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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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78/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 78

が、


 バニラは、驚かんかった…


 「…やっぱり…」


 と、言って、笑った…


 「…さすが、リンダね…」


 と、だけ、言った…


 私は、どういうことだ?

 

 と、思った…


 思いながら、考えた…


 私とバニラの違いを、だ…


 私とバニラ…共に、リンダと、接しているが、付き合った長さが違う…


 私は、最近、知り会ったばかり…


 が、


 バニラは違う…


 何年前から、付き合っているのか、正確には、知らないが、私のように、昨日、今日、知り会った関係ではない…


 少なくとも、5年や、6年は、前から、知り会っているだろう…


 どうして、そう言えるのか?


 それは、リンダ・ヘイワースが、ハリウッドのセックス・シンボルと呼ばれる前から、知り会ったと、思えるからだ…


 リンダは、今のように、売れる前には、私の夫の葉尊の父、葉敬の援助を受けていた…


 そして、バニラは、葉敬の愛人…


 バニラの娘のマリアは、葉敬の娘だ…


 そのマリアは、3歳になる…


 その事実を踏まえれば、バニラは、最低でも、それ以前に、リンダと知り合っていることになる…


 なぜなら、バニラは、葉敬と知り合ったのは、4年以上前…


 だから、おおざっぱに、考えて、5年ぐらい前から、知っていたと、考えたのだ…


 だから、バニラは、私と違い、リンダのことは、おおげさに、言えば、なんでも、知っているに違いない…


 だから、リンダの実力を知っているのだ…


 リンダ・ヘイワースの実力を知っているのだ…


 そして、それは、ハリウッドのセックス・シンボルと呼ばれる、お色気たっぷりの姿だけではない…


 リンダ・ヘイワースの情報収集力…


 いわずと知れた、イギリス王室のウィリアム王子を筆頭とした、セレブ人脈…


 そのセレブ人脈の凄さを知っているのだ…


 熟知しているのだ…


 だから、バニラは、驚かんのだ…


 私は、あらためて、思った…


 が、


 と、そこまで、考えて、思った…


 バニラが、こんなことで、驚いたということは、リンダは、バニラに、今回の騒動というか、内訳を、どの程度、教えたのか?


 いや、


 もっと、言えば、どこまで、知っているのか?


 なにも、知らなければ、バニラは、リンダに化けて、この場にやって来るわけがない…


 当たり前だが、事前に、リンダから、頼まれて、リンダに化けて、この場にやって来たわけだからだ…


 だから、私は、バニラに、


 「…バニラ…オマエは、今日、どうして、リンダに化けて、ここに来たんだ?…」


 と、直球に聞いた…


 すると、バニラは、


 「…リンダに頼まれたの…」


 と、言った…


 が、


 それは、わかっている…


 だから、


 「…それは、わかっている…なんて、頼まれたんだ?…」


 と、私は、聞いた…


 「…仮装大会の出し物というか…」


 「…仮装大会の出し物だと?…」


 私は、思わず、素っ頓狂な声を上げた…


 「…今日は、私もこの保育園のお遊戯大会と聞いていたから、私が、リンダに化けて、現れれば、父兄が喜ぶって…すっかり、リンダに騙された…」


 …なんと!…


 …そんな子供が、騙されるような手で!…


 私は、思わず、リンダを見た…


 リンダ=ヤンを、見た…


 すると、


 「…ウソ、おっしゃい…」


 と、ヤン=リンダが指摘した…


 「…なに、ウソ?…」


 私は、言った…


 「…そう…ウソ…バニラは、ホントは、私の狙いを知っていた…いえ、知っていなくても、なにか、別の目的があることには、気付いていた…」


 「…どうして、気付いていたんだ?…」


 「…ピンクのベンツ…」


 「…アレが、どうかしたのか?…」


 「…あのベンツは、葉敬に用意してもらった…だから、当然、葉敬から、バニラに、内密で、どうして、あのベンツが、必要なんだ? とでも、聞かれたんじゃないの?…そして、勘のいい、葉敬とバニラだから、なにか、あると、勘づいていたんでしょ?…」


