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11/20。加筆と修正をしました。
周囲が状況に困惑する中、光は、静かに風戸を見据えていた。
(ここまでは大丈夫。けど、ここからが問題だ)
周囲から見て、光は落ち着いているように見えていた。
しかし光の心情は不安でいっぱいであった。
観戦している人達から見れば光が善戦しているように見えているだろうが必ずしもそうではない。その理由は、光が魔力をまったく持っていなく、身体一つで闘っているからだ。そのため、風戸との闘いでは、無駄に体力を使わないようにほとんどの攻撃を避けたり、攻撃も最低限の事しかしていなかった。
光は、内心では、潮時だ、と思っていた。
通常、体力と魔力は比例する。
魔力が高ければ高いほど、体力も同じく高いのだ。
光と風戸とでは体力に決定的に差があるのだ。
「覚悟してください。偽者」
もはや、光を偽者と呼称した風戸は右手に刀を持ち、左手には魔法陣を展開している。
光も覚悟を決め、身構える。
しかし、今度のは今までの構えとは違っていた。
左足を前に出し、腰を下げた構えをとっていた。人から見たらさっきまでの構えの逆だと思うであろう構えであった。
「終わりです」
風戸がが一気に接近してくる。
そして、右手に持つ刀を袈裟懸けに振るう。
その時に光は、動いた。
刀が振るわれたのと同時に光は左足を軸に半時計回りの回し蹴りを叩き込んだ。
光が扱う攻撃系の技、名付けて〝月花〟である。
蹴りは、風戸の顔に直撃し、風戸を数メートル飛んだ。
しかし、風戸は左手に展開していた魔法陣から風の球を放った。
光は、自分の腹に衝撃が走るのを感じた。そして、風戸と同じように吹き飛んだ。しかし、光の場合は、魔法であったため蹴りとは違い威力が高く体へのダメージは風戸
よりも高かった。
「ぐはぁ!」
光は、腹に喰らった衝撃で後方まで飛ばされた後、その場で荒い息を吐いた。しかし、息というよりも咳き込むといった方が正しかった。
しかし、すぐに起き上がり風戸の方へ構えた。
風戸の方もちょうど起き上がり構えているところであった。
そして、光からは遠くて見えなかったが何かを口走っているのを感じた。
次の瞬間。風戸の左右に竜巻が出現した。
「喰らえ!風流の陣」
風戸がそう叫ぶと二つの竜巻は光に向かってきた。
光は自分の全開とも言える速さで竜巻がぶつかる寸前に移動した。
しかし、竜巻は誘導ミサイルの如く光を追い掛けてくる。
「さあ、逃げるんです!逃げるんですよ!いつもまでもちますかな!」
風戸の声が闘技場に響く。
完全に光で遊んでいた。
そして、観戦していた生徒の中からは風戸を応援したりといった声が高まってきた。
「まずい、このままだと」
光がそう呟いた時、光は風戸の方を見てある事に気づいた。
(もしかしたら)
意を決して地を蹴った。
光は竜巻から上手く逃げながら風戸の方へと近づいていく。
風戸はその意図に気づいていないのか、光を嘲笑うかのように竜巻を操作していた。
そして、光はじょじょに近づいていく。
もう少し、もう少し。
光はついに風戸との距離を数メートルにまでにする事ができた。
風戸はようやく光の意図に気づいたのか慌てて竜巻の移動速度を上げようとした。
しかし、光は遅い、と内心で呟き。一気に風戸の間合いに入った。
そして、驚いている風戸に向かって蹴りを二発、叩き込んだ。
光は、蹴り技〝月花〟を風戸の両手に叩き込んだ。
喰らった風戸は苦悶の表情を浮かべる。しかし、直ぐ様、後方に下がって両手に治癒魔法を掛ける。そして、すぐに光にむかって竜巻をぶつけようとした。
「くそっ!」
苦虫を噛んだ表情を浮かべた。
なぜなら、風戸の目の前には光を追尾していたはずの竜巻が消えていたからだ。
「あなたの竜巻は、手による操作。そして、あなたの意識。それにちょっとした阻害をすれば消える」
「く」
言い返す事ができなかった。それは光の言葉が正解だということを示していた。
これまでの相手に対して風戸は余裕だった。そんな妨害などさせないほどに相手を倒してきたのだ。そして、相手は魔力がない光。そんな相手なら楽勝だとたかをくくっていた。
しかし、結果はご覧の有り様。竜巻は消え、自分は何度も蹴りを受けた。
こんな偽物ごときに。
彼の心は怒りに満ちていた。
それは自分が癒世家に連なる者としての誇りと自分の持つプライド、そして、今日のシナリオが崩れてきた事によるものだった。
そして、風戸は動いた。
光は迎え撃つために構えた。
制限時間切れのアラームが鳴った。
タイムアウトとなり決闘は延期となった。
風戸と光はそれぞれの控え室へと戻っていくのだった。
控え室に向かう途中、風戸はウィンドウを開き、電話機能を使用して画面に出た相手と会話した。
数秒間会話した後。
「では、頼みますよ」
回線を切った。
切った後の風戸の表情は誰にも見せたことがないほど暗い笑みを浮かべているのだった。




