↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 60

「…大丈夫ですか? …お姉さん?…」


 不覚にも、小石にけつまずいて、倒れた私に、ファラドが、手を差し伸べた…


 私は、迷うことなく、ファラドの手に、自分の手を伸ばした…


 「…たいしたことないさ…」


 私は、答えた…


 「…いつものことさ…」


 「…いつものこと?…」


 ファラドが、驚いた…


 「…そうさ…神様が、ときどき、こうして、私にイジワルするのさ…だから、転んだのさ…」


 私が、言うと、


 「…神様が、イジワルをする?…」


 と、ファラドが、言って、絶句した…


 それから、楽しそうに、笑った…


 だから、


 「…な、なんだ? …なにが、おかしい?…」


 と、私は、ファラドに聞いた…


 「…まさに、噂通りだ…」


 「…なにが、噂通りだ?…」


 「…クールの社長夫人は、楽しく、初対面で、たやすく、他人の心を鷲掴みにする…」


 ファラドが、答えた…


 「…他人の心を鷲掴みだと?…」


 「…その通り…そんなことのできる人間は、滅多にいない…ほんの一握り…十万人、いや、百万人に、一人…いや、いや、それ以上かもしれない…」


 「…」


 「…そして、そんな人間を妻にすれば、その夫は、どんなときも、有利な立場に立てる…」


 「…どうしてだ? …どうして、有利な立場に立てるんだ?…」


 「…誰よりも、目立って、誰よりも、愛される…そんな女を、伴侶にすれば、交渉に有利です…」


 「…交渉に有利だと?…」


 「…ええ…あの女は、どういう女なんだと、誰もが、興味を引くし、話題になる…それを、きっかけに、仕事の話を進めることができる…」


 私は、呆気に取られた…


 これまで、そんなふうに、私を見た人間は、いなかったからだ…


 分析した人間は、いなかったからだ…


 だから、呆気に取られて、ファラドを見た…


 一体、なにを、どう言って、いいか、わからなかった…


 どう反論していいか、わからなかった…


 すると、背後から、


 「…面白い、ものの見方ね…」


 という声がした…


 ヤンだった…


 「…面白い? どう面白いんですか?…」


 「…たしかに、そう言われれば、当たってはいるかもしれないけれども、深読みのし過ぎじゃない? …このお姉さんは、単に、楽しくて、誰からも好かれるから、優れている…それで、いいんじゃない…」


 ヤンの言葉に、ファラドは、考え込んだ…


 しばし、沈黙した…


 「…たしかに、深読みのし過ぎかもしれない…」


 ファラドは、笑った…


 「…でも、誰からも好かれるのは、敵を作らないということ…そして、どんな人間も、自分の味方にすることができるということ…これが、できる人間は、凄い…滅多にいない…」


 ファラドは、そう言って、私を見た…


 私を見たのだ…


 が、


 ファラドの言葉とは、裏腹に、ちっとも、私を尊敬しているようには、見えなかった…


 言葉は、悪いが、ただ事実を言っただけ…


 自分の目で見た、感想を言っただけだった…


 だから、私をどうこうするというわけではない…


 例えるに、趣味で観た映画の感想を述べるのと、同じ感じだった…


 私が、そんなことを、考えていると、先に歩いているオスマン殿下が、振り返って、


 「…ファラド…なにをしている…さっさと、付いてこい…」


 と、言った…


 そして、そのオスマンの横には、マリアがいた…


 それを見て、ヤンが、


 「…まるで、恋人か、夫婦ね…」


 と、笑った…


 「…カラダは、ちっちゃいけど、恋人か、夫婦…私も、子供の頃、あんな恋人がほしかったな…」


 と、呟いた…


 それを聞いて、


 「…どうしてだ?…」


 と、思わず、私は、聞いた…


 ヤン=リンダは、絶世の美人…


 子供の頃とは、いえ、美人に違いない…


 だから、子供とはいえ、男なら、皆、リンダを放っておかなかっただろうと、思ったのだ…


 「…思い出よ…」


 ヤンが、即答した…


 「…思い出?…」


 「…そう…楽しかった思い出は、いつ思い出しても、楽しいものだし、心温まるものだから…」


 ヤンが、言った…


 私は、その通りだと思ったが、その言葉通りには、とらなかった…


 真逆に、リンダ=ヤンの後ろ暗い過去を思った…


 きっと、リンダは、リンダ・ヘイワースとして、売り込む最中に、さんざん、嫌な思いをしてきたに違いないと、思ったのだ…


 だから、余計に、楽しい過去が、欲しくなる…


 もう二度と、戻れないのは、誰にも、わかっているが、いや、わかっているからこそ、楽しい過去が、必要なのだ…


 ふと、思い出しただけで、思わず、ほっこりと、心が和むような過去が、必要なのだ…


 私は、思った…


 だから、余計に、リンダは、楽しい過去を欲したのかもしれない…


 私は、そう見た…


 私は、そう睨んだ…

 

