控え室での一件
光は今、控え室で頭をかかえていた。
「ああ、どうしてこうなるんだ」
光の声が控え室に響き渡る。
あの後、風戸との決闘は光が愕然するほどスムーズに進んでいった。
「絶対、圧力を掛けたな」
決闘というのは申し込まれたら受けるというわけではなく、ちゃんと相手には拒否権が存在している。光もそれに含まれているはずであった。しかし、光の成績は魔法の方でほとんどを落としているため退学寸前の状態であった。そのため、教師の面々から今回の決闘でよい結果を出さなければ退学だと告げられてしまったのであった。そして、何より、ここで風戸の申し出を断れば、今度は家の方でより不利な立場が悪化する恐れがあった。さらに、癒世家の影響力で風戸が教師達に根回ししていたのあった。そのため、光は決闘を受けなければいけない状況に置かれたのだ。
光はできる限り闘おうと決闘用の籠手といった魔法院の防具の確認をした。
突然、ドアを叩く音が鳴った。
「はい」
「俺だ」
声の主は健太であった。
「いいよ」
健太が部屋に入ってきた。それから控え室に重い空気が漂っていた。
「驚いたか」
光が沈黙を破るように口を開いた。
「ああ」
「ごめん」
「何で謝るんだよ」
健太が少し驚いたように言う。
「だってよ。お前に黙っていたからさ」
そう、光は健太に自分が癒し世家とは縁のない捨て子である事を黙っていた。それは彼を騙していた事に等しかった。
光が再び黙り込んだ。
「バカだな。お前」
健太の一言に光は驚いて健太の方を見た。
「確かにあの事は、俺でも驚いたさ。でもよ。俺とお前が友達だってことに何ら変わらねえだろ」
「健太」
健太の言葉に呆然としている光を見て健太は苦笑しながら光の肩を叩いた。
「やっつけろよ。負けたら、食堂のランチ奢れよ」
「ありがとう。わかったよ」
光の言葉を聞いて健太は納得して控え室を出ていった。その姿を見送った暫く、光は人知れず嬉し泣きをした。
それから数十分後。
再び、ドアを叩く音が響いた。
「お兄ちゃん、私」
声の主は、明里であった。
「どうぞ」
光が言うと明里がドアを開けて入ってきた。
明里は、今にでも泣き出しそうな顔をしていた。
「どうしたんだ?そんな顔して」
「だって、お兄ちゃんが闘う事をなっちゃったから」
「大丈夫だって」
「でも、これで負けたらお兄ちゃん、退学だって」
「!?誰が言った、そんな事」
光は明里の言葉に驚いた、その事は光と教師達だけのはずであったからだ。
「風戸よ。そこらじゅうにその事を話してた、お兄ちゃんの事も」
光は精神的にやられた。
もし、ここに明里がいなければ涙を流して崩れていただろう。
「風戸はお兄ちゃんの立場をより明白にしてお兄ちゃんを追い出そうとしている」
明里はつらそうに話していく。光はそれを見ていて辛かった。
「大丈夫。僕はこんなところで終わらないよ」
「お兄ちゃん・・・」
「絶対に退学には、ならないよ」
光が明里にそう伝えた瞬間。
「光、ここにいたか」
茜が来た。
「姉さん」
「話を聞いてな。それでお前に伝えたい事があるんだ」
「伝えたい事」
「正確にある人からだ」
「ある人」
光の問いに茜はその人物の名を口にした。
「先代当主からだ」
数十分後。
決闘場に向かう中、光は祖父からのメッセージを頭の中で思い返していた。
「お兄ちゃん」
後ろを振り返ると明里が心配そうに光を見ていた。茜の方も明里程顔には出ていなかったが心配しているのは伝わってきていた。
そんな二人に感謝しながら光は
「行ってくる。大丈夫」
笑顔で答えて決闘場に歩いていった。




