001 高次元空間
『大樹の森編』『魔術学園編』では主人公目線で明らかになっていく謎がこのお話でほぼ全て明らかになっていきます。ご了承ください。
ここはどこなの、周りは真っ白。
いったい何が起きたんだっけ。
うーん、あ、隕石だ。いや、なんで落ちてくるの。あり得ないでしょう。それに、あの基礎研究者、ばかじゃないの。なんで気がつかないのよ。
自分だけ逃げる事もできたわ。でも、あの人を置いていけなかった。
だって、ねこちゃんたちをいつもかわいがってくれていた。数百匹はいる猫の名前を全部覚えているってすごい事よね。
それに、いつも横笛のきれいな音色で私の心を癒やしてくれた。
どこかの研究所の貧乏基礎研究者だって言っていたわね。基礎研究者が何かは分からないけど、とんでもない天才だということは知っていたの。
笛杜神社の神童だって一時期すごい話題になっていたもの。
さて、ここはどこって話にもどるけど……あれ?
あそこにいる学生、基礎研究者に似ているわね。猫もいるわ。それと、なに、あの神さまみたいな人、笑えるー。
なんか小さくなっているけど、多分彼よね。よかった、助かったのね。でも、ここ変な場所よね。ICUの中なのかしら。
あれ、いない。消えちゃった? 変なの。
「待たせたのーぅ」
「……」
「ん、話せるはずじゃがのー」
「だれですか?」
「おまえ達の感覚では『神様』かのー」
「冗談言っているのかな。もしかして、コスプレ好きのお医者様?」
「神は冗談も偽りも言わないぞ」
「なかなか話がかみ合わないわね。まあいいわ、ここはなんていう病院なの」
「高次元空間じゃよ」
「……」
「変な名前の病院ね」
「病院ではないぞ。ほれ、これでどうじゃ」
猫カフェ!
「ニャーゴ、おまえの大好きな場所じゃぞ」
猫ネコねこ! 猫だらけ。幸せかも……じゃないでしょう。何これどういうことよ!
「ニャーゴ、おまえが望んでいた世界だニャー。気に入らないかニャー」
「疑ってすみませんでした。神様ですね」
「うむ、それでだなニャー」
「さっきの姿でお願いします」
「なんじゃ、こっちでいいのか」
「はい」
「おぬしはあそこで死んだぞ」
「ですよねー」
「原因を作ったのはわしじゃ。すまないの」
「……事情を説明してもらえますか」
神様の説明によると、こういうことだったの。
遙か彼方のどこかの銀河で、神様が捜し物をしていたが、うっかり小惑星の軌道をずらしてしまった。
その小惑星は、いろいろな浮遊物にぶつかり小さく削れていったが、最後に残った核のようなものが、数億年の年月を経て、地球の引力に引かれて落下してしまった。
偶然にも笛杜神社の近くの裏山に落下し、たまたまそこで笛の練習をしていた基礎研究者の上に落ちてきた……というお話だった。
そして、癒やしを求めて猫に会いに行った私が助けようとして巻き込まれた。
うそですよね。
「えーと、あなたは神様ですよね。小惑星の軌道ぐらい簡単に変えられたはずですよね」
「すまんのう、小惑星帯に誘導したのでそこで消滅するはずだったんじゃよ。最後まで確認しなかったわしのミスじゃ。本当に申し訳ない」
「はー。まあ、いいです。もう、すんだことです」
「ずいぶんあっさりしておるのう。未練はないのか」
「保護猫たちのことは気になります。あの基礎研究者もいなくなってしまったら、誰が面倒見てくれるのかが心配です」
「そこは大丈夫じゃ」
「神様は冗談も偽りも言わないですね。信じます。安心しました。それで、これから私はどうなるのですか」
「選択肢は二つだ」
「選べるのですね。ちょっと嬉しいです」
「このまま消滅するか別の世界に転生して暮らすかのどちらかじゃ」
「……それ、選択肢じゃないですよ。転生一択に決まっているじゃないですか」
「そうなのか、おまえから生存したいという思いがしなかったがのう」
ああ、なるほど。確かにねこちゃんから生きる気力をもらいたくてあそこに行ったんだったわ。
「大丈夫です。今は生きる気満々です。異世界に行きたいです」
「わかった、その願いを聞き届けよう。何か望むことはあるか」
「彼も異世界に行ったんですか」