 それになにより、リンダは美人…


 誰が見ても、美しい…


 それは、もちろん、子供の頃からだろう…


 生まれたときからだろう…


 すると、どうなる?


 仮に、リンダが、普通の家庭に生まれても、平凡な環境では、なくなる…


 それは、どういうことかと、いえば、周囲にちやほやされるからだ…


 美人だから、いつも周囲にちやほやされる…


 それは、ある意味、普通ではない…


 まるで、皇族や、王族のようにちやほやされれば、平凡な生活は、営めない…


 そういうことだ…


 普通は、誰もが、そんな状態には、ならないからだ…


 すると、どうなる?


 平凡な日常に憧れるに違いない…


 だから、余計に、平凡な思い出が、欲しかったのかもしれない…


 私は、思った…


 深読みのし過ぎかもしれないけれども、思ったのだ…


 私も、美人を身近に、何人も見てきたが、やはりというか、美人には、美人の悩みがある…


 一番、困るのは、男から、告白されて、断ったら、逆恨みされた事例だろう…


 とりあえず、美人だからと、男が告白して、美人にフラれて、笑い話にでもすれば、いいが、それが、できない男が、やはり一定数いる…


 そうすると、どうしていいか、わからない…


 もう二度と会わない人間なら、いざ知らず、大抵は、告白した相手は、学校の同級生や、会社の人間か、会社の取引先の人間だ…


 すると、断った後も、人間関係を切れない…


 自分が、逃げることが、できないからだ…


 そして、仮に、逃げても、いいが、美人は、また違う会社で、同じ目に遭う…


 そういうことだ…


 だから、以前にも書いたが、合コン後、男に、クルマで、送って行きますよと、誘われて、


 「…アナタに送ってもらう必要はありません!…」


 と、美人のお姉さんが、強く言ったが、あれぐらい強く言わないと、その男に付きまとわれる心配があったからだろう…


 だから、その美人のお姉さんに言わせれば、自衛手段というか…


 身を守る手段に違いない…


 私は、そう思った…


 思ったのだ…


 誘った男は、悪い男ではないが、見た目では、わからない…


 クルマに乗せてもらって、送ってもらう最中に、態度が豹変することも、あるからだ…


 そして、それを考えると、つくづく自分は、平凡で良かったと思う…


 男でも女でも、ルックスのいい人間に生まれたかったと思うのは、誰もが一度や二度は、あるものだが、なまじ、ルックスが良く生まれても、そのルックスのせいで、苦労するのは、ごめんだ…


