御礼
「お前は、この家にいない方が良い」
(きた)
光はそう思った。
癒世家の人達は今になっても光を追い出したく仕方がなかったのだ。
「その日が来たんですね」
光は全てを悟ったかのように静かに言った。
「すまない」
突然、祖父が頭を下げた。それは土下座にも等しいくらいの姿だった。
「そ、そんな、顔を上げてください」
慌てて、光は祖父に駆け寄った。
「じゃが、わしは、お前を守れなかった」
祖父が顔を下に向けながら言った。
「もう、十分に助けられました」
光はこれまでずっと自分の事を大事にしてくれた人に言葉にならないくらいに感謝していた。
それから数十分。祖父は頭を下げたままであった。
それから少したって祖父が落ち着いた頃に祖父は光に言った。
「光よ。本当だったらお前が学院を卒業するまではこの家に居させるつもりでおった。しかし、美輝の夫がお前を追い出すつもりらしい、いや、もう確定しているのじゃ」
光の義理の母、美輝の夫は今の癒世家の当主である。そして、茜と明里の実の父親である。
光にとっては義理の父になる。
しかし、光にとってはつらい存在であった。
何故なら、光を最も、追い出したかった人物であったからだ。そのため、光が物心つく前から光の事をぞんざいに扱ってきた。虐待までにはいかなかったが門下生や分家の子供達が光を稽古と称した暴力を見てみぬふりをしたり、さらには、祖父が引退をして当主になると光に対する行いは拍車をかけて酷くなっていった。
そして、とどめとばかりに今祖父からの話のとおり光の癒世家からの追い出しを佳作し始めたのだ。
「だから、すまないが準備だけはしといてほしい」
その声はとても弱かった。
光はその声から自分に対してだと思うと胸が締め付けられるようだった。
光は悟られないように普通にわかりました、と答えた。
光の処遇は、次の当主会議で決定されることになった。
「でも、追放は、ほぼ間違いないからなあ」
「すまん」
再び謝る義祖父。
「す、すいません!身勝手なことを」
気づかないうちに口から言葉が出ていたらしい。
光は自分を責めた。
まるで義祖父に八つ当たりをしているようだったからだ。
「追放されるまでまだ、時間はある。それまでにやることをしっかりやっておきなさい」
「はい。そうします」




