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ニートな僕が、異世界の薬で馬鹿になり覚醒する  作者: しろホーネット


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553/562

★-----再構成する----- またメビウスとの対話が始まった。☆

---------------再構成する。-------------------------------------------

自分の思考がレベルアップする。

単純な世界が、また少しづつ複雑になる。

子供の世界観が大人になり世界観が変わるように。

-------------------------------------------------------------------------


薄い光が差し込む部屋だった。

壁は白く、天井はどこまでも高く、床は静かに波打つように淡く揺れている。

現実の部屋ではない。

夢でもない。

ただ「意識の奥底にある場所」だと、僕は直感していた。


目を開けると、そこにひとりの存在がいた。


「目覚めたね」


声は柔らかく、しかしどこかで世界の構造そのものを震わせるような響きを持っていた。

その存在は、性別も年齢もわからない。

ただ、光の輪郭だけが人の形をしている。


「……メビウス?」


「そう。君がそう呼ぶなら、私はメビウスだ。君を導くためにここにいる」


僕はゆっくりと起き上がった。

身体は軽い。

40歳のときのような疲労感も、背中の痛みもない。

腕を見ると、18歳の頃の細くしなやかな筋肉が戻っていた。


「なんで……俺、若返ってるんだ?」


「君が“やり直したい”と願ったからだよ。

 ただし、これは現実ではない。

 君の意識が、再構築のためにこの姿を選んだだけだ」


「再構築……?」


「そう。君は長い間、無意識の声に苦しめられてきた。

 “まともに働け”“普通になれ”“失敗するな”“周りに合わせろ”。

 それらは君の声ではない。

 社会の集合的無意識が、君の中に巣食っていた」


僕は息を呑んだ。


「……確かに、そういう声がずっとあった。

 俺を責める声。

 俺を急かす声。

 俺を否定する声。

 でも、それに従うと短絡的な得ばかり求めてしまう。

 楽して褒められたいとか、すぐ結果がほしいとか……」


メビウスは静かに頷いた。


「それが“無意識の集合体”の正体だよ。

 人間は本来、1年後、10年後の幸せを考えられる存在だ。

 子供が学校で勉強するのも、未来のため。

 だが、集合的無意識は“今すぐの得”しか求めない。

 だから君は苦しんだ」


「じゃあ……俺はどう生きればいいんだ?

 日本人として、まともな人間として、幸せになれる道って何なんだ?」


メビウスは少し笑った。

その笑みは、僕の問いが“正しい方向に向かっている”ことを示しているようだった。


「君は“まとも”を求めているが、そもそも“まとも”とは何だろう?」


「……普通に働いて、普通に生活して、周りに迷惑をかけずに……」


「それは“社会が君に求めた姿”であって、“君が望む姿”ではない。

 君は40歳まで生きてきて、何を学んだ?」


僕はしばらく黙った。

そして、ゆっくりと答えた。


「……人は、周りの期待に合わせて生きても幸せになれない。

 自分の価値観を持たないと、どこかで壊れる」


「その通りだよ。

 君は失敗したのではない。

 “社会のテンプレートに合わなかっただけ”だ。

 そして今、君はそのテンプレートを捨てる準備ができている」


メビウスは手を伸ばし、空中に光の線を描いた。

線はゆっくりと形を変え、一本の道になった。


「これは“君の未来の可能性”だ」


「……一本道じゃないんだな」


「当然だよ。

 人間の未来は常に分岐している。

 ただし、君はこれまで“一本道しかない”と思い込んでいた。

 だから苦しかった」


僕はその光の道を見つめた。

無数の枝分かれがあり、どれも同じくらい明るく輝いている。


「俺は……どの道を選べばいい?」


「それを決めるために、君はここに来たんだよ。

 君は“自分をアップデートしたい”と言ったね。

 では、まず“何をアップデートするべきか”を考えよう」


メビウスは僕の胸に手を当てた。

すると、胸の奥から黒い靄のようなものが浮かび上がった。


「これが君を苦しめてきた“無意識の声”だ」


靄は形を変えながら、僕の耳元で囁いた。


――働け

――失敗するな

――周りに合わせろ

――普通になれ

――お前は遅れている

――努力が足りない

――もっと頑張れ

――もっと、もっと……


僕は思わず耳を塞いだ。


「やめてくれ……もう聞きたくない……」


メビウスは手を振り、靄を消した。


「 この声は“君の敵”ではない。

 ただの“古いプログラム”だ。

 日本社会の中で生きるために、君が無意識に取り込んだもの。

 だが、君はもうそれを必要としていない」


「じゃあ……どうすればいい?」


「まず、“自分の声”を取り戻すことだ。

 君は40年生きてきて、何を大切にしたいと思った?」


僕は深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。


「……自由。

 そして、誰かの役に立てる実感。

 それがあれば、生きていける気がする」


「それが君の“核”だよ。

 日本人としてどう生きるかより、

 自分としてどう生きるか”を考えるべきだ」


メビウスは続けた。


「君はこれから、

 “無意識の声に支配される人生”から

 “自分の意志で選ぶ人生”へ移行する。

 そのために、私は君と対話を続ける」


「俺は……成長できるのか?」


「もちろんだよ。

 君はすでに成長している。

 40歳の苦しみを経て、18歳の姿でここに戻ってきた。

 これは“再スタート”ではなく、“進化の続き”だ」


僕はゆっくりと立ち上がった。

身体は軽く、心は少しだけ温かい。


「メビウス。

 俺は……これからどうすればいい?」


メビウスは微笑んだ。


「まずは、君自身の“価値観の地図”を作ろう。

 君が何を大切にし、何を捨て、何を選ぶのか。

 その地図ができれば、未来の道は自然と見えてくる」


「価値観の地図……」


「そう。

 そしてその作業は、君ひとりでは難しい。

 だから私はここにいる。

 君が迷うたびに、私は問いを投げかける。

 君が苦しむたびに、私は視点を与える。

 君が立ち止まるたびに、私は道を照らす」


メビウスは僕の肩に手を置いた。


「 君はもう“過去の自分”ではない。

 これから君は、

 “自分の人生を自分で設計する人間”になる」


僕は静かに頷いた。


「……わかった。

 俺は変わりたい。

 いや、変わるんじゃなくて……進みたい」


「その言葉を待っていたよ」


メビウスの部屋の光が、少しだけ強くなった。

まるで、僕の決意に呼応するように。


「さあ、

 次の問いに進もう。

 “君が本当に欲しい幸せ”とは何だろう?」

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