外に出る方法
「勇者!マスターにくっつかないでください!」
ミミがイライラした様子で怒鳴る。
もちろん俺に触れられるわけは無いので本当にくっついてるわけではなく、寄り添って座っている感じだ。
「なんでよ?」
「なんでって・・・マスターも早くそいつを殺してください」
「まあまあ、俺の同郷なんだから・・・」
怒っているミミをなだめる。
水まんじゅうは勇者から隠れるように俺の影にいる。
だが、俺は若干透けてるので勇者から丸見えだと思う。
「そういえば名前は?私は舞」
「俺は忍、こっちがダンジョンコアのミミ、そんでこのスライムが水まんじゅうだ」
「ねぇ、忍、私と一緒に旅をして?」
「なっ!」
『!?』
舞は俺よりずっと年下に見えるが呼び捨てをしてくる。
おそらく意味が無いので指摘しないが。
「そりゃ無理だ」
「どうして?」
「俺はダンジョンマスターだからな、ダンジョンを離れるわけにはいかない・・・それに俺は外の光を浴びたら消滅しちまうからな」
冗談っぽく言った俺の言葉を聞いて、ミミと水まんじゅうの間に流れていた緊張感がとける。
「忍が魔王だったらいいのに」
「魔王が誰かわからないのか?」
「うん・・・だから強い魔物をひたすら殺すの」
「なんで俺が魔王だったらいいんだ?」
「だってこんな平和ボケした魔王、倒す必要ないでしょ?」
「(おいおい、これでも俺は必死に魔物やってるんだぞ・・・)」
「さっきの忍の言葉で私怖くなっちゃった・・・」
舞の肩が小刻みに震えている。
「どうして?」
「私もね、最初は魔物を殺すの躊躇ったの・・・でもさっき気付いた、私誰かの命を奪うことに何も感じなくなってた・・・人として大切な何かをなくしちゃった気がする・・・」
「この世界では、そっちのほうがいいのかもな・・・」
「お願い!私と一緒に来て!一人じゃ怖いよ・・・」
「だから、無理だって、消滅しちゃうから」
「これ教えちゃっていいのかな・・・」
舞が悩むような表情を浮かべる。
「なに?」
「外に出る方法」
それは何としても教えていただきたい!
夜は冒険者ギルドがしまる関係で冒険者が来なくなる。
ということは夜に外に出られると言うことになる。
行動できる時間が夜だけならそこらの街に行くのが限界だろうが、せっかく異世界に来てそれすら出来ていない俺は胸が躍っていた。
ちなみにだが、月光でも体は消滅するらしい。
太陽の光を鏡のように反射したものなので同じ効果が出るのではないかと思う。
夜なら行動できるんじゃないかと淡い期待を抱いていた俺は、ミミにこの話を聞いたとき壁の中で一人泣いた。
「教えられない理由があるのか?」
「ないけど、教えたくないだけ・・・」
「なんで?」
「だって、これ教えちゃったら外で好きな女が出来るかもしれないでしょ?そんなの私許せないもん・・・忍は私のもの・・・」
「舞さん・・・目がマジなんですけど・・・」
何この子、恐ろしい。
「じゃあ、私ここに住む!いいでしょ?そしたら教えてあげる」
「「は?」」
『!?』
いやいや、勇者がダンジョンに住めるわけ無いでしょ?
何を言っているのかしら、この子は。
「許可できません!」
「どうして?だってマスターは忍でしょ?」
「いやでも、俺も許可できないぞ?だってダンジョンに来た冒険者ビックリするだろ?勇者が飯とか食ってたら」
「じゃあ、近くの街に住む!旅の合間に遊びに来る!それならいいでしょ?」
「それくらいなら・・・まあ」
ミミのほうをチラッと見ると、溜息をついて一度だけ頷いた。
「やった!じゃあ、教えてあげるね、外に出る方法・・・でもこれで女作ったら女も忍も殺すから・・・」
「こわいこわいこわい」
「怖くないよぉ・・・愛してるだけだもん」
そんなことを言う舞の笑顔にはどこか狂気が感じられる。
「それで?外に出る方法は?」
「鎧に憑依すればいいんだよ、まあ、鎧じゃなくても人形とか人型ならなんでもいいんだけど」
「憑依?どうやってやるんだ?知らないよ、私、幽霊じゃないし・・・それより約束の子作りを!」
「そんな約束はしてない」
ふへへ、と変態おやじのように笑う舞の頭をチョップする。
「ミミは知ってるか?憑依の仕方」
「私は憑依のプロフェッショナルです」
「ミミックも憑依なのか」
「はい、マイマスター」
そうして、俺の厳しい特訓の日々が始まった。




