彼女の心
予定だった他のヒロインの登場は少し先になってしまいました。
期待していた人達は申し訳ございません。
「なあ。光最近さ怖いよなぁ」
「ああ。通り魔の事?」
健太が話題にした話。それは最近になって発生した通り魔事件だ。被害は大きくニュースでも取り上げられる程である。
「でも、俺狙われるんじゃないかと思っているんだよ」
「どうして?」
「だってよ。被害に逢った人達は皆魔力が高い奴なんだぜ」
健太の言うことに一理あった。襲われている人達は全員というわけではなかったが持っていた魔力が高い人が多かった。
「でも、さすがにお前が狙われるってわけじゃないだろ」
「でもよ。魔法院でも警戒のために警備を増強するって話を聞いたぜ」
「ああ。確かに」
光も朝に校舎の前にいた警備員を思い出した。
「でもあれって、魔法華族の生徒のために動いた人達じゃなかったっけ?」
「それでもよ。まったく権力者の考えってのはわかんねえな」
(まあ、自分の子供が狙われると思えばそうすると思うけどなあ。やれない人達も)
「お前は、いいよな。魔力がまったくなくて」
「いや。あるから」
「ランクもつけられない程の量だろ」
最近になって光は魔力が出た(?)事になっている。しかし、量は少な過ぎて前とまったく変わらないものだ。
「こういう時だけ羨ましく思うぜ」
「なんか複雑」
「ま、いいじゃないか。狙われないってことで」
光は溜め息を吐いた。
放課後の帰り道。
『マスターも、気をつけてくださいね』
頭の中に少女の声が響く。
『大丈夫だよ。今の僕が狙われることはないんでしょう』
『そうですが』
それでも心配する声が響く。
『僕は、大丈夫だよ。例え来ても逃げ切る自信はあるよ。君が一番わかっているでしょ。シャイニー』
シャイニー。その名は今光と会話している彼女の名前。光のロッドの名前でもある。
『そうですが』
『それよりも早く帰って鍛練しないと』
『そうですね。そうしましょう』
シャイニーは明るい声で答えた。
光は自分の部屋への帰りを急いだ。
とある場所。街の通り。
「こちら、遭遇!被害が大きい!しっ、至急応援を!」
隊員は叫ぶ。
周囲では激しい戦闘があったのか何人かが倒れて負傷していた。そしてそこに隊員達が囲むようにしてそれに対して警戒をしていた。
隊員の一人がロッドを構え相手を見る。しかし、ロッドを持つ手は震えていた。
これまで様々な事件で彼は違法な魔法師と戦い、異形となった怪物の処理にも携わってきた。しかし、今回の相手はその経験すら越えるものだった。
「く、くらえ!」
ロッドから魔法弾を放った。しかし、それが当たる事はなかった。
それは当たる寸前に消えた。
「ば、ばかな!」
隊員は唖然としたが直ぐに新たな弾を放つ。しかし結果は同じであった。
「な、なんなんだ。こいつは」
目の前の存在に隊員は呟く。
その言葉を最後に隊員の意識は消えた。
「順調か」
隊員がそれにやられる映像を眺める。
「はい~。さすがは、本職の隊員ですよ。お陰様であれはすばらしい結果になりそうです」
「調子に乗るな。我々の目的は」
「わかっていますよ~。そのために彼らにぶつけたんですから~」
白衣の男は小さく笑う。
「今夜ぶつけますよ~今夜!」
「ならば、早々に準備をしろ」
それだけ言うと男はその場を後にした。
一人だけとなった白衣の男はキーボードを打ちながらぶつぶつと喋っていた。その言葉は、まるで呪詛のようであった。
「さて~さて~。今夜は、楽しんでくださいよ~。何千年ぶりの戦闘なんですから」
意味深い言葉を呟く彼の顔を画面の明かりが不気味に照らしていた。
「マスター。意識を集中してください」
光は彼女の言われた通りに集中して自分の中にある魔力に意識をむける。
光達は現在誰もいない公園で魔力操作の練習をしていた。しかし、これまで光は彼女に会うまでに無駄でも訓練してきたためか想像以上の早さで上達していた。
「マスター。もう少し魔力を上げられませんか?」
「駄目だね。これ以上は引き出せないよ」
「今のマスターの魔力ですとBより下でCよりちょこっと上というレベルです」
「それでも、凄いと思うよ」
魔力がまったくない頃に比べればえらい違いだ。
「マスターの潜在魔力を考えればこの結果は良くありません」
納得がいかない、とシャイニーは不満な表情をした。
「僕の魔力ってシャイニーが計測してどれくらいなの?」
「私が見る限りではAは軽く越えると出ています」
「信じられないよ。そんなの」
自分の魔力が本当はAランクは以上ある。実感が湧かなかった。ただでさえ魔力が発現して間もない。光にとっては十分な程だった。
「ねえ。シャイニー。聞きたいんだけど?」
「はい?なんでしょうか?マスター?」
「君は、もしかして僕に失望している?」
突然の問いの内容にシャイニーは驚いた。
「なんで急にそんな事を」
「いやさ。僕を教えているシャイニーがどこか焦っているようだからさ」
シャイニーは暫く俯いていたが顔を光にむけた。
「はい。そのとおりです。マスター。でも私は、マスターにはまったく失望なんてしていません!」
必死の表情からはそれが嘘ではないことが伝わってくる。
「ですが、私は、マスターの魔法院での生活を見ていて辛かったです」
シャイニーは、揉め事が起きないために光の寮で留守番をしている。しかしシャイニーは光をかいして魔法院での光の様子を見ることができた。そのため魔法院での光の立場というのをシャイニーはこれまでの生活で十分知っていた。
「もしかして僕の魔力を引き出すのは」
「はい。魔力のランクで見る生徒達ならマスターの魔力が上がれば少しは」
弱々しくシャイニーは答える。
光はシャイニーの自分を成長させる理由に申し訳ない、と思った。
まだほんの少しだけだが自分のために頑張ろうとしている彼女。自分はそれに気づけなかった。
(恥ずかしい話だな)
光はシャイニーの頭に優しく手を置いた。
「マスター?」
「ごめん。シャイニーがそんなことを考えいてくれたなんて僕、全然知らなかった」
自分のために頑張ってくれる彼女。自分は気づいてあげれただろうか。
光は改めて自分は未熟だと思った。
「シャイニーの気持ちに僕は答えられるかわからない。けど、答えられるように頑張ってみるよ」
光は決意した。
そんな光を見ていたシャイニーは「はい!私も頑張ります!」と笑顔で答えた。