 「…それは、なんとなくね…」


 と、言って、バニラが、笑った…


 「…リンダが、私にリンダに化けて、と言った時点で、なにかあると、思った…でも、それが、なんだか、わからなかった…」


 バニラが、説明する…


 「…まさか、ファラドと殴り合いのケンカをするとは、思わなかった…」


 「…それは、私も想定外だった…まさか、ファラドが、マリアを人質に取るとは…」


 ヤン=リンダが、言う…


 「…でも、そのおかげで、マリアとオスマン殿下の絆が、深まった…まさに、ケガの功名ね…」


 が、


 バニラは、なにも、言わなかった…


 複雑な、表情になった…


 「…まさか、オスマン殿下は、マリアのことを…」


 そう言って、後は、なにも言わなかった…


 あえて、言わなかったのだろう…


 オスマン殿下は、見かけは、3歳の幼児だが、実際は、30歳の成人男子…


 3歳のマリアと、恋愛や結婚ができるわけがないからだ…


 が、


 オスマン殿下は、本当は、どう思っているのか、わからない…


 だから、マリアの母親である、バニラは、心配だったのだろう…


 まさかとは、思うが、将来、オスマンが、マリアと結婚したいと言い出すのでないかと、不安だったのだろう…


 が、


 その不安を、リンダが、払拭した…


 「…バニラ…その心配は、無用よ…」


 「…無用…どうして?…」


 「…オスマン殿下のマリアを見る目を、見なさい…」


 「…見る目?…」


 「…アレは、妻や恋人を見る目じゃない…子供を見る目…自分の愛する子供を見る目…」


 「…愛する子供を見る目?…」


 「…オスマン殿下は、本当は、30歳…きっと、マリアのような子供が、欲しいと、思ったのでしょう…それが、あの目に表れてる…」


 その言葉で、私は、マリアとオスマンを見た…


 酒をマリアに取られたオスマンは、マリアと言い争っていたが、その目は、優しかった…


 マリアを可愛くて、仕方がない様子だった…


 「…オスマン殿下は、アラブの至宝と呼ばれるほどの頭脳の持ち主…自分のことも、マリアのことも、わかっている…」


 ゆっくりと、リンダが告げる…


 「…おそらく、オスマン殿下は、今、このときを楽しんでいるのだと思う…」


 「…今、このときって?…」


 バニラが、リンダに聞いた…


 「…マリアと過ごせる時間…マリアは、当たり前だけれども、大きくなる…そうなると、オスマン殿下と不釣り合いになる…だから、今、このときを楽しんでいる…そして、いずれ、それは、オスマン殿下の中で、楽しい思い出に変わる…」


 リンダが、説明した…


 私も、バニラも、その言葉に、なにも言えんかった…


 おそらく、その通りだったからだ…


 賢明なオスマンは、なにもかも見抜いているに違いない…


 自分が、将来、マリアと結婚できないことも…


 将来、マリアが、自分から、離れてゆくことも、すべて、見抜いているのだろう…


 すべて、見抜いた上で、今を楽しんでいるのだろう…


 いわば、思い出作り…


 楽しい思い出は、一生、心に残る…


 そして、それを、思い出せば、ひとは、幸福になる…


 オスマン殿下は、そう考えているに、違いなかった…


 が、そこまで、考えて、気付いた…


 やはりというか、あのお嬢様の狙いが、わからない…


 あの矢口トモコの狙いがわからないのだ…


 だから、


 「…ヤン…いや、リンダ…」


 と、私は、言った…


 「…なに、お姉さん?」


「…あの矢口のお嬢様…あの、お嬢様は一体、なにを、考えているんだ? いや、一体、なにを、目的に、このお遊戯大会に参加したんだ?…」


 私の質問に、ヤン=リンダは、考え込んだ…


 それから、少しして、


 「…あのお嬢様が、なにを考えているかは、わからない…ただ…」


 「…ただ、なんだ?…」


 「…別に、お姉さんに、不利になるとか、そんなことじゃないと思う…」


 「…私が、不利になる? …どういう意味だ?…」


 「…私も、詳しくは、知らない…なにより、あのお嬢様と、そう接してはいない…でも…」


 「…でも、なんだ?…」


 「…悪い人じゃないと思う…」


 「…悪い人じゃないだと?…」


 「…悪い人間は、大げさに、言えば、匂いで、わかるといえば、言い過ぎだけれども、初対面で、なにか、嫌なものを、感じる…変な例えかもしれないけれども、例えば、ホントは、中身は、真っ黒なのに、白い服を、着て、中身が、黒いのを、隠すようなもの…少し、目を凝らして、見れば、黒いのが、わかる…別に、黒人のことを、揶揄して、言っているわけじゃないわよ…」


