ラグスが冷静に聞く。


「なんで左に曲がるんだ?」


「なんでって、右に曲がっちゃうと行き止まりでしょ」


 ああ、そうかといった感じで頭に手をやり、軽く舌を出す。全員が理解の色を示したことで、まずロイが示す、壁面が標しているであろう場所に向かう。


 はたして、目的の十字路に到着する。丹念にその周囲を調べると左前方に隠し扉が存在した。問題は、今まであった隠し扉より高度な術式が刻まれた隠し扉であるということ。ディックがなんとかスキルで見つけたのである。

 ディックが顎で壁面をしゃくる。ラグスはそれを見て、壁に手をやる。


「ここ? 堅いけど?」


 今までの隠し扉であれば、手のひらで軽く触れば幻術と見破れたが、ここにあるものは物理的にものがあると認識を撹乱する術式が仕掛けられていた。


「体を押し付けて見ろ」


 ディックがそういう。ラグスは仕方ないなという態で、壁に体を押し付けるようにする。


「ぬおっ」


 ラグスの少々格好の悪い音を残してラグスが見えなくなる。それを見てザグンが目を見張る。“ラグスが消えた”と思ったのである。


「隠し扉のランクとしては少し上の術式だな」


 ディックがそういい、隠し扉だという壁に入っていく。全員がそれに続く。

 隠し扉を開けると一辺が四メータルほどの小さな部屋にでた。正面にはこれ見よがしに装飾されたレバーが上にあがっている。ラグスがレバーを持ち、ザグンたちを見る。頷く。レバーを下げる。

 ガコンッとレバーから何かの音がした後、続いてガコンッとどこからか音がした後、ズズズズズズッと石を引きずる音がし、再度ガコンッという音がした。

 その音が鳴りやんだと同時に、


「あと二つ、何かがあると思います」


 そうロイがいう。


「ふむ、あの装飾の段列か?」


 ザグンの問いにロイが答える。


「そうです。あの装飾は三段ありました。一段目でこの小部屋にたどり着いたんですから、あと二段それぞれ何かあると考えられます」


 そういってロイが頭の中で地図を描き、自分がいる場所と装飾が示した場所を相対的に考えていく。


「二段目は、さっきの十字路から二つ進み、方向を変えて六つ目だと思います」


 確信した表情で敢えて曖昧な表現にするロイ。全員がそれに頷き、二つ目の場所に急ぐ。二つ目の場所に到着するとぽっかりと壁に穴が開いていた。そこに入るとまたこれ見よがしに装飾された左右に倒せるレバーがあり、左に倒れていた。ラグスが全員を確認した後、レバーを右にやる。ここでもレバーを倒した後、何かがはまる音がした後石を引きずる音がした。違うのは、そのあとに二回、ガコンッガコンッと音がしたことである。

 その後、ロイの指示を受けながらラグスたちは三つ目の場所にたどり着く。そこにもぽっかりと壁に穴が開いており、そこを潜り抜ける。すると正面には、またもやレバーが存在した。これもまたこれ見よがしな装飾がなされている。先ほどと違うのは、右と左の壁に窪みが存在することであった。


 左右の窪みにはそれぞれ鍵が一本づつ置いてあった。

名称:ラグス レベル:2 先天的才能:守り手(ガード)

スキル:<剣術>(2:5/30)、<盾術>(1:8/10)、<気迫>(1:3/10)、<**>、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<剣術>:スラッシュ、<盾術>:バッシュ、<気迫>:呼び声(コール)

     <**>:**、<**>:**、<**>:**、<**>:**


名称:ザグン レベル:2 先天的才能:怪力(パワー)

スキル:<鎚術>(2:5/30)、<両手利き>(2:2/30)、<物理耐性>(1:9/10)、<戦声>(1:1/10)、

     <自己治癒上昇>(1:4/10)、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<鎚術>:スマッシュ、<両手利き>:同時攻撃(ダブルアタック)、<戦声>:ウォークライ、

     <自己治癒上昇>:自己治癒上昇強化I、<物理耐性>:痛覚軽減、<**>:**


名称:ディック レベル:2 先天的才能:弓の名手(スナイパー)

スキル:<弓術>(1:3/10)、<探査>(2:1/30)、<開錠>(1:0/10)、<罠設置解除>(1:4/10)、<危険察知>(1:7/10)、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<弓術>:ピアッシング、<**>:**、<**>:**、<**>:**、

     <**>:**


名称:ロイ レベル:2 先天的才能:魔法使役者(マジックユーザー)

スキル:<魔法制御>(1:4/10)、<水属性制御>(1:7/10)、<土属性制御>(1:4/10)、

     <**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>、<**>

アーツ:<魔法制御>:射出制御・対象制御・範囲制御、<**>:**、

     <**>:**、<**>:**、<**>:**


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ロイ君がんばった!

他のメンバーもそれなりに!


ここの謎は一応、この世界の知識がなくても解けるように考えはしたのですが、簡単すぎたり、難しかったりした場合はごめんなさい。

その考えはおかしいだろ、この謎だとこういう答えもでないか?という所があればご指摘いただければ幸いです。


本作品は、こんな謎が今後も出てきます。作者自身、「迷宮には謎が必要だろ。スフィンクスだって謎かけしてくるんだから!」と考えておりますので、ご理解いただければ幸いです。

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