姉妹と光
祖父との話をした後、部屋を出た光は自分の部屋へと向かっていた。
「準備といっても何をすればいいだろう?」
自然と光の口から言葉が出た。
光の所有物は、手で数えられる程度しかなかった。
光はこの家にとっては邪魔者のため何も与えてはくれなかった。そのため、光は誕生日はおろか何も祝ってももらえていなかった。
唯一、祖父や茜達が光を秘かに祝ってくれたくらいであった。
そんな事を思い出していると光の目に透明な液体が覆い始めた。慌てそれを拭う。
「やれやれ、感傷に浸ってる場合じゃないよな」
そう強く自分に言い聞かせるように言い再び歩き出した。
「光」
「お兄ちゃん!?」
突然、光の背後から少女達の声が響いた。
振り返るとそこには、茜と明里がいた。
「お兄ちゃん!大丈夫だったの!」
「大丈夫だって、普通に話をしただけだよ」
光は、明里に悟られないようになんとか笑顔で答える。
「光」
茜だけは感づいているのか何にも言ってこなかった。
光はその事に感謝して茜に笑顔で応えた。
「だといいけど」
明里はまだ納得がいかない感じであった。
「まあ、大丈夫だよ明里、心配しないで」
光は再び明里に心配させないように言った。
「姉さんも、僕は大丈夫だから」
「そうか・・・」
茜は納得したようであったが目はどこか悲しそうでいた。
「大丈夫だって二人共、じゃあ僕は風呂に入ってくるよ」
光はそう言って歩いていった。
その背中を見ながら明里は呟いた。
「お兄ちゃん、苦しそうだったね」
「ああ、そうだな」
二人は言葉にはどこか悔しさが込もっていた。
実は、二人は光達の話を盗み聞きしていたのだ。
その話を聞いた時二人は彼等の部屋に飛び込みたい衝動に駆られた。
何もできない自分が悔しかったからだ。
しかし、光の気持ちと祖父の言葉を聞いた時、必死にその衝動を抑え二人は決意したのだ。
お兄ちゃんの(弟の)手助けをしようと。
そして、今、光の姿を見て二人はより一層決意を固めたものにした。
二人にとって光という存在は家族であり、また、家族以上の存在でもあった。
実力主義の癒世家は、実際の所、姉妹にとっても辛い所であった。結果を出さなければいつ潰されるかわからなかったからだ。そんな所で姉妹は必死になって稽古や学習をしてきていた。いつ折れるかわからない状態の中で姉妹にとって光は心の支えであった。捨て子でいつも分家や引き取った家族の大半からも見捨てられて自分達以上に酷い仕打ちを受けてきた光。
しかし、当の光は、泣かず、怒らず、逆に必死になってその仕打ちと戦っていたのだ。その姿に姉妹は突き動かされて今に至っていた。
そのため、二人は、光のためにある決心をしていた。
自分達が、この家を変えていこうと。
遠ざかっていく光の背中を決意の籠った目で見ていた。




