002 神装結界
本日2回目の投稿です
杖の説明だと、ここは『創世大陸』と呼ばれている大陸で、その中にある密林の中に私はいる。
いったいどういうことよ!
あの神様ぼけていたんだわ。何億年も1人でいれば脳細胞が少し融けても不思議ではない。
「なんでもっと人がいる場所に転移しなかったのよ」
「(さあな、うっかり神様がやることだ。意味はないだろう)」
やっぱりぼけてたのね。まあいいわ。その手の老人に私はやさしいのよ。
「それで、何とか結界をどうすればいいの」
「(今おまえが……。おまえを何と呼べばいい)」
「『エニシ』でいいわよ。そうなると、あなたも杖じゃぁつまらないわね。うーん、そうねえ、『つえちゃん』でいいか」
「(却下だ)」
「なによ、ならなんて呼べばいいのよ」
「(『ゼウスミルギア・テオス・ミューレーテタルトン』が本当の名前だ)」
「長いわよ」
「(『ゼウス』でいい)」
「ゼウスね。わかった。よろしくね」
「(エニシ、神装力は『イメージ』が全てだ)」
「イメージねえ、よくわからないわ」
「(画像のことだ。連想、想像とも言う)」
「ああ、それなら分かるわ。連想ゲームね」
「(ふむ、いい思いつきだな。ゲームか)」
連想ゲームは得意なのよ!
「(濡れないで何を思い浮かべる)」
「うーん、傘かな」
「(台風だったらどうする)」
「レインコートかしら」
「(よし、やてみろ)」
「……何をやるの?」
「(神装結界イメージ『レインコート』だ、言ってみろ)」
へんな杖ね。ああ、ゼウスか。
「神装結界、イメージ『レインコート』」
え、何? 体の周りに何かがある。
「(いくぞ)」
は、
ザッパーン!
なんで水が落ちてくるのよ。濡れるでしょうが!
上を見た。空しかない。
下を見た。あれ、わたしの周りしか水の後が無い。
体は、あれ?
「濡れていない。どうして?」
「(できたな、それが結界だ)」
「見えないレインコートってこと」
「(そうだ、エニシがイメージで発動させた結界だ)」
イメージすればいいのね。おもしろいわ。
ヒュウーと風が抜けていく。あれ、風を感じる。
結界がなくなっている。
周りを見渡す。周りは緑一色。名前は知らないが日本の森にあるような蔦が木に巻き付いている。
どうせやることはない。なら、丁度いい。
「ゼウス、ちがうお題を出して」
「(ボールが顔に当たりそうだ。どうする)」
「避けるじゃだめなのね。えーと、壁ね」
透明な壁。機動隊が持っているあれよ、えーと、盾だっけ。名前が出てこない、まあいいわ。
「神装結界、イメージ『透明な盾』」
分かるわ、ちゃんとある。目の前に透明な盾ができている。
「(いくぞ!)」
へ、どこへ?
バチーン!
なんで石が飛んでくるのよ。ゼウスね。
でも、目の前で弾いたわ。すごい。これを私がやったのね。異世界って、おもしろいわ。
その後も、ゼウスがいろいろなお題を出してくれたの。全部連想してやったわよ。どうよ! このゲームは私の勝ちだわ。
「(よし、神装結界はイメージ通りに発動できるようになったな。ならば次の段階に進むぞ)」
任せなさい!
「(身体強化だ!)」
なんですかー?
「(おまえの体は高次元空間で作られた特別製だ。魔力ではなく神力を使うことができる)」
魔力って何? 魔法の事かしら。私も使えるの?
「魔法使いね。小さいころは真剣に考えたわ。どうやったら箒に乗って空を飛べるのかって」
「(魔法は使えないぞ。エニシに魔力はない)」
ですよねー。はい、分かっていますよ。
「(神力があるので、神装力が使える)」
「……?」
「(エニシの細胞ひとつひとつに神力の素になる化学物質を作るミトコンドリアが数十個存在しているんだ)」
数十個なのね。よかった。それなら安心だわ。
「(人の細胞はだいたい40兆個あるから、今のエニシには数十兆個の特別なミトコンドリアがあるのさ)」
は、何を言っているのかしら。全く理解できないわ。
杖を見る。どう見ても杖だ。何故話せる? 口はどこにあるの。
「(『神装力第三権限開放』だ。言ってみろ)」
言えばいいのね。
「『神装力第三権限』開放」
う、何、この感じ。いやよ。体中の何かがウネウネ動いているようなへんな感覚よ。
「だめ、体が重い。動けない」
体中に砂袋が張り付いているような感じなの。手も上がらない足も動かない。
「(うーん、まだ体が慣れていないのか。なら、もっと力を小さくしないといけないな)」
「(エニシ、小さくするイメージはどうする)」
「連想ゲームね。えーと、小さいのはミニカー、ミニスカート、『ミニ』ね」
「(なら『ミニ開放』でもう一度やってみろ)」
「わかった。『神装力第三権限』ミニ開放」
あれ、さっきよりも体は楽だわ。うん、これなら動けそう。
腕が上がる。指も動く。肩も上がる。
足が前に出る。これなら歩ける。
「だいじょうぶ。動ける」
「(よし、ならそのまま身体強化『脚力発動』だ。言ってみろ)」
「わかった。身体強化『脚力発動』」
うわ、足がぷるぷるしている。くすぐったい。
「(その場でジャンプしてみろ)」
「どのぐら跳べばいいの」
「(出せそうな力の10分の1位だな)」
難しい事やらせるわね。でも、10分の1なら分かるわ。丸いピザを10枚に分けた内の一切れよ。
「ピザの一切れジャンプ!」
ちょっと膝に溜めをつくってポンと飛び上がる。あれよ、ラジオ体操のジャンプと同じ。
え、なんで木のてっぺんが目の前にあるのよ。
下を見る。え、
地面からずいぶん離れている……まじ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁー」
落ちた。これ大怪我ね。
いたたた、あれ、痛くない。
「(よし、10分の1の力であのぐらいなら十分だ)」
何が『よし』よ。こうなるならもっとしっかり説明しなさいよ。まあ、聞いても分からないけど。
「(今日はここまでだ。さて、寝る場所はどうする)」
周りを見渡した。木と草と石しかない。
こんな場所で寝られるのかしら。まあ、いいか。悩んでも仕方ない。それよりも問題は……、
「お風呂に入りたいわね」
「(おまえの体は高次元空間で作られたと言っただろう。風呂など入らなくても1000年は、垢も出ないぞ)」
「……」
「何を言っているのかうまく理解できないけど、例え垢が出なくても、お風呂には入りたいの」
ホントは着替えもしたい。
「(はー、仕方ないな。うーん、この岩でいいか)」
何をするつもりなのかしら?
