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主は、きませり

今日は作者最大の記念日、誕生日ですのでもう1話投稿します♪

主人公カスミの初恋のお話。

 その日、私は自宅で胸騒ぎを覚えていた。


 「……なんだ、なんかそろそろ義弟(グティ)が私の邪魔を為る様な嫌な予感は!」


 結果、私の予感はバカバカしいまでに当たった。


 「ねぇちゃん、ねぇちゃんの初恋っていつだ?」


 そう、こいつは突然やって来た!


 なんの前触れもなく、文字通り突然に!


 例えば私が至福の3週間ためどりアニメで嫁のスク水姿を堪能していようが、それと平行してわりとキワドイ同人誌を読んでいようが……そいつは私の部屋に入ってきた!


 「こんの……愚弟がぁーーー!!!」


 私は即座にバカを追い出した。


 ☆


 「初恋か……」


 私は、愚弟を追い出した後に一人溜息まじりにつぶやいた。


 高校1年の佐野カスミ……確かに今まで恋を一度もした事がないだなんては言わない。


 それはパパの事を差し引いてもそうだ。


 でも、初恋か……。


 私の心に不意にある人の顔が浮かんだ。


 確かに、私にとってあの人が初恋だって事は否定出来ないかな……。


 でも、私は本当にあの人の事が……。


 ☆


 私とその人が始めてあったのは私が中学に入って2月程の時だった。


 その時はまだ愚弟のコーキもいなければ、パパもいなくて……。


 幼馴染のリュウヤともクラスが離れてしまって私はどう使用も無くふさぎこんでいた。


 私は今でこそこんなバカみたいな性格だがそれはパパが来てからこうなったのだ。


 元々母子家庭で育った私は、推しとやかで、慎ましく、雅やかな美少女で……要するに陰キャラだった。


 周りの人との協調性も無く、クラスでボッチだった私を救ってくれた人……


 それが、きっと私の初恋の人の……名前も知らない先輩だった。


 その日、私はイジメにあっていた。


 イジメ……といってもひどいものではなく1部の男子に私の靴を隠されてしまっていたのだった。


 私は、夕暮れの下駄箱でずっと1人で靴を探していた。


 「ちくしょう……殺す、隠したやつそのうち絶対殺す……」


 きっと当時の私は黄昏時にブツブツと独り言を言いながら下駄箱を漁る不審人物だったろう。


 よくあの先輩は私に声をかける気になったものだ、私だったら絶対に声なんかかけたりしない。


 ともかく、私が靴を探していたら現れたのがその先輩だった。


 「探し物って……これじゃないか?」


 それが、その先輩の第一声だった。


 「え……?」


 私はその時たしかうつむきながら床の方を探していたため、突然上から降ってきた声に驚いて顔を上げた記憶がある。


 その時、その先輩の顔を初めて見た。


 「あ…………」


 その先輩は、どことなく冷めたような、無関心な瞳で私の事を見下ろしていた。


 そして、その手の中には確かに私の通学用の革靴が収まっていた。


 右手にスクールバックを肩に掛ける様にもって、左手に私の靴が 指に掛けられぶら下がっていた。


 「…………はい」


 私は、突然に帰ってきた靴を前に、呆然とその人の顔を見上げていた。


 その先輩が3年生と言う事はネクタイの色で気がついた。


 どことなく地味な印象をうける顔だが目鼻立ちは整っていて、美少年といっても問題ないだろう。


 そして、先輩の冷め切った様な無表情に見ほれてしまっていた。


 「ほら」


 そういって押し出される靴、それによって私はハッもなって正気に戻った。


 「あ…ありがとうございます……」


 私が靴をうけとるとその先輩はそそくさとそこを出て行ってしまった。


 背の高い先輩で……靴をもらう時に触れ合った手がジンジンと温まった。


 最初は、お節介な先輩だな、としか思えなかった。


 そんなことが私には何度も何度も続いた。


 もう、ある時から靴が隠される事が楽しみで……いや、それを私よりもずっと速く見つけてくれる先輩を見る事が楽しみになっていた。


 だが、ある時にめっきり靴が隠されることがなくなった。


 あとあとクラスの子に聞いたのだが、3年生の先輩がやってきてクラスの男子に注意をしたそうだ。


「くだらない事はやめろ。時間の無駄だから。」


 そんな様な内容だったと聞いた。


 そう……私にとって楽しい時間でも、先輩にとっては時間の無駄にすぎなかった。


 そう思った時に、わたしの心にぽっかりと穴が……先輩の形をした風穴が空いたのを感じた。


 それから、わたしの靴が隠される事は二度とはなくなったが、それはけっきょく私に空虚な毎日をしらしめてるにすぎなかった。


 だけど、同じ学校なのだから……そえおもっていた私にとどめを

刺したのは先輩の卒業式だった。


 私は、先輩が告白される姿を見てしまった。さらに、それだけでは無い。


 「オレ……他に好きな人がいるんだ、9ヶ月間も、ずっと忘れられない好きな人が……まだ名前も知らないけど……初恋なんだ」


 それを聞いた時、私はどうしていたんだろうか? 気がついたら部屋の鏡の中に泣きはらして、恋に敗れた乙女の姿があった。


 ☆


 あの時の先輩の思い人が誰かは私は知らないけど、結局私はあの時から先輩に会わずに高校まできてしまった。


 高校はわざと先輩とは違う学校を選んでまで……


 「でも……あれがわたしの初恋なんだろうな……」

 


 

失敗したかんが……

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