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一度きりのリボン  作者: 矢満田太郎
第5章:紬と蓮の選択
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【第53話】 渦が“紬を中心に形を変え始める”とき

街の中心に残った黒い渦は、影の中心が沈黙したにもかかわらず、昨日よりもさらに濃く、深く、重くなっていた。

影響域は街全体を覆い、名前の響きは常に揺れ続けている。


だが――今日は、渦が“紬を中心に形を変え始めていた”。


紬は胸の奥を押さえた。

「風花」という響きは安定している。

影の中心は完全に沈黙した。

名前の核も、存在も、意味も、未来も、形も――もう奪われない。


なのに。


渦が紬の方へ“向かってきていた”。


蓮は紬の隣で言った。

「紬……影の中心は止まったのに、渦が紬を中心に動いてる。

まるで……紬を“新しい中心”にしようとしてるみたいだ」


紬は息を飲んだ。

「私を……中心に……?」


ルクは紬の肩で震えながら言った。

「紬……渦の奥から“つむぎを中心にしろ”って響きがするよ……昨日よりずっと強いよ……」


■渦が“紬の名前の響き”に反応し始める

渦の黒い粒が紬の胸の奥に向かって揺れた。


――つむぎ

――つむぎ

――つむぎを、ちゅうしんに


紬は震えた。

「……私を……中心にする気……?」


ユイは風を揺らしながら叫んだ。

「紬! 渦が紬の“名前の響きそのもの”に反応してる!

影の中心が沈黙したから……渦が紬を新しい中心に選ぼうとしてる!」


真白は紬の手を握り、震える声で言った。

「紬ちゃん……胸の奥の響きが渦に引っ張られてる……!」


ミナは渦を見つめながら言った。

「影の残滓は、紬の名前の核を奪えなかった。

だから次は……紬を“渦の中心”にして、影の心臓を紬の中に作ろうとしてる」


蓮は紬の肩を抱き、強く言った。

「紬……絶対に渦の中心になんかさせない。

影が紬を中心にしようとしても、俺が紬を呼び続ける」


紬は胸の奥が強く揺れた。

「蓮……」


■渦が紬の周囲に“黒い輪”を作り始める

渦の黒い粒が紬の周囲に集まり、円を描き始めた。


ユイが叫んだ。

「紬! 渦が紬の周りに“中心の輪”を作ってる!」


真白は紬の手を握りしめた。

「紬ちゃん……渦が紬を囲んでる……!」


ミナは渦の動きを見つめながら言った。

「紬を中心にして、影の心臓を作るつもりだ。

紬の名前の核を奪えなかったから……紬自身を心臓にする気だよ」


蓮は紬の肩を抱き、強く言った。

「紬……ここからは“選ばなきゃいけない”。

渦を止める方法は二つある」


紬は蓮を見つめた。

「二つ……?」


蓮は静かに言った。


■蓮が紬に“二つの選択”を告げる

「紬……渦を止める方法は二つだ。


一つは――

渦の中心に自分から入って、影の残滓を内側から壊す方法。


もう一つは――

渦の中心を拒絶して、紬の名前の核で渦を押し返す方法。


どちらも……紬にしかできない」


紬は息を飲んだ。

「私が……選ぶの……?」


蓮は紬の手を握り、強く言った。

「紬……どちらを選んでも、俺は隣にいる。

絶対に離れない」


紬は胸の奥の響きを感じた。

「風花」が強く光る。


渦の黒い輪が紬を囲み、ゆっくりと閉じ始めた。


紬は息を吸い、蓮の手を握り返した。


「蓮……

私……選ぶ」


渦が大きく揺れた。

あとがき(紬の日記)

渦は私を“新しい中心”にしようとしていた。

影の中心が沈黙したから、渦が私を選んだ。

蓮は二つの選択を教えてくれた。

どちらも私にしかできない。

明日、私は選ぶ。

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