「(よし、座標指定、縦2メートル、横1メートル、深さ0.7メートル、収納)」
は、何が起きたの?
岩にぽっかり穴が開いた。まるで湯船みたいな穴。
「(ちょっと、角があるか。『研磨』だ)」
りんごぐらいの石が高速で回り出した。それが穴のかどを削っていく。だんだんと丸くなっていく。
「(よし、後は水か。ゼウスが命ずる。水の精霊よ水を出せ)」
え、空中から水が出てきた。岩の穴に水がどんどんたまっていく。
「(ゼウスが命ずる。火の精霊よ出てこい)」
ポンって感じで赤く燃える玉が空中から出てきた。
これが精霊なの? 人型じゃないのね。もっとかわいいイメージだったんだけどな。がっかり。
「(ふむ、このまま水に入ると消滅するな)」
確かに! 火を消すときに水をかけるわ。
「(この世界の理ではそうだが、おれの第四権限なら問題ない)」
いや、消えるでしょう。問題ありよ。
「(相転移固定。火の理を『熱』へと書き換える。水温42度で温めろ)」
ん……火がなくなった。代わりに赤く……燃えている? というよりも加熱された石みたいね。
石焼き芋やサウナ風呂にある加熱された石みたいになった精霊がポチャンと湯船に飛び込んだ。
あれ、もやが見える。
これ知っている。お風呂を沸かすときによく見るやつよ。
湯気が出てきた。あはは、おふろだ! うれしい。
手を入れる。
「うん、丁度いい湯加減よ」
「(うむ、ぴったり42度だな。よし、入れるぞ)」
……この杖細かいわね。
でもすごい。そして便利な杖だわ。
ん、ゼウスよいつまでそこにいるつもり?
ゼウスがお風呂の中に浮かんでいる。
「入れるわけないでしょう。丸見えよ!」
「(誰も見ていないぞ)」
「ゼウスが見ているでしょう」
「(杖だぞ。気になるのか)」
「うるさいわね。会話ができるならもう立派な人よ」
「(……)」
「(おれは、人なのか)」
「言葉を操るなら人よ!」
「(……わかった。どうすればいい)」
「そこから出て、後ろを向いて、目も耳も口も全て閉じなさい」
「(理解した)」
あれ、ずいぶん素直ね。まあいいわ。
「あー、お風呂よー、露天風呂よ。異世界最高だわー」
石けんとシャンプーも欲しいわね。町に行けば売っているのかしら。
こうして、異世界での1日目が終わったの。
次話投稿は本日の17:10になります。
《読者の皆様へ》
作中に登場する専門用語や物理・科学的な表現は、『多言語翻訳様』のシステム仕様によるものです。そのため、地球における実際の科学的定義や用語の解釈とは多少異なる部分がありますが「高次元翻訳の仕様」として温かい目でお楽しみください。
《専門用語解説》
【ミトコンドリア】
生物の細胞内にある「エネルギー生成工場」。地球では酸素と栄養からエネルギー(ATP)を作りますが、この異世界では「空気中の魔素を取り込んで魔力へ変換する」役割も担っています。
【魔素と魔力】
世界樹が供給しているすべてのエネルギーの元となる「生の原料」が魔素です。これを体内のミトコンドリアで取り込み、生物が魔法や運動に使える形へ化学変換(加工)したものを「魔力」と呼びます。
【神力と神装力】
神々(高次元存在)が扱う絶対的な権限エネルギーが「神力」です。そして、その神力をイメージにより具現化させる力が「神装力」です。
【精霊】
意思を持った魔素の集まり。(理により自然発生しています)
【相転移】
生物の「じわじわ化学変化(代謝)」を経ず、物質やエネルギーの状態が一瞬で別物へ変化することです。(※神力を使えば、火の性質を消して純粋な『熱』に相転移させることも可能です)




