決闘
11/24。加筆しました。
両者が決闘場に現れると、観客席からは歓声があがった。
しかし、光に対して発せられる言葉は侮蔑や悪態をつく言葉ばかりだった。
歓声の方はむしろ風戸に向けられるものだった。
「さっさと負けちまいやがれ!」
「やられろ!偽者やろう!」、といった具合であった。
対して
「風戸!偽者をやっつけろ!」
「癒世家を誇りを守れ!」
風戸にはこう言った言葉が掛けられている。
そんな言葉をぶつけられながらも光は決闘の場へと進んでいく。
目の前に堂々と構えた風戸がいた。
風戸は、光の姿を見ると勝ち誇ったように笑っていた。
「よく逃げませんでしたね。誉めてあげます」
「今、学校を辞めるわけにはいかないので」
「ふ、あなたような人は、この魔法院には、相応しくありません。私があなたに引導を渡します」
そう言うと風戸は、自分の腰に差していた刀を抜き、自分の手首にある腕輪型のロッドに魔力を注ぎはじめた。
「我に宿りし加護の力よ。今こそ、風となりて我の加護と力を示したまえ」
言葉とともに、風戸の姿は学生から魔法師の姿へと変わった。
その姿の登場に観客席からの観客は、一気にあがった。
風戸の魔装束は、茜に似ているがこちらの方は、高貴な侍に近かった。
風戸の全身から魔力が放たれる。
「さて、始めますか」
刀を構えて光に告げる。
(やってみるか・・。出来る限りのことを・・・)
決意すると光は、無言で、構えをとった。
「両者、はじめっ!」
審判員の声があがった。
しかしその時には、光の目の前に風戸がいた。
(速いっ!?)
驚愕の表情を浮かべる光に。
「一瞬で、終わらせる!」
冷然と告げる風戸が刀を右切り上げ振るった。
勝負はこれで終わったと風戸は確信していた。
一気に懐へと高速移動して踏み込みと同時に切り上げる。
癒世家で習う基本的な戦法だ。
風戸はこの戦法を使い、これまでの決闘を制してきた。
今回もこれで貰った。と思った。
しかし、その刃は光に当たる事はなかった。
光は、ギリギリの所を後方に跳んで刃を避けたからだ。
「っ!?」
光が着ている防護服を切り裂かれる。
「何っ!?」
その光景に風戸は驚愕した。
そして、風戸だけでなくそれを観戦していた生徒達も驚き、声をあげる者は一人もいなかった。
二人を除いては。
「さすがだな」
「うん」
茜と明里の姉妹である。
しかし、二人も、光の実力を知ってはいたがそれでも二人の顔は驚いていた。
((やっぱり。すごい))
「成る程、だてに、この学校に入っただけは、ありますね。しかし、運もここまでです」
「運?」
「ええ、さっきは、私の攻撃とあなたの咄嗟の行動がタイミング良く合わさったから避けられたんです」
光は、風戸の言っていることに困惑した。
今のが、運って、何を言っているんだ。
確かに風戸の一撃は、素早く、凄まじいものだった。
しかし、光から見たら〝避けられない一撃〟ではなかった。そのため、光は避ける事ができたのであった。
光は、風戸の言葉を無視して構えをとった。
その対応に不服と思ったのか風戸は、再び、刀による攻撃を仕掛けてきた。
しかし、その攻撃は再び、光に避けられてしまった。
風戸は、余計に驚愕し困惑していた。
(ばかなっ、私の攻撃をことごとく避けるだと!?この私の攻撃を!?)
光は、風戸の攻撃を全て避けた後、後方に下がった。
(ここまでは、順調)
自分に言い聞かせるように光は自分を落ち着かせる。
(落ち着け、落ち着くんだ・・・)
軽くその場で深呼吸。
そんな両者を余所に、今まで風戸に声援を送ったり、光の戦いで静まり返っていた観客席から歓声とは別の声が響き始めてきていた。
「おい、あの、偽者、風戸さんの攻撃、全て避けたよな」
「バカッ!まぐれだろ。まぐれ」
「なんなんだ?あの偽者」
「嘘よ!こんなの!?」
観客席の生徒達の口から目の前の戦闘に困惑し驚いて目を疑っていた。
それは風戸と同じ反応であった。しかし、観客席の生徒達よりも直に闘っている風戸の方がその事実に何倍も困惑し、驚いていた。
「あなた、一体、何を」
「・・・・・・・」
光は、ただ、無言で構えをとる。
「このっ、偽者のくせにっ!」
風戸の口から光への悪態の言葉が出た。
そして、すかさず、刀による攻撃がとんできた。
光は、風戸の刀の攻撃を避けると今度は、風戸の懐に入り、右手による一撃を腹に繰り出した。
光の攻撃はそれはただ、手のひらを腹に当て少しの力で押しただけであった。しかし、風戸は、バランスを崩しかけて後ずさった。
「くっ」
腹を押さえながら風戸は光を睨み付けた。
しかし、光は、そんな事を気にもとめずただ、風戸を待っているだけであった。
「こんな偽者なんかに・・」
風戸の口から再び、言葉がこぼれ出る。
見ている生徒達もその様子をただ、無言で見ているしかなかった。
風戸自身、そして観客の生徒達の予想を大きく外れた展開が決闘場に繰り広げられていた。
そして、この決闘の勝敗がどうなるのかは誰にも予測することはできないでいた。
(これなら、いける)
決闘を通して、光は風戸を分析した。
そして、確信した。
なんとか、勝てるかもしれない、と。