 ちやほやは、されたい…


 だが、苦労は、困る…


 困るのだ(笑)…


 私が聞いた美人の話で、とくに怖いと思ったのは、学生時代、同じクラスの男と話していたら、突然、


 「…私の男を盗らないで…」


 と、同じクラスの女の子に、叫ばれたケース…


 叫んだ彼女は、その美人と話している男と付き合っていたらしい…


 それが、美人の女の子と、楽しく話しているから、


 …盗られる!…


 と、焦ったのだ…


 なにより、怖いのは、男と、話しているだけで、いつのまにか、その男と付き合っている女を敵に回すことだ…


 自分自身は、まったく身に覚えがないことで、下手をすれば、クラス中の女を敵に回す危険がある…


 それは、嫉妬…


 嫉妬に他ならない…


 だが、人間は、嫉妬の生き物…


 誰もが、多かれ少なかれ、嫉妬の感情はある…


 ただ、そのせいで、人間関係に苦しめられるのは、堪ったものではない…


 これは、会社でいえば、大卒を、敵対視する高卒の人間が、やはり一定数いるのと、同じ…


 同じだ…


 それも、原因は、やはり嫉妬…


 嫉妬に他ならない…


 大卒の方が、高卒に比べ、昇進しやすいと、思うからだ…


 が、


 私の見るところ、そういう人間は、やはりというか、コンプレックスを抱いている人間が、多かった…


 言葉には、しないが、自分が、意識する、しないに限らず、自分が、劣っている自覚が、あるのかもしれない…


 頭では、勝てない自覚があるのかもしれない…


 だからかもしれないが、そういう人たちは、上昇志向が、強い人間が、多かった…


 が、


 私に言わせれば、そもそも、上昇志向を持っている人間で、優秀な人間は、いなかった(笑)…


 というのは、周りをみれば、自分の能力が、なんとなく、わかるからだ…


 年長の同僚を見て、自分と同じような能力の人間をみれば、その同僚の地位を見て、自分が、将来、出世するか、しないか、簡単にわかる…


 そして、失礼ながら、学歴がない人間ほど、出世したい人間が、多かった…


 それは、一言でいえば、学校の勉強と、仕事は、違うと言いたいのだろう…


 だから、学校の成績では負けたが、仕事では負けない…


 出世では、負けないと、言いたいのだろう…


 が、


 そもそも、そんな人間は、失礼ながら、頭がなかった…


 だから、バイトや契約社員の私と同じ作業をしていた(笑)…


 そして、出世するには、他人をまとめたり、昇進試験に合格しなければ、ならない…


 それが、自分にできるか、できないか、少し考えれば、わかるものだが、それが、わからなかった(笑)…


 頭が悪くても、ひとをまとられる人間もいる…


 真逆に、頭がよくても、ひとをまとめられない人間もいる…


 が、


 そういうひとたちは、ひとをまとめらないと、単純にダメな人間だと考える…


 私は、それを見て、なぜ、そう思うのか、最初は、わからなかった…


 文字通り、謎だった…


 が、


 少しして、わかった…


 要するに、見たことがないからだと、気付いた…


 例えば、偏差値40の工業高校を出たとする…


 そうすると、当然、身近に頭のよい人間は、いない…


 家族や親せきを含めて、いない可能性が高い…


 だから、わからない…


 おおげさにいえば、東大を出れば、なんでも、できると、考える…


 たやすく、ひとを束ね、リーダーシップを発揮して、なんにでも、自分が、先立ちで、する…


 そういうイメージがあるのだろう…


 が、


 現実には、東大を出れば、誰もが、リーダーシップが、あるわけではないし、モタモタとする人間も多い…


 だから、そういう人間を見ると、幻滅するのだろう…


 末端の仕事が、自分の方ができれば、単純に自分の方が、上だと勘違いする(笑)…


 が、


 それは、違うよと、指摘しても、そんな人間には、わからない…


 理解できない…


 なぜなら、周囲にいないからだ…


 見たことが、ないからだ…


 これが、東大を出ていなくても、ある程度は、優秀ならば、それは、違うとわかる…


 なぜなら、そういう人間を身近に知っているからだ…


 家族や親せきだったり、友人だったり、そのなかに、頭が良くても、不器用な人間を知っているからだ…


 が、


 それを指摘しても、わからない人間は、わらない…


 いわば、バカの壁…


 なにを言っても、わからない人間は、わからない…


 ただ、それを見て、感じたことは、悲しいかな、生まれつき、人間の能力は、決まっているという現実だった…


 私でも、たやすく、わかることが、わからない…


 その驚きだった…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…お姉さん…どうしたの? …なにを、ボーッと、突っ立てるの? …グズグズしていると、おいてっちゃうわよ…」


 という、リンダ=ヤンの声が聞こえた…


 ふと、前を見ると、ヤンとファラドが、並んで、歩いていた…


 それは、まさに、カップル…


 恋人同士のように、見えた…


 見えたのだ…


 さらに、その前を見ると、今度は、オスマン殿下と、マリアの姿が見えた…


 これも、カップル…


 小さいながらも、カップルだ…


 なぜか、私だけ、一人…


 一人だった…


 それに、気付いた、私は、許せんかった…


 神様が、私にイジワルをしている…


 その事実に、気付いた…


 このけなげな、矢田トモコをイジメていると、気付いたのだ…


 許せん!


 神様、許すまじ!


 私は、心に誓った…


 が、


 こんなことに、負ける矢田トモコではなかった…


 遅れをとる、矢田トモコではなかったのだ…


 神様のイジワルにも、屈せず、私は目の前の、ヤンと、ファラドのカップルの仲を裂くべく、全力で、走り出した…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。