水まんじゅう
絵も描いてみました。
4部にも絵を追加しました。
毎日毎日来る冒険者を殺し続ける日々。
彼らの存在はダンジョンの闇に喰われ、彼らの生きた証を形としてあらわすものは、ダンジョンの部屋に山積みにされた武器だけ。
俺は忘れるわけにはいかない。
俺だけは・・・彼らの命を奪った俺だけは忘れていいはずが無い。
「ミミ、部屋の編集をしたいんだが」
「はい、マイマスター」
まだ、階層を増やせるほどお金は貯まっていない。
だから、とりあえず部屋の拡張をする。
いま、たった一つだけあるこの狭い部屋を25メートル四方の正方形にする。
いろいろとカスタマイズが出来るようで、装飾アイテムなんかもある。
この世界に存在するダンジョンが、実はダンジョンマスターが装飾を考えていると思うと笑ってしまう。
そうして作った部屋は、地面は土で中心に石のレンガを敷いて作った道が通っている。
土には装飾アイテムの墓石が綺麗に並べられている。
ダンジョンの装飾アイテムなのでピカピカに磨かれたようなものではなく、ざらざらの石で所々崩れていたりするがまあ仕方ない。
部屋の一番奥は3段高くなっており俺の棺桶がある。
墓に冒険者達の武器を刺して完成だ。
「ふっふっふっ・・・雰囲気も悪くない、俺のセンスが怖いぜ」
「残り金貨27枚ですがどうなさいますか?」
「それは残しといてくれ、そのうち階層も追加したいから」
「はい、マイマスター」
階層を追加するには金貨が300枚必要だ。
ちなみに一応銀貨や銅貨も存在するが、ダンジョンのアイテムを購入するさいについてはまったく必要ない。
ならば、いつ使うのかというと魔物用の装備やご飯に使うみたいだ。
実際ミミもたまに生肉を食べている。
俺はアンデッドだから、食べる必要が無い・・・というか食べれない。
もし、チーズケーキが存在していたならこの体質を憎むだろうが、存在するかわからない今の状態ではそんなことも無い。
「マスター、誰か来ます」
「冒険者か?」
「いえ・・・あれはスライムですね」
「は?え?魔物って外にもいるの?」
「はい、マイマスター」
「そうなんだ・・・」
てっきりダンジョン内だけのものかと思っていた。
というか俺のダンジョンに来てるのか?
「何をしに来ているんだ?」
「おそらく、このダンジョンに住みたいのではないかと思われます」
「そうなのか・・・」
「ダンジョン内は魔物にとって居心地がいいですから」
なるほど。
買わなくても外から来てくれるんだったらとてもありがたい。
「来ました、マイマスター」
「ほんとだ」
野生のスライムが現れた。
ぽよよん、ぽよよんとそのゼリー状の体を揺らしながらやってくる。
見た目は、青い水滴のような重力に従った楕円形で、中に赤い球体が浮かんでいる。
燭台の蝋燭の光を反射しててらてらと輝いている。
「(可愛いな、こいつ)」
ころころと転がったり飛び跳ねたりして必死に何かを伝えようとしている。
そして、最終的にぐで~んと自分の体を溶かして文字を書く作戦に出た。
『ここに住みたいで・・・』
若干足りなくて、必死に体を伸ばして『す』を作ろうとしている辺りがどうしようもなく可愛い。
「いいぞ」
俺の言葉を聞いてスライムは嬉しそうに跳ねている。
そして、俺の足元を走り回ったり、俺の脚に体をスリスリしている。
「お前、名前はあるのか?」
スライムは左右にコロコロと転がっている。
おそらく否定の意味だろう。
「じゃあ・・・」
「待ってください、まさかスライムに名前をつけるおつもりなんですか?」
「え?そうだけど」
「魔物に名前をつけるというのは、その魔物をネームドにするということです」
「ネームド?ミミはネームドなのか?」
「私はコアであり、すでに魔物ではなくなっていますので関係ないです・・・いいですか、ネームドと言うのはとても強力な魔物です」
「じゃあ、どんどんネームドにしたほうが・・・」
「ですがネームドにする際に、名付け親にはとても大きな負荷がかかります、なのでそう簡単に名前をつけないでください」
「でも、今はこのスライムしかいないから大丈夫だって・・・ようは一気にたくさんの魔物に名前をつけるのが危ないんだろ?」
「わかりました、マイマスター」
ミミが渋々といった形で承諾する。
「じゃあ、お前は・・・水まんじゅう・・・水まんじゅうにしよう!」
急に体がだるくなった。
ミミの言っていたのはこれか・・・。
でも、まあ、耐えられないほどじゃないな。
こちとら脇腹ナイフで刺されたことも、日光でつま先が消えたこともあるんだぞ。
「水まんじゅう、検索・・・該当、なし・・・水まんじゅうとはなんでしょうか」
「そういうお菓子があるんだ」
「なるほど、お菓子ですね・・・水まんじゅうを記録しました、マスターは私の知らないことをたくさん知ってます」
「まあ、いろいろあってな」
異世界から来たんだ、などと軽々しく言うものではないだろう。
「ちーっす」
サンドラがまるで居酒屋に来た常連のおっさんのように片手を上げて入ってくる。
「おう、サンドラ、もう10日か・・・」
『!』
スライムは戦闘の構えをとっている。
「うわっ!スライム!」
サンドラは水まんじゅうのタックルを間一髪でかわす。
スライムは軟らかいからあんまりダメージなさそうだが。
「水まんじゅう!そいつは敵じゃない、協力者のサンドラだ」
スライムは戦闘の構えをといた。
サンドラにペコペコと謝っている。
「びっくりした・・・・・・私前から思ってたんだけど・・・スライムって何でこんな可愛いんだ」
サンドラが「うい、うい」とスライムをつついている。
「ああ、確かに可愛いな・・・それもいいが報告をしてくれ」
「ああ!気をつけたほうがいい・・・うちの街に勇者が来た、それも最近ここで冒険者が死にまくってるのを気にかけてた・・・つぶしに来るかもしれないぞ」
「勇者!?ミミ、まずいんじゃないか?」
「・・・まずいです、マイマスター」
勇者ってあの?
魔王を倒すために旅をする正義の勇者様?
それを倒すのはさすがに・・・。
そもそも、めちゃめちゃ強いんだろうな・・・。
倒せないんじゃ?
ゲームオーバー・・・?
「壁に埋まって留守を装うってのは・・・」
「無しです」
「ですよね・・・」
ダンジョンマスターが留守なんてあるわけないもんな・・・ばれるよな。
「どうすればいいんだぁ!」
ご意見・ご感想お待ちしてます。




