003 天才君の力
本日3回目の投稿です
「ゼウス、大変な事が起きたの」
「(どうした)」
「わたし、小さくなっている。この体、きっと不良品よ」
「(エニシがこのままでいいと言っただろうが)」
「……どういうこと?」
「(彼が小さくなっているって思っただろう)」
「うん、中学生みたいだった」
「(だからエニシもその頃の自分をイメージしたんだ。高次元空間ではイメージ通りになる)」
「なら、不良品ではないのね」
「(もちろんだ)」
「ふー、なら安心ね。それに、若くなったって事よね、それってラッキーだわ」
ガッツポーズよ! ぎゅっと拳を握る。
ふと、腕を見る。神様が作ってくれた服の袖が見える。
お尻までしっかり隠れる丈長シャツと伸びるズボン。とても動きやすいわ。それに、ひらひらドレスじゃないところが合格ね。
そして、生地の艶が凄く綺麗なの。このまま高級レストランに入ってもたぶん追い出されることはないわ。
でも、これ1着しかないのよね。
「ゼウス、わたし服はこの1着しかないのよ。洗濯したら着る物がないのよね。どうしよう」
「(なんだ、知らなかったのか。その服も高次元で作られた特別製だ。1000年位はしわもできないし汚れもつかないぞ)」
「……なんでそうなるの?」
「(高次元で作られた素材に低次元の物質がつくわけないだろう)」
「……いろいろ突っ込みたいところがたくさんあるけど、まあ、今はいいわ」
「(よし、今日は、彼の考えた力の使い方を練習するぞ)」
天才君が考えた力ね。どんな力かしら、楽しみ。
「どんとこいよ!」
膝あたりまである長さの服が風に揺れた。
森の緑に負けない深い緑に光沢が流れる。
うん、この服気に入った。
「(まずは『真色眼』についてだ)」
「どんな力なの」
「(敵か味方かを見分ける能力だ)」
「それ、便利ね」
「(『真色眼発動』だ。言ってみろ)」
「わかった。『真色眼』発動」
何これ、赤い影、いや、赤い魔物がそこら中にいるわよ。
「目が痛くなるわ。真っ赤よ」
「(だろ、そのままでは使いづらいはずだ。調整しよう)」
「どうやるの」
「(ゲームみたいな物だ。敵の頭上にアイコンが出るイメージだな)」
なるほど、ゲームなら能力値が出るわよね。ああ、名前も出るわ。なら、まるまるそれをいただきよ。
「こうなれって、イメージして発動すればいいのよね」
「(そうだ)」
「わかった、『真色眼』ステータス表示で発動」
できた。なになに、あの熊みたいなのは『シルバント・グリズリー』うわ赤が点滅している。かなり危険という事ね。
「できた。これ、すごく便利よ。さすがは天才が考えた力ね」
わたしなんで怖くないんだろう。熊よ。大きな熊がこっちを睨んでいるのよ。
きっと、ゼウスが平気な顔をしているからね。あ、顔はないのよね。でもそう思えるの。なんでだろ。
「(順調だな。次だ。『多言語翻訳君』は、意味のある言語なら全て日本語として翻訳される機能になる)」
「うーん、よく分からないわね」
「(この大陸には、『人族』『獣人族』『竜人族』の三つの種族が暮らしている。みんな違う言語だ。地球でも、英語、日本語、フランス語と国ごとに違うだろう)」
「ええ、私は日本語オンリーよ。浮気はしないわ」
「(『多言語翻訳君』は、全ての言語をエニシが知っている言葉に翻訳し変換してくれるんだ)」
「なにそれ、すごく便利じゃない。それって、『君』じゃ失礼よ『様』よ」
「(……まあ、どう呼んでも機能はかわらない)」
「次は何?」
「(もう、体験している。『瞬間自動神装結界』だ。エニシに危険が迫ったら自動で結界が発動する)」
「ああ、あれね。つまり、私が気がつかなくても守ってくれるって事よね。それ、すごくありがたい。やはり、天才が考える事ってひと味違うわね。で、次は何?」
「(終わりだ)」
は、攻撃はどうやるのよ。刀とか機関銃とかレーザー光線とか出ないの。
「何よ、守る力だけじゃない。武器はどうするの」
「(神装力で戦える)」
ん、まだ結界しか使えないわよ。
「神装結界しか知らないけど。それのこと」
「(あたりだ。結界はイメージが全てだ。そこの棒を持ってみろ)」
下を見た。木の枝が落ちている。これのことかしら?
拾い上げて手に持ってみる。案外重たい。でも振り回すには丁度いい長さがある。
「これでいいの?」
「(『神装力イメージ剣』だ、言ってみろ)」
剣て何かしら。日本では持っているだけで逮捕されるって聞いたことがあるわ。私が知っているのは、日本刀かしら。
「神装力イメージ『日本刀』」
あれ、棒の周りに紅色の膜ができたわ。形は日本刀みたいね。
「(できたな。では、その木を切ってみろ)」
木って、このことかしら、電柱みたいね。
「ただ振ればいいのかしら」
「(そうだ)」
「ふーん、まあいいわ。えい!」
え、なんで、丸太よ。太い丸太よ。豆腐ではないわよ。なんで切れて倒れるのよ。
電柱よりも太い木がスパッと切れて倒れた。
鳥がびっくりしてバタバタと飛び立っている。
こちらを睨んでいた熊の直ぐ横で土煙が上がっている。
熊がキョトンとしている。
く、もう少し右だったか! うそ、狙ったわけではない。熊さんごめんね。
「(それが神装力の剣だ)」
「これって、反則ね。使い方を考えないといけないわ」
なに、ゼウスが笑ったように見えたわ。
「(うん、その通りだ。神の力だからね。その考え方ができるならエニシは大丈夫)」
褒められたのかしら。なんか、ゼウスの雰囲気がちょっと変わったわね。
「(さっきの身体強化と組み合わせて戦えば、エニシは龍だって倒せる)」
また、大げさな。
「そうね、最強の力よね。ふふふ、気に入ったわ」
「(ここでやることは終わりだ)」
ふー、やっと自由よ。
「いよいよね。町に行くわよ!」
いよいよ異世界ゆっくり旅よ。楽しみ~。
「(一番近い町まで、だいたい300キロメートルぐらいだ)」
「……遠いと言うことは分かったわ」
「(日本なら東京から福島に行く感じだな)」
え、新幹線でも2時間ぐらいかかる距離よね。
「歩くの。きっと何日もかかるわよ」
「(身体強化を掛けて走れば20時間で着くぞ)」
どこのマラソン選手よ!
「か弱い乙女ができるわけないでしょう」
「(ならば、ゆっくり歩こう。急ぐ旅ではないだろう)」
「わかっているじゃない。その通りよ」
そうよ、二度目の人生だもの。楽しまなきゃ!
次話投稿は明日の7時10分になります
《読者の皆案へ》
作中に登場する専門用語や物理・科学的な表現は、『多言語翻訳様』のシステム仕様によるものです。そのため、地球における実際の科学的定義や用語の解釈とは多少異なる部分がありますが「高次元翻訳の仕様」として温かい目でお楽しみください。