 ヤン=リンダが、笑った…


 私は、そのたとえに、うまいことを言うと、思った…


 たしかに、ヤン=リンダのいうことは、わかる…


 誰もが、直観というか、センサーというか…


 コイツは、危険という人物は、男女の別なく、初対面で、わかる…


 少し、おおげさに、いえば、第六感ではないが、人間誰もが、生まれつき、備わった力というか…


 それがあるから、普通のひとは、そんな人間と付き合わない…


 そして、それが、もっとも、明らかなのは、会社の就職やパートや、アルバイトの面接だろう…


 ずばり、面接官が、採用しないのだ…


 一言で、言えば、初対面で、なにか、嫌なものを、感じるのだろう…


 ハッキリ言って、この人間を採用すれば、後で、なにか、やらかすというか…


 職場が、ゴタゴタすると、考える…


 だから、採用しない…


 が、


 当然ながら、本人には、それが、わからない…


 ずっと以前に、私も、とある職場で、そんな人間と会ったことがある…


 ITバブルの頃だ…


 正直、景気が、良いときは、どんな人間も採用しているので、その時期は、その前や後に比べ、採用した人間のレベルが、一目見て、落ちていた(笑)…


 もっとも、当の採用された人間は、わからない…


 いや、


 わかる人間は、いたかもしれないが、私の周りでは、いなかった(笑)…


 だから、大半が、ITバブルが、弾ければ、サヨナラというか…


 クビになった…


 また運よく、クビにならなくても、正直、未来は、なかった…


 出世はなかったのだ…


 ハッキリ、言えば、ITバブルに、限らず、景気が、良い時期は、悪い時期に比べて、採用レベルが、緩くなる…


 大げさに、言えば、早慶レベルの人間を採用していた会社が、日大レベルを採用する…


 そして、日大レベルを採用していた会社が、高卒を採用するという具合にだ…


 だから、一目見て、集めた人間のレベルが、それまでとは、違う…


 が、


 それを目の当たりにしても、わからない人間は、わからない(笑)…


 採用レベルが、下がった現実が、わからないのだ…


 そんな人間には、なにを言ってもダメ…


 無駄だ…


 そして、そんな人間は、すべからく、プライドが高い…


 さらに、上昇志向が、強かった…


 私は、それが、驚きだった…


 それまで、そんな人間に会ったことが、なかったからだ…


 そんな人間を見たことが、なかったからだ…


 例えば、東大や、早慶を出て、


 「…オレは、いい大学を出ているんだから、この会社で、出世するんだ…」


 と、までは、言わないが、態度で、示していれば、まだわかる…


 いい大学を出ているから、偉くなりたいと思っても、理解できる…


 が、


 まったくの無名の大学や、高卒で、


 「…オレは、この会社で、偉くなってやる…」


 と、言葉や態度で、示した人間を見て、驚いた…


 文字通り、驚愕した…


 それまで、そんな人間を見たことが、なかったからだ…


 そして、その後もなかったからだ(笑)…


 ハッキリ言って、その時代だから、出会った…


 見ることができた…


 大げさに、言えば、希少生物に近かった(笑)…


 できもしないことを、平然とできると、言い張る人間に、接したのは、後にも先にも、そのときだけだった…


 そして、世の中には、色々な人間がいると、しみじみ思ったものだ…


 そのとき、初めて、人間の能力について、考えさせられた…


 中学や高校で、勉強で、成績が、いいか悪いかは、誰もが、考える…


 が、


 社会に出て、これほどの差があるとは、考えもしなかったのだ…


 正直、これほど、驚いたことも、後年、役に立ったこともない…


 当時、ITバブルの時期に出会った人間を超える人間には、ついぞお目にかかることがなかった(笑)…


 ただ、最近になって、そんな人間は、今、なにをしているのだろうと、思う…


 そう考えるのは、私も歳をとった証拠だ…


 私は、ヤン=リンダの言葉を聞きながら、そんなことを、思った…


 ヤン=リンダが、中身が、黒いのに、白い服を着ていて、それを隠そうとしていると、言ったことで、そう思ったのだ…


 まあ、そう考えれば、私の想像力も凄いものだ(笑)…


 そして、その間にも、カメラは、回っていた…


 私を撮り続けていた…


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