実技授業と不穏な行い
「しかし、朝のあれは、何だったんだろう?」
今朝の事を振り返り呟く。
光の言う〝あれ〟とは今朝見たビジョンと頭痛の事だ。
しかし、あの後はそんな事が無かったように普通に登校をして授業を受けれていた。
(もしかして、自分が無力だから無意識に幻覚を見るようになってしまったのかも)
しかし慌ててそんな考えを消す。
現実逃避うんねん、光は不思議でならなかった。
「まあ、考えてもしょうがないか」
光は考えるのを止めた。
そして、教室にある時計を見て時間を確認した。
「さて、次は実技だったかな」
「そうだぜ」
光の疑問に健太は答える。
「そうか。じゃあ行こうかな」
「おう、急ごうぜ」
二人はそう言って教室を後にした。
実技の授業を実施する体育館にはすでに多くの生徒が来ていた。
「本当に沢山いるなあ」
「何いちいちぼやいているんだよ」
健太は光の毎度の台詞に苦笑する。しかし、無理ないか、と内心では光の気持ちを理解していた。
実技に関しては他クラスとの進行であるために多くいる。そして、実技の相手も他クラスの生徒とやる事が多い。
「俺、誰とだろう」
「お前の場合、誰とあたっても難儀だよな」
「言わないでほしいなそれは」
光は力なく言う。
魔力が〝ない〟という光にとっては相手が誰であれ厄介なのであった。
それから暫くして授業は始まった。
「それでは、今日も実戦を意識した模擬戦をやってもらいます。使っていいのは中級クラスの魔力で構成された魔法だけです」
先生からの説明があり、生徒はそれぞれ自分の定位置へと移動していった。
光が定位置へ移動すると。
「何だよ。今日は、無能とやるのか?」
人を見下す物言いを光にかけてきた。
相手は、他のクラスの男子生徒であった。
(いつもの事だけど、本当に)
光は面に出さないように相手を見る。
相手は光の事を見下す気満々の表情を浮かべていた。
「おい、何か言ったらどうだ」
「あ、いえ。で、何でしょうか?」
「へ、ビビっているのか、だせえな。本当、まあ、いいや。俺の魔法攻撃の〝的〟になってもらえればいいや」
見下す目で光を見てそう呟く。
そして、その時、開始の合図が鳴った。
「くらいなあ!」
その瞬間、光に魔法弾が飛んできた。
光はそれを体を少しずらして回避した。
しかし、彼は、自らのロッドを出すと新たな攻撃を開始した。今度は、魔法弾だけではなくロッドから放ったカッター状の魔法攻撃を織り混ぜた攻撃を仕掛けてきた。
「おら!おら!」
彼は、光が攻めてこない事をいいことに攻撃をする。余裕の笑みを浮かべて光を攻撃し続けた。しかし、数分後になると余裕の笑みが崩れ始めていた。
「くそっ!なんであたんねぇんだよ!」
そして、怒気を露に叫んでいた。
男子生徒の視線の先には自分の攻撃を糸も容易く避ける光の姿があった。
(何とか、て所かな)
相手の攻撃を避けながら光は自分の今の状態を分析していた。
光は、この戦闘が始まってから一度も相手に対して攻撃をしていなかった。しかし、そのかわりに光は相手の攻撃を全て避けるようにしていた。
魔法を放つ事ができない。例えできたとしても攻撃にすらならない。
(神無月さんの家で修行をし始めたけど、ここまで上手くいくなんて、)
光は、自分の事を厳しく分析するとともに自分の上達ぶりに驚かされていた。
その後も、光は、相手の攻撃を避けつづけた。時間内で全ての攻撃を避けて無傷で授業を終わらせた。
「やっと終わった」
「御疲れ」
「でも、いつも辛いよ。この授業だけは」
「よく言うよ。日に日に攻撃を受ける回数が減少していって、今日はついに無傷ときたものだ。正直、化物だよ。光は」
「そんな言い方はないだろ。化物って」
大げさだな、と思った。
「いいや。この際だから言うが魔力ゼロと出ている人間が魔法師の攻撃を全て身体能力だけで避けるって事は一般的に見て異常なんだよ」
「そうか?」
「そうだ。俺だって身体強化の魔法を使っているんだぜ」
実感の湧かない光は、ふぅーんとしか思わなかった。
「?」
その時、光は、自分に対して一方的に敵意を向ける視線を感じた。気づかない風を装いながら視線の先をこっそり見るとさっきまで相手をしていた男子生徒がいた。そして、友人なのか何人かとこっちを見ながら話をしていた。
「どうした?」
「いや、放課後は忙しくなりそうだな、と思って」
健太は光の言葉の意味が理解できず首をかしげた。
放課後。
皆が帰る仕度をして教室を出て、校舎を後にする中、光は、校舎の裏側に連れ込まれていた。
無論、相手は今日、光が相手をした男子生徒であった。しかし、授業とは違うのは彼を含めてもう二、三人いるという事だ。
「何で呼ばれたか理解できてんだよなぁ」
「いえ、何故なんですか?」
「分かってねぇのか。こいつはバカだな、ほんと」
男子生徒は相変わらず見下す目付きで光を見てニヤニヤと笑っている。そして、彼は、予想外の言葉を口にしたのであった。
「俺と〝決闘〟しようぜ。無能」




