北の海から花よ来い
今日の登場人物
末永椛「脳筋なので難しいことはわからない。」
角田桂「食材などに関してはめっぽう強いです。」
蘇我聖奈「いつも頑張るお母さんはたまに意地悪をしてみたくなったり……。」
7月の9日、右側の仲間。
今日も日が暮れて一日の終わりを迎えようとしている逢魔時。
夕餉は何人分用意すればいいのでしょうと冷蔵庫に貼り付けている予定表を見つめる。
今宵は椛と桂が来てくれるみたいで内心私は安堵したことでしょう。
良くも悪くも私の娘たちは巣立って隣の大陸に今は居ます。
なので私は一人のときが多く、本音を言うと寂しいのですから、こうやって誰かが来てくれることに感謝をしているのです。
「おっつー、母さん!! 来たぜぃ!!」
「うっす……。」
大切な息子達、食べ盛りでいつも笑顔で美味しいと言ってくれて……貧しい我が家ですがご飯などいくら食べさせても痛くないもの。
「今日は……何だろな?」
椛が献立を眺めていますがたまには意地悪したって構いませんよね。
普段は私が言いくるめられるのですから。
「魚だなー。 うーん、俺に似た魚だ。 木偏に花でモミジ。 じゃあ木偏に花でなんだろな?」
献立を手にとって悩むその顔は試しがいがありますね。
たまには頭の体操を楽しんで。
「俺の方は魚編に土が2つ……これは簡単だ。 サケだな。」
桂の方は難なく読めてしまいましたね。
まぁ、難しくはありませんしそもそも料亭に勤めるもの……これくらい造作もないのでしょう。
さて、数十秒が経過しましたが椛は一向にわからない様子です。
そのまま固まってしまいました。
「なんだコレ、こんな魚いんのかよ? 見たことも聞いたことも食ったこともないぜ。」
「いや、見たり聞いたり、それに食ったことはあるし。」
桂はそう突っ込みを入れるのであれば読めているみたいですね。
さすがこの手の問題には強い。
「なぁ、ヒント教えてくれよ。」
困った顔で私と桂に懇願する。
いい表情も見れたので答え合わせしても別にいいのですが。
「いいか? 【ほ】で始まる魚だぞ!!」
もう頭文字を言えるあたり確定で桂は正解ですね。
「ホンソメワケベラだっ!! そうだろうな?」
「なんでそんなマイナーなモン出てくんだよ。 ていうか食ったことあんのかよ。」
さすがに呆けて出した答えなのかよくわかりません。
「正解はな、ホッケなんだよ。」
「はぁ〜? ほっけぇ? 嘘だろ? どこをどう見たら魚に花なんだよ。」
どうにも納得いかないようですので、写真見せてあげることにしましょう。
こうなることは想定内でしたので。
「ほっけの幼魚は色鮮で群れで行動すると花のように美しいのです。 北方で穫れる魚……北方花、北花……そして訛ってほっけとなったと言われています。 諸説ありますが。」
「青色でキレーだなぁ。 納得したわ。」
満足してくれたようで何よりです。
では私達も始めましょう……夕餉は皆で作ります。
食卓に桂と椛が咲き誇る。
魚を食べると頭が良くなります。