「ああ、俺様猫と一緒に旅立ったぞ」
「なにそれ、おもしろい。なら、私も彼が行った異世界に行きたいです」
「いいぞ。では、そこで暮らしていくための力が必要じゃな。何か要望はあるか」
「これって、二回目の人生ですよね。なら、ちゃんと生きてみたいです。だから、簡単に死なないようにしてください」
「ならば、彼が考えた力はどうじゃ」
あの天才が考えたのよね。凡人の私ではどうせ穴があるわ。なら、丸まる乗っかるのが得策よ。
「わかりました。それでお願いします」
「後は、加護じゃ。俺様猫並の権限が必要じゃな。ならば、この杖を授けようかの。話し相手になってくれるはずじゃ」
その杖、どこから出てきたのかしら。それと、杖と話せって事ね。日本なら病院に連れて行かれるわ。でも、異世界なら何でもありよ。貰える物は貰いましょう。
「ありがとうございます」
「姿はどうする。猫にでもなるか」
「いえ、人間でいいです。この姿のままでいいです」
「そうか、しかし、服は変えた方がいいぞ。おまえが行く世界でその服を着ている者はいないぞ」
「彼はどうしたのですか」
「わしが作った服を与えたぞ」
「なら、わたしにもください」
「うむ、彼と同じような仕様でいいか」
「はい、お願いします」
「あいわかった、では、その世界での生活を楽しみなさい」
「はい、彼とは会えますか」
「いずれ、巡り会うじゃろうて」
「そうですか。ちょっと、楽しみです」
「うむ、よい人生をな」
「はい」
* * * * *
「(おい起きろ! いつまで寝ている)」
「何よ、もう少しぐらいいいじゃない……ん、だれ?」
起き上がろうと手をつくと草や土の感触。あれ?
「(まったく、ここはちょっと危険な森だぞ。油断していると吹っ飛ばされるぞ)」
目の前に棒が浮いている。そして棒から声が聞こえる。何で聞こえるのかしら? でも、今優先する事はこれね。
「状況がよくわらないの。説明してくれる」
「(ここは異世界だ。おまえは高次元空間で転生をしてここに転移してきた。そして、今、魔物達に囲まれている。以上だ)」
「……よーくわかったわ。そして思い出した。あなたは神様がくれた杖ね。で、私はこれからどうなるの」
「(あいつらと戦うことになるかな)」
「……」
「はあー、どうやって戦うのよ。武器もないのよ。そうか、天才が考えた力があったわ。ならば」
集中よ。そうすれば作れるのよ。
「武器よでてこい」
「……」
「なによ、どうして出てこないのよ」
「(おまえはアホだろう)」
「失礼な杖ね。でも、間違ってはいないわ」
「(あいつが考えた力は、神装力第三権限の補助みたいなものだ。まずは、神装力を使いこなせるようにならなければ意味がない)」
「それ、どうやって使いこなすのよ。今直ぐよ、今必要なの。練習している暇なんてないのよ」
「(大丈夫だ。今は、彼が考えた力が発動する)」
ふー、なら安心ね。さて、天才が考えた力とはどんなものなの。
「ふふふ、みせてもらおうか、天才が考えた力とやらを!」
ズバーァァァーン!
「なによー。吹っ飛ばされたわよーぅぅぅぅぅぅぅ」
「いたたた……あれ、痛くない。おかしいわね。50メートルは空を飛んでいたような気がするんだけど」
「(おまえはアホだろう)」
「だから何よ」
「(瞬間自動神装結界が発動しているから、怪我などするわけないだろう)」
「知らないわよ。でも、吹っ飛ばされたおかげで魔物からは逃げられたわ。結果オーライよ!」
「(なかなかいい性格をしているな。気に入ったぞ!)」
「この性格じゃないと生き残れない場所だったからね。逞しくもなるわよ」
「(さて、しばらくは神装力を発動できるように練習だ)」
「それが必要なのね。分かったわ」
こうして、私の異世界生活が始まったの。
本日だけ3回投稿になります。
次話は本日12:10投稿になります。
【読者の皆様へ】
作中に登場する専門用語や物理・科学的な表現は、『多言語翻訳様』のシステム仕様によるものです。そのため、地球における実際の科学的定義や用語の解釈とは多少異なる部分がありますが「高次元翻訳の仕様」として温かい目でお楽しみください。




