新たな生活3
一人の女性の登場に光と香苗は緊張した。
「そんなに固くならなくてもいいわ」
毅然としているがどこか柔らかさを含んだ声でその女性は言う。
「と、言われましても」
光は苦笑しながら言う。
「もう、相変わらずね。香苗の気持ちが
解るわ」
ため息をつく。
「お母さん。それ、どういう意味?」
香苗はその女性に食って掛かった。
すると、香苗にお母さんと言われた彼女は香苗の方に近づき顔を香苗の耳元に近づけた。
「残念ね。香苗って呼ばれなくて」
耳元で囁いた。
その瞬間。香苗の頬はより紅潮した。
「な、ななな、何言ってるのよ!」
「頑張りなさい。香苗、応援しているから」
「ななな、何の応援よ!」
再び、慌てふためく香苗。そんな姿に彼女の母は笑って見るのであった。
「あの。そろそろいいですか?伊三美さん?」
「あ、ご免なさい。光君」
そう謝罪する。
神無月 伊三美。神無月家の当主であり、香苗の母親でもあり、光の後見人になって人でもある。
「さあ、改めて、いらっしゃい。光君」
伊三美は、光に屈託ない笑顔を向ける。
「は、はい、お邪魔させていただいています」
光も律儀に返した。
「いいのよ!そんな畏まらなくても!」
伊三美は、苦笑しながら言う。
しかし、これまでの世話を考えると光は無意識に畏まってしまうのであった。
「さて、始めますか。光君、着替えてきて。そしたら始めるから」
「はい、わかりました」
光は、荷物を持つと着替える場所へと向かった。
光が着替えて戻ってくると二人が既に胴着姿で待っていた。
「それでは、始めましょう」
伊佐美の言葉に光と香苗は頷く。
二人の表情はさっきまでと違い真剣になっている。
光と伊佐美は向かい合った。
両者共、構える。
二人のいる空間にははりつめた空気が広がっていた。




