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一度きりのリボン  作者: 矢満田太郎
第4章:影の残滓と新しい名前の脅威
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【第32話】 黒い渦が“名前”を求めるとき

街の中心に現れた黒い渦は、昨日よりも濃く、深く、重くなっていた。

影の心臓が止まったはずなのに、残滓はまるで新しい鼓動を探すように揺れている。


紬は観察ノートを胸に抱え、渦の中心を見つめた。

胸の奥の「風花」という響きは安定している。

だが、渦の近くに立つと――その響きがわずかに震えた。


蓮は紬の隣で言った。

「紬……影の残滓、昨日よりも集まってる。誰かの名前を探してるみたいだ」


紬は息を飲んだ。

「名前を……探してる?」


ルクは震えながら言った。

「紬……渦の奥から“名前の空白”みたいな響きがするよ……」


■影の残滓が“名前の空白”を求める

ユイが風を揺らしながら渦を見つめた。

「紬……この渦、名前の響きが弱い人を探してる。

昨日みたいに“核”を作ろうとしてるわけじゃないけど……名前の揺れを求めてる」


真白は胸を押さえ、苦しそうに言った。

「名前の響きが弱い人……揺れてる人……」


ミナは渦の周囲を観察しながら言った。

「影の心臓が止まったことで、影の原型は消えた。

でも残滓は“名前の揺れ”に反応する。

揺れた名前を取り込んで、影の欠片を作ろうとしてる」


紬は胸の奥が強く揺れた。

「名前の揺れ……誰かの名前が揺れてるの?」


蓮は静かに言った。

「紬……影の残滓は“揺れた名前”を探してる。

昨日の戦いで、誰かの名前が揺れた可能性がある」


紬は仲間たちを見回した。

「みんな……名前の響き、大丈夫?」


ユイは頷いた。

「私は大丈夫。風が守ってくれてる」


真白も頷いた。

「紬ちゃんが呼んでくれたから、響きは安定してるよ」


ミナは静かに言った。

「私も問題ない。影の残滓に触れても揺れない」


蓮は――少しだけ目を伏せた。


■蓮の名前が揺れている

紬は蓮の胸の奥を見つめた。

蓮の名前の響き――昨日よりも弱い。


「蓮……名前が揺れてるの?」


蓮は苦笑した。

「紬……昨日、影の心臓に名前を引っ張られたでしょ。

その影響がまだ残ってるみたいなんだ」


ユイは息を飲んだ。

「蓮の名前……揺れたままなんだ……」


真白は蓮の手を握り、震える声で言った。

「蓮ちゃん……名前の響きが弱いよ……」


ミナは渦を見つめながら言った。

「影の残滓は“揺れた名前”を求めてる。

蓮の名前が揺れてるなら……狙われる」


紬は胸の奥が強く揺れた。

「蓮を……守らなきゃ!」


蓮は紬の肩に手を置き、静かに言った。

「紬……大丈夫。昨日みたいに呼んでくれれば、響きは戻るから」


紬は頷いた。

「うん。呼ぶよ。何度でも」


■渦が蓮の名前を引っ張る

黒い渦がゆっくりと形を変えた。

影の欠片が生まれようとしている。


渦は蓮に向かって黒い糸を伸ばした。


「蓮!」

紬は叫んだ。


蓮は胸を押さえ、苦しそうに息をする。

「紬……名前が……引っ張られてる……!」


ユイが風を送り、糸の動きを乱す。

「紬! 渦が蓮の名前を狙ってる!」


真白は治癒の光で蓮の輪郭を支える。

「蓮ちゃん……名前の響きが弱いから……!」


ミナは糸の根元を切り裂こうとするが、糸は渦の力で避ける。

「紬! 渦は蓮を“影の欠片”にしようとしてる!」


紬は胸の奥の響きを感じる。

「蓮の名前を……呼ばなきゃ!」


■紬が蓮の名前を呼ぶ

紬は蓮の手を握り、強く言った。

「蓮!」


蓮の胸の奥に光が灯る。

だが――弱い。


渦は蓮の名前を強く引っ張っていた。


紬はさらに強く叫んだ。

「蓮――!」


その瞬間、蓮の胸の奥が強く光った。

影の糸が一瞬だけ揺らぐ。


ユイが風で糸を乱し、真白が治癒の光で蓮を支え、ミナが糸を切り裂く。


紬は結びの輪を糸の中心に叩き込んだ。


黒い渦は大きく揺れ、影の欠片は形を失った。


■影の残滓はまだ消えない

蓮は息を整えながら言った。

「紬……ありがとう。名前の響きが戻った」


ユイは風を揺らしながら言った。

「でも……渦はまだ消えてない。影の残滓は街に散ってる」


真白は紬の手を握り、震える声で言った。

「紬ちゃん……影の欠片はまた生まれるかもしれないよ」


ミナは渦を見つめながら言った。

「影の原型は消えた。でも残滓は“名前の揺れ”に反応する。

街のどこかでまた揺れが起きれば、影の欠片が生まれる」


紬は胸の奥の響きを感じながら言った。

「影の残滓……全部集めて、止めなきゃ」


蓮は紬の手を握り返し、強く頷いた。

「紬、一緒にやろう。影の残滓を全部止める」


紬は蓮の瞳を見つめ、静かに頷いた。

「うん。絶対に」

あとがき(紬の日記)

影の残滓は蓮の名前を狙ってきた。

名前を呼んだ瞬間、胸の奥が強く光った。

影の欠片は形を失ったけれど、渦はまだ残っている。

影の残滓は街に散っている。

明日は残滓を集める方法を探す。

